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あの方は、いつも最後に叱られていた
――元侍女視点――
お嬢様は、いつも最後に叱られていた。
理不尽な要求。
無茶な調整。
誰かの「善意」の後始末。
それらを一つ残らず引き受けたあとで、
なぜか責められるのは、決まってお嬢様だった。
「冷たい方ね」
「心がないのよ」
私は知っている。
お嬢様が、夜遅くまで灯りを消さなかったことを。
帳簿を前に、何度もため息をついていたことを。
それでも翌朝には、
何事もなかったように背筋を伸ばしていた。
断罪の日。
私は、人混みの端で震えていた。
お嬢様は、泣かなかった。
誰にも縋らず、誰も責めなかった。
――それが、いちばん辛かった。
数日後。
王宮は、驚くほど慌ただしくなった。
「こんなはずじゃなかった」
「前は、うまく回っていたのに」
私は、口を閉ざしたまま思う。
回っていたのではない。
回していた人が、いたのだ。
お嬢様は、悪役令嬢だった。
でも私にとっては――
誰よりも、誠実な主だった。




