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第5話『クリスマスの誓い』

12月。街はクリスマス一色になっている。イルミネーションで飾られた木々が立ち並び、サンタの格好をした人々がチラシを配っている。



22日の放課後。

「晶代。一緒に帰ろう」

この日も浩介と晶代は2人一緒に帰った。

義彦はその様子を見てニヤッと笑い、貴弘と春香の方を向く。

「2人とも、ちょっといいか」

義彦は小声で貴弘と春香に説明した。


「マジでやるんですか!?」

「バレたらまずいですよ」貴弘と春香は作戦の内容に驚く。

「まあまあ、俺の言う通りにしてれば大丈夫だって。協力するよね?」

義彦はどうしてもその作戦を実行する気だ。

「え、えぇ、まぁ…」

貴弘と春香はあまり乗り気でないが同意した。


23日。

春香は晶代の家に遊びに来ている。

「晶代ー。明日のデートの服決まった?」

明日のクリスマスイブに浩介と晶代はデートをするのだ。

「うん、決まったよー」

晶代はそう言ってロリータ系のワンピースを春香に見せる。

「あんた、その格好で行く気?」

当然、春香はずっこける。「え、これじゃダメ?」

晶代は不思議そうな顔をする。

「あのねぇ、クリスマスは2人にとって大事な日なの。だからもっと気合いいれないと」

「じゃあ、どんなの着ればいいの?」

「わかった。あたしについて来て」

春香はそう言って、晶代を梅田に連れて行った。そして行きつけのお店であっという間にコーディネートしてしまった。

春香がチョイスしたのは白のレース付きブラウスとピンクのジャケット、黒のプリーツスカートだ。晶代は普段と違う自分の姿を見て驚く。

「これが…あたし?」

「うん。晶代だよ」

春香は答える。

「お客様、とてもよくお似合いですよ」

店員さんからも絶賛の声。

「メイクはいらないよね。面倒くさいから」

と晶代は言う。

「何言ってんの。メイクはするべきよ」

と春香は切り返す。

「でもやり方わかんない」晶代のその言葉に再び春香はずっこける。

「今まで化粧したことないの?」

「うん、ない」

「も〜、あたしに任せて」春香はそう言った。



そして24日。クリスマスイブ。

晶代の家で春香は晶代にメイクを施していた。

顔全体にファンデーションを塗った後、コーラルピンクのチークを頬に丸くのせる。

「チーク濃すぎない?」

晶代は春香に言う。

「ちょっと黙ってて」

春香は言い返す。

まぶたにはパープルのアイシャドウが施され、まつげにはマスカラをたっぷりつける。口元はピンクのリップで女の子らしさを出す。「よし、完成!!」

春香は満足気に言う。

「ありがとう!春香」

晶代は嬉しそうにお礼を述べる。

「春香はこの後どうするの?」

晶代がたずねる。

「んー、家に帰る。何もすることないし」

春香はあの1件で彼氏と別れてしまったので、クリスマスを一緒に過ごす人はいない。

「そっかぁ。ごめんね。変なこと聞いて」

晶代は謝る。

「いいよ。それよりデート楽しんでおいで」

「わかった。行ってきまーす」

晶代はデートに行った。

晶代の姿が見えなくなった後、春香は義彦に電話をかけた。

「任務完了しました」

電話の向こうで義彦は

「ご苦労。そのまま尾行を続けてくれ」

と言った。


一方こちらは浩介。

待ち合わせ場所で晶代を待っていた。

この日の彼も気合十分だ。浩介は黒のジャケットに白のセーター、青のカッターシャツにジーンズという服装だ。首にはマフラーを巻いている。

手鏡を取り出し髪形を整えていると、貴弘の姿が鏡に写し出された。

「どうした?」

浩介は驚く。

「いや、偶然ここに用があって」

「そっか」

「デート楽しんでくださいね。失礼します」

そう言って貴弘は走り去っていく。

浩介の姿が見えなくなった後、貴弘は義彦に電話をかけた。

「任務完了しました」

電話の向こうで義彦は

「ご苦労。そのまま尾行を続けてくれ」

と言った。

義彦の作戦は貴弘と春香に浩介と晶代のデートを尾行させることだった。



浩介と晶代は屋外レストランで食事をしている。

2人は終始笑顔でこんな会話をしている。

「どうだ?晶代」

「すごくおいしい。もう最高だよ。」

「よかった。ここ評判よくて予約取るの大変だったんだ。でも晶代がいてくれたから頑張れたんだよ」

「嬉しい!浩介ありがとう。初恋の人が浩介でよかった!」

「俺も晶代が恋人でよかったよ」


「ラブラブだなぁ〜」

その様子を貴弘と春香が陰から覗いている。

「浩介さん、晶代をかなり口説いているし」

「いやいや、あれが男がすることだ」

「そんなもん?」

2人がこんな会話をしていると…



「お兄ちゃんとお姉ちゃん何してるのー?」

突然、小さな男の子が声をかけてきた。



「シー!!」

貴弘と春香は人差し指で口を押さえる。

「お兄ちゃんとお姉ちゃんは刑事なんだ。今張り込みをしてるところなんだ」貴弘はとっさに嘘をつく。男の子は真に受ける。

「誰を張り込みしてるの?」

「あのお兄ちゃんとお姉ちゃん。指名手配中なんだ」貴弘はそう言って、浩介と晶代の方を指差す。

「僕ちょっと伝えてくるね!」

男の子はそう言って浩介と晶代の方へ走る。

「あ、ちょっ…、ちょっと待った!!」

貴弘と春香は慌てて止めようとするが、もう手遅れだった。


