祈りでは、足りなかった
――聖女リリア視点――
会議室の空気は、重かった。
誰も、私を責める言葉を口にしない。
けれど、その沈黙こそが――責任だった。
「支援物資が届かず、村が一つ撤退しました」
淡々と読み上げられる報告。
数字。
被害。
取り返しのつかない結果。
「聖女様のご意思による支援、と記録されています」
私は、言葉を失った。
私は、祈っただけだ。
助けたいと願っただけだ。
「……私は、善意で……」
その言い訳は、途中で途切れた。
「善意は、免罪符ではありません」
初めてだった。
誰かが、私の言葉を否定したのは。
胸が、きゅっと痛む。
あの金髪の令嬢の姿が、脳裏をよぎる。
彼女は、いつもこういう場に立っていた。
責められ。
数字を突きつけられ。
それでも、黙って引き受けていた。
「……私が、決めます」
声が震えた。
「次の支援計画は、私の責任で」
部屋の空気が、わずかに動く。
それは、称賛ではない。
期待でもない。
逃げ場を失った音だった。
私は、初めて知る。
聖女とは、
祈る存在ではなく――
選び、背負う存在なのだと。




