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第3話『浩介と晶代』

浩介は学校の最寄り駅で晶代を待っていた。

「ったく、いつになったら来るのかよ?遅刻するぞ」1時間目が始まる15分前になっても晶代は来ない。


10分前になってようやく

「お待たせー」

晶代が来た。

「遅いぞ。もう授業始まるよ。」

「ゴメーン。寝坊しちゃって…。」

「今度からは気をつけろよ」

「テヘッ」

浩介は晶代の天然っぷりに言葉を失う。

「まーいいや。ほら、行くぞ」

「はい!!」

浩介は晶代の手を引いて学校への道を走った。

2人での初めての登校。

浩介も晶代も胸が高鳴る。浩介は自分の好きな人が今、側にいるだけで嬉しかった。

晶代にとって浩介は初恋の人であり、初めての彼氏。憧れの人が自分の恋人になってくれたという喜びでいっぱいだった。


学校に着いたのは授業が始まる5分前。

「初めて夫婦そろって登校かー」

と義彦が はやし立てる。

「晶代ったらギリギリで来るから大変でしたよ」

浩介はそう言いながらも嬉しそうだ。

「でも、浩介のおかげで遅刻せずに済んだよ。ありがとう、浩介。」

晶代も嬉しそうに言う。

「お、おお」

照れ笑いをする浩介。

「あー、晶代年上の人にタメ語だしー」

「それに、浩介さんのこと呼び捨てしてるしー」

貴弘と春香がダメ出しをする。

しかし浩介に「晶代はいいんだよ。俺の恋人だから」と言われる。

「じゃあ、俺達も…」

「これじゃあ不公平だもんね」

貴弘と春香が浩介へのタメ語を企むと…


バシッ、バシッ!!


