10/12
いない人の仕事だけが、残っていた
――王都・群像――
会議は、予定の倍の時間を要した。
「結論は?」
「……出ていません」
誰も、決断できなかった。
資料は揃っている。
問題点も、分かっている。
だが――誰も、線を引けない。
「以前は、ここで止められていたはずだ」
「ここは、修正が入っていた」
そう言って、皆が目を落とす先は同じだった。
――空席。
かつて、必ずそこに座っていた女の席。
感情論が出れば、数字で止めた。
理想が暴走すれば、現実に引き戻した。
誰かが泣けば、黙って責任を引き取った。
その役割を、
誰も引き継いでいなかった。
「……彼女は、どうやって回していたんだ?」
答えは、出ない。
なぜなら――
彼女は「特別なこと」をしていなかったからだ。
必要なことを、
必要なだけ、
誰にも見えない場所で積み重ねていただけ。
会議は、また持ち越された。
王都は、今日も滞る。
悪役令嬢のいない国で、
初めて、国は立ち止まった。




