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序盤ダンジョンのボスですが、暇だったので鍛えなおしました。  作者:


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第三章「ダンジョンでやること多すぎる」


掃除が終わった翌日、俺は玉座に座って考えた。


まだ誰も来ない。


封印の扉のことは、少し気になっている。だが焦ることもない。どうせ時間はある。たっぷりと。


「……暇だな」

ぷるぷる。


足元のスライムが同意した。俺はしばらく天井を見上げて、それからふと思った。

掃除は終わった。次は何をする?


考えること三秒。


「何か、やってみるか」

ぷるぷる。


こうして始まった。誰も頼んでいないダンジョン内アクティビティが。


◆◆◆


その一:ダンジョン内マラソン


最初に思いついたのは走ることだった。

「体を動かすのは良いことだ。鍛錬にもなる。ついてこい」

ゴブリンたちに声をかけた。ぐぇぐぇと返事が返ってきた。やる気があるのかないのかわからないが、とりあえず三匹がついてきた。


俺はダンジョンの第一層から最深部まで、全力で走ることにした。

距離にしてそこそこある。いい運動になるはずだ。


スタートして三十秒、俺は気づいた。


暗い。


ダンジョンの通路というのは、松明が等間隔に置いてあるが、走ると次の松明までの間が妙に長く感じる。しかも曲がり角が多い。俺は角を曲がった瞬間、正面からオーガと衝突した。


「ふーん」


「お前、そんなところにいたのか」


オーガは特に痛そうではなかった。俺もそこまでではなかった。しかし勢いで大剣を落とした。

後ろからゴブリンたちが走ってきて、落ちた大剣を踏んづけて転んだ。


「ぐぇぇぇ」

「……マラソンは中止だ」

ぐぇぐぇ。


◆◆◆


その二:スライム相撲


次に思いついたのは相撲だった。

スライムを二匹向かい合わせて、押し合わせる。シンプルだ。ルールも簡単。

先に土俵の外に出たほうが負け。土俵は俺がチョークで通路に丸を描いた。


「始め」

スライムAとスライムBが、ぷるぷると向き合った。

しばらく何も起きなかった。


「……押せ」

ぷるぷる。


「だから、押すんだ。相手を」

ぷるぷるぷる。


スライムAがゆっくりとスライムBに近づいた。スライムBも近づいた。二匹が触れた瞬間、くっついた。

そのまま合体した。


「……」

大きくなったスライムが、ぷるぷるしていた。土俵の中に収まりきっていない。

ゴブリンたちが「ぐぇぐぇ」と笑っていた。


「笑うな」

「ぐぇぐぇぐぇ」


笑い続けた。俺は合体したスライムをしばらく見つめた。まあ、元気そうだからいいか。

「……次だ」


◆◆◆


その三:罠コース競技


ゴブリンたちを使って、罠をよけながら通路を走り抜ける競技を考案した。


「罠を全部作動させる。お前たちは避けながら走れ。最初にゴールしたやつが優勝だ」

「ぐぇ?」

「いいからやれ」

罠を作動させた。床から杭が飛び出し、壁から矢が出て、天井から網が落ちてくる。

整備したばかりなのでどれもよく動く。


ゴブリン一号が杭を踏んで吹っ飛んだ。

ゴブリン二号が矢に当たって壁に張り付いた。

ゴブリン三号が網に引っかかって天井でぶらぶらした。


「ぐぇぇぇぇ」

三匹同時に悲鳴を上げた。俺はしばらく眺めた。


「……意外と耐久力あるな、お前たち」

ゴブリンたちは全員再生能力があるのでしばらくすると戻ってくる。

ぼろぼろになりながら三匹が戻ってきた時、なぜかまたやる気満々の顔をしていた。


「もう一回やるか?」

「ぐぇぇ!」

全員が元気よく返事した。


俺は少し笑った。いや、笑ってはいない。口元が緩んだだけだ。


「……もう一回だ。今度は俺がコースを変える」

「ぐぇぐぇ!」


◆◆◆

結局、日が暮れるまで——ダンジョンに日は差さないが——何度も繰り返した。ゴブリンたちは一度もゴールできなかったが、回数を重ねるごとに確実に上手くなっていた。


俺は最後の方、コースを考えるのが楽しくなっていた。

これは鍛錬だ。ゴブリンたちの身体能力向上のための、れっきとした鍛錬である。遊びではない。


断じて。


◆◆◆


その四:ボス部屋の模様替え


疲れたので、室内でできることをしようと思った。

岩の玉座を少し動かした。角度を変えたら、入口の扉が正面に見えるようになった。


「悪くないな」

スライムたちが床をぷるぷると磨いた。合体して大きくなったスライムが隅の方で丸くなっていた。なんとなくクッションみたいになっていた。


オーガが入ってきて、そのスライムの上に座った。


「ふーん」


「お前、それ座るものじゃないぞ」


「ふーん」

動かなかった。スライムもぷるぷるしているだけで特に嫌がっていない。


俺は玉座に座り直して、改めてボス部屋を見渡した。

掃除されて、模様替えされて、隅にはオーガがスライムに座っている。

なかなかカオスな光景だが、以前より明るい気がした。松明の煤を拭いたせいかもしれない。


「……悪くない」


ぷるぷる。


「ぐぇ」


「ふーん」


三者三様の返事が重なった。

俺は天井を見上げた。バットたちがいつも通りぶら下がっていた。今日も一切動いていない。


「お前らも下りてこいよ」

きゅっ。


「……まあいい」


◆◆◆


夜になった。ダンジョンに夜はないが、俺がそう決めた。


疲れた体を玉座に預けながら、俺は今日一日を振り返った。マラソンは失敗した。スライムは合体した。ゴブリンたちは何度も罠に引っかかった。部屋は少し居心地が良くなった。

収穫があったかと言われると、微妙なところだ。


でも。

「……悪くなかったな」

ぷるぷる。


大きくなったスライムの上でオーガが寝息を立てていた。

ゴブリンたちは通路でぐぇぐぇ言いながら何かしていた。

バットたちは変わらずぶら下がっていた。


俺はそれをぼんやりと眺めながら、目を閉じた。


明日は封印の扉を、開けてみようか。

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