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入院(1)

翌朝、朝日が窓から差し込み、その光で俺は目を覚ました。

体はまだ重いが、昨夜よりはマシになったっぽいな。治癒魔法と、睡眠のおかげで、少しは回復したようだ。


「じじいじゃないのに、腰が痛てえ・・・」


「大丈夫たいか?今日病院行ったらどうや」


「そうするか」







「肩の脱臼、肋骨の骨折、それと足首の捻挫です。その為、入院の手続きを始めます」


「え?治療魔法で回復したはずじゃ・・・」


「治癒魔法は応急処置みたいなもの。完治させるには、ちゃんとした治療をしてください。」


その結果、俺は入院した。


「・・・嘘だろ⁉後一週間もしたら戦争が始まるんだぞ⁉」


ああ、どうしよう。このまま大人しく回復するのを待ったら、確実にヴァルドに負けるだろうな。だからと言って、抜け出して修行積んでも身体は完全には治っていないから、下手すると悪化してしまうし。


「あれ?リュートだ」


「hんづあおfげをあ!!!」


どうすればいいか分からず、奇声を上げていると隣の人に話しかけられた。てか、なんで俺の名前を知っているんだろうか・・・

話しかけられた方に振り向くと、そこにはルーベルトが寝転がっていた。


「ルーベルト