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歴史には、評価だけが残る
――王太子視点・後日――
王立書庫は、静まり返っていた。
私は一冊の分厚い書を開く。
近代王政史――まだ、新しいはずの歴史。
ページを繰る指が、止まった。
《王国財政再建期において、
実務を一手に担った貴族令嬢が存在する。
名を――アリアンナ・エルフォード》
胸が、強く締めつけられた。
功績は、淡々と記されている。
感情は、どこにもない。
《彼女の退場以降、
王都の統治効率は著しく低下した》
それだけだ。
断罪。
追放。
私の名は、どこにも書かれていない。
英雄でも、悪人でもない。
ただの「判断を誤った王太子」として、
歴史の余白に埋もれている。
私は、そっと本を閉じた。
あの時、
彼女は何も言わなかった。
怒りも、涙も、抗議も。
――もう、言う必要がなかったのだ。
歴史は、正直だ。
生きている間に理解されなくても、
結果だけを残していく。
彼女の名は、ここにある。
だが私は――
二度と、彼女の物語に登場しない。




