二枚重ねのホットケーキに関する解釈の違い
わたし達の国で二枚重ねのホットケーキは、仲の良い男女とかお似合いの二人を意味するの。
わからなくはないわ。
だって寄り添う甘々のほかほかなんだもの。
でもわたしは……。
「あれっ? シェリーってホットケーキ嫌いなんだっけ?」
「ごめんなさい。好きではないわね」
「ふうん。シェリーのことでも知らないことはあるんだな」
今日は婚約者のダレン・ハーマス男爵令息のおうちにお邪魔してお茶会なの。
ホットケーキが出てきたところ。
ハーマス男爵家とうちロドニー男爵家は領地が隣だから、同い年のダレンとは幼馴染で。
親しくなって、自然と婚約の運びになったのよ。
「ちなみにどうしてかな? シェリーは甘いものが好きだとばかり思ってたから」
……言ってもいいか。
ダレンは昔からわたしのこと知ってるし。
「ホットケーキって仲のいい男女に例えられることがあるでしょう? だからよ」
「ええと、えっ? よくわからない」
「察して」
ダレンが不安そうな顔をしているわ。
いくら何でもこれだけで察しては、難問過ぎるかしら?
「もう少しヒントちょうだい」
「ヒントじゃなくて答えだけど。わたしはお転婆だから、ダレンを尻の下に敷きそうって言われたことがあるのよ」
「誰に?」
「お兄様。わたしが二枚重ねのホットケーキを食べていた時、シェリーはお前が食べていいけどダレンを俺に寄越せって言われたこともあるわ」
「つまり下のホットケーキが僕か」
「そう。思い出すと腹が立っちゃって」
「よかった」
えっ?
今安心する場面なんてあったかしら?
ひょっとして……。
「……ホットケーキが嫌いなんて、ダレンとの婚約を嫌がってるように聞こえた?」
「いいや? 僕に対するシェリーの愛情を疑ったことなんてないから」
「そ、そう」
ダレンは時々格好いいわ。
好き。
「二枚重ねのホットケーキは何というか、男女の営み的なことを連想させるから……」
「ダレンのバカッ!」
「そういう行為に嫌悪感があるのかと……」
「ダレンのバカッ!」
でもダレンはハーマス男爵家を継ぐ身。
子供を作ることは必要ね。
考えなしにバカと言ったのはよろしくなかったかもしれないわ。
「まあともかく僕はシェリーの柔らかい尻に敷かれるのは歓迎するよ」
「言い方が嫌らしいわ」
「このホットケーキはハーブの使い方に特色がある、うちのシェフの最近の自信作なんだ。ぜひ食べて欲しいな」
「ありがとう。いただくわ」
仄かな甘い香りに包まれて。
わたしは今、幸せをいただいているのです。
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