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みんなが、私を褒めてくれる
――聖女リリア視点――
私が微笑むと、みんな安心した顔をする。
「さすが聖女様」
「お優しいお方だ」
――それが、正しいことだと思っていた。
困っている人を助ける。
涙を流す人に寄り添う。
それだけで、世界は少し良くなるのだと。
でも最近、胸の奥に小さな棘が刺さっている。
「……あれ?」
私が願った支援が、現場に届いていない。
人が足りない。
物資が遅れる。
以前は、こんなことはなかったはずなのに。
「手続きが複雑で……」
「前任者がいなくなって……」
そう言われて、初めて思い出す。
いつも私の後ろに、
静かに立っていた金髪の令嬢のことを。
私は、彼女を見たことがなかった。
正確には――
見ようとしなかった。
優しさだけでは、足りなかったのだろうか。
夜、一人になると不安になる。
もし、あの人がいなければ。
もし、私が間違っていたら。
でも、誰も叱ってはくれない。
聖女は、間違えない存在だから。
……そう、思われているから。




