聖女は、答えをくれなかった
――王太子視点――
聖女は、いつも正しいと思っていた。
微笑み。
祈り。
誰にでも向けられる優しさ。
それだけで、国は救われるのだと。
「物資が届いていません」
「地方から苦情が来ています」
補佐官の報告に、私は苛立った。
「聖女が支援を願ったはずだ。なぜ、うまくいかない」
「……調整役が、いないのです」
その言葉に、胸がざわつく。
私は、聖女を呼び出した。
「どういうことだ。なぜ現場が混乱している」
彼女は困ったように眉尻を下げ、首を傾げた。
「私は……祈りました。助けたいと、思っただけで……」
――それ以上、何も出てこなかった。
具体策も、期限も、責任も。
私は初めて気づく。
彼女は「願う」だけで、
「決めた」ことがないのだと。
脳裏に、別の姿が浮かんだ。
冷静な声。
淡々と積み上げられる報告書。
不満を言わず、結果だけを出していた女。
「……ああ」
喉が、ひくりと鳴る。
私は、何を追放したのだろう。
聖女は、救いだった。
だが――
国を動かしていたのは、
祈らない方の女だった。