「ねぇねぇ、あそこの刑事さんがお兄ちゃんとお姉ちゃんを指名手配してるって」

男の子は浩介と晶代に話しかける。

「そういえば、さっきから誰かに見られてるような気がするけど気のせいかなぁ?」

浩介は晶代に話しかける。「気のせいだよ。春香達が来るはずないし」

晶代は答える。

「何でそんなこと知ってるんだよ」

「春香は家に帰るって言ってたし。あたしと会う前に誰かに会わなかった?」

「待ち合わせ場所で貴弘に会ったけど…。けど、あいつも用事あるって言ってたし」

「じゃあ、気のせいだよ」「そうだな」

浩介は安心する。

「僕、刑事さんのお仕事の邪魔しちゃダメだよ」

浩介は男の子に忠告する。「はーい」

男の子はその場を去っていった。


「ふ〜、危なかった〜」

貴弘と春香はホッと胸を撫で下ろす。

「尾行ってこんなにハラハラするもの?」

「義彦さんがムチャなこと考えるから〜」

2人は義彦の作戦に対して文句を言っていた。


浩介と晶代は夜景の見える公園に来ていた。

「すごくきれーい!」

晶代ははしゃいでいる。

「な、最高だろ?ここにしてよかったよ」

浩介は得意げな笑顔を見せる。


浩介は晶代の背中に自分の両腕を回す。晶代もそれに応じるかのように浩介の背中に両腕を回す。

「晶代…」

「浩介…」

2人は徐々に顔を近づける。2人の唇が重なり合おうとする……。



「こ、これってもしかして……」

「まさしくキスの瞬間!?」

貴弘と春香は少し離れたところからその様子を見ている。

「そのままキスしちゃえ〜」

「キャー!まさに決定的瞬間!」

何故か盛り上がっている。「モモタロス、参上!!」後ろから声がして振り向くと…………



「ギャアァァァ!!!」

そこにはモモタロスのお面を被った男がいた。



「えっ!」

その悲鳴に浩介と晶代は驚く。

「何?今の悲鳴」

「俺達の他に誰かいるようだな。様子見てくるから晶代はここで待っててくれ」浩介はそう言って声がした方へ行った。



男はお面を取ると、なんと貴弘の友達の八田やだだった。

「驚いた?」

「八田〜、お前か!!」

「も〜、驚かせないでよ!」

貴弘と春香は怒る。

「わりぃわりぃ。それよりこんなところで何してるんだ?」

八田が質問する。

「いや、ちょっとな……」貴弘は言葉を濁す。

「あれ?後ろにいる人って貴弘の知り合い?」

八田のその言葉に貴弘と春香の背筋が凍りついた。

ゆっくりと後ろを振り向くと……



「お〜ま〜え〜ら〜!!」浩介がかなり怒った様子で立っていた。



「ヤバい、バレた!」

「逃げよ!!」

2人は一目散に逃げ出した。

「待て、こら〜!!」

浩介は追いかける。


貴弘、春香は逃げながらこんな会話をしていた。

「も〜、気付かれちゃったじゃない!!」

「春香が大声出すからだよ!」

「貴弘も大声で叫んでたじゃない!」

「だいたい、八田があんなことするからだぞ!」

「え、俺のせい?」

何故か八田も一緒に逃げていた。


逃げていられるのもつかの間だった。


浩介は貴弘と春香の首のあたりを掴んだ。

「捕まえたぞ!!」

少し遅れて晶代が追いつく。

「あれ、何で貴弘と春香がこんなところにいるの?」浩介が怒ったまま答える。「こいつら、俺らのデート尾行してたんだよ!」

「えぇ〜!!」

晶代は驚く。

「じゃあ、あの男の子が言ってた刑事さんは…」

「おそらく、こいつらだ」浩介は貴弘と春香の方に向き直り、強い口調で詰め寄った。

「さぁ、訳を話してもらおうか!」

貴弘と春香はあわてふためく。

「い、いや実は…これには深い訳がございまして…」「実は、これ…義彦さんの命令なんです!」

「義彦さん…?」

浩介がそう言うと……


「バレちまったようだなぁ」

浩介達の後ろから義彦が現れた。

「義彦さん!!」

4人は驚く。

「浩介、驚いただろ。まさかこいつらがついて来てたなんて思わないからなぁ」義彦はニヤニヤしながら言う。

「義彦さん!!驚きますよ!デートの尾行を命令するだなんて!いくら義彦さんでも許しませんよ!」

浩介は怒っている。

「だとよ。貴弘、春香ちゃん、帰ろうぜ」

義彦はそう言って貴弘、春香、八田を連れて帰った。


「ったく…。ごめんな、晶代。あいつらのせいで」

浩介は晶代に謝る。

「いいよ。こういうのも楽しいし」

「おい……」

浩介はまたもや晶代の天然っぷりに言葉を失う。

「晶代…」

「浩介…」

浩介と晶代はキスをした。唇を離した後、

「晶代、死ぬまで一緒だよ」

そう言って浩介は晶代を抱きしめた。

「ありがとう、浩介。」

2人はお互いの温もりを全身で感じていた。





年が明け、2010年になった。

「晶代、調子はどう?」

春香は晶代の病室を訪れる。

「今は検査が多いからしんどいな」

「そう…あまり無理しないでね」

晶代は年が明けてすぐに体調を崩し、入院していたのだ。

「ねぇ、春香」

晶代は急に真面目な顔をする。

「何?」

「このこと…浩介には絶対に言わないで。浩介が知ったら辛い治療に浩介を巻き込んでしまう。これだけは絶対に嫌だから」

春香は少し考えて「わかった」と言った。





ここから彼らの運命は大きく動き出した…。

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