「お前らはダメ!!」

浩介に頭を叩かれる。

「え〜」

貴弘と春香は不満そうな声を出す。

「こらこら、早く席につきなさい!!」

担任の中沢先生がそう言いながら教室に入ってきた。「はーい」

と言いながら浩介達は自分の席に着いた。


昼休み。

「あー、お昼ご飯買いに行かないと」

晶代がそう言うと浩介は

「一緒に食べよう。俺がご馳走するよ」

と言って、晶代を連れて行った。

義彦、貴弘、春香は教室に取り残される。

「何だよー。浩介のやつ晶代ちゃんと付き合ってから俺と飯食ったことないぞ」「あたし達も晶代とお弁当食べたことない…」

「ラブラブなのはいいけど、俺らのことも考えてほしいよな」

3人は不平不満を次々と口にした。




その頃、浩介と晶代は学校の近くのレストランで食事をしていた。

「これおいしいー」

「だろ?ここにして正解だったな」

浩介と晶代は浩介おすすめのランチを食べながら仲良く会話をしている。

「明日も連れてってもらおうかなー」

晶代はいたずらっぽい笑顔を見せる。でも、浩介にしてみればそれが可愛くて仕方がない。

「いいよ。明日も明後日もいつでも」

と浩介は言う。

「やったー。ありがとう、浩介」

晶代は嬉しそうだ。



下校する時。

浩介は晶代に声をかける。「晶代、一緒に帰ろう」

「うん」

「今晩、一緒にご飯食べよう」

「ホントに?」

「うん、夜景の見える店を予約したから」

「行きたーい」

「今すぐ行こう」

浩介は晶代の肩を抱いて教室を出る。

その様子を見ていた義彦、貴弘、春香が嫉妬するのはいうまでもない。

「あいつら許せねー。貴弘、春香ちゃん、飲みに行くぞ。俺のおごりだ!!」

「行きましょう!!」

「ラジャー!」

義彦はやけ酒に貴弘と春香を付き合わせた。


居酒屋で義彦達は酒を飲みながら愚痴り合う。

「浩介と晶代ちゃん俺らのこと何だと思ってるんだ」「そうですよ。友達なのに。いつも2人でイチャイチャしてますよね」

「ホントだよ。いつも俺ら取り残されてるし」

「あたし、2人が付き合えるように頑張ったのに、付き合った途端にのけ者扱いですよ。こんなのありですか?」

春香の不満はたまったものではない。

「春香ちゃんのおかげで付き合えたのに、あの2人それをすっかり忘れてる。これでは春香ちゃんが可哀想だ。」

「でしょー。義彦さん、この気持ちわかってくれますか?」

「わかるよ。わかるよ」

最後は3人で

「不幸チーム乾杯ー!!」と言って、グラスを合わせる。

3人は酔いつぶれるまで飲んだ。



翌日。

「出席取りまーす。あれ、甲本くんと木原くんと奥野さんは?誰か聞いてない?」

義彦達がいないので、中沢先生が3人の出欠をたずねるがクラスのみんなは「知りません」と言う。

「そう…。どうしたのかしら」と中沢先生は心配そうにつぶやく。

少し経って、義彦、貴弘、春香が教室に入って来る。「頭痛てぇ〜」

「気分わりぃ…。」

「体だる〜」

3人とも目が虚ろで足元もふらふらだった。

「どうしたの?」

中沢先生が心配そうにたずねる。

「すみません。3人とも二日酔いです」と貴弘が言った。

「どうしてそれだけ飲んだんだよ?」と浩介がたずねる。

義彦、貴弘、春香は心の中でつぶやいた。

(あんた達のせいなんだよ!!)


浩介達は授業が終わった後、カラオケボックスに行った。浩介は晶代と恋人になってから、義彦と共に春香達のグループの一員になり、今日はそのメンバーでの初めてのカラオケだ。

晶代と貴弘は聞きなれない歌ばかり歌う。いわゆる「ネタ曲」だ。

「仮面ライダー参上!!」「制服萌え〜」

「な、何だこの曲は?」

義彦は驚く。

「春香ちゃん、2人ともいつもこんな歌歌ってるの?」

と浩介はたずねる。

「そうですよ」

春香は答える。

そして晶代と貴弘はネタ曲でデュエットを始める。

「もー止めてくれー」

浩介と義彦は悲鳴を上げた。


そして、浩介と晶代の初デート。

地下鉄のなんば駅で浩介は晶代を待っていた。しかし待ち合わせ時間が近づいても晶代が来る気配はない。「いつ来るかな〜。晶代どんな格好で来るんだろう?」

浩介は期待に胸を弾ませる。

この日の浩介は黒のジャケットとジーンズで決めている。普段からオシャレな浩介だが、この日は気合が入っているので一段とかっこいい。

「ごめんごめん。お待たせー」

晶代が駆け足でやって来る。

「何だこの服装は!?」

浩介は晶代の服装に驚く。なんと晶代はお人形さんが着てるようなロリータ系の服で来てたのだ。

「どう、似合う?」

晶代は嬉しそうに浩介にたずねる。

「うん、よく似合ってるよ」

でも、そんな晶代も浩介にしてみれば可愛いと思える。


2人はなんば駅周辺をぶらぶらと歩いている。

浩介は晶代に似合いそうな服を見つけ、「晶代、こんなのはどうかな?」と声をかける。

しかし、晶代の姿はない。「どこ行ったんだろう」

浩介が探すと晶代はオモチャ売り場ではしゃいでいた。

「あ、初音ミクあった。浩介これ欲しいー」

晶代が指差したのは髪の毛がとても長い女の子の人形だ。

「何だこれ?」

浩介にしてみればただの人形としか思えない。

「晶代、自分の年齢考えようぜ」

浩介が諭すが晶代は、

「大人でも買う人はいっぱいいるよ。だってあたし達みたいなオタクはこういうの好きだもん」

と突っぱねる。

晶代が言うように、オタクという人達はフィギュアを集めるのが当たり前である。しかし、浩介にはそれが理解出来ない。

「ホラ、行くぞ」

浩介は晶代の手を引いてオモチャ売り場を出る。


その後も晶代は初音ミクを見る度に浩介の手を離れ、どこかへ行ってしまうので浩介は探し出すのに一苦労していた。



浩介と晶代は観覧車に乗る。

「晶代、目を閉じて」

浩介は晶代にある物を渡そうとしている。

「何だろう?」

晶代はそう思いながらも言われるままに目を閉じる。

すると、晶代の左手の薬指に何かがはめられる。

「はい、目開けて」

晶代が目を開ける。

浩介が渡したものはペアリングだった。すでに浩介の指には晶代と同じデザインの指輪がはまっている。

「ありがとう浩介!!」晶代は嬉しそうだ。

「これで、晶代とずっと一緒だな」

浩介はそう言って微笑んだ。


2人にとって楽しい一日だった。

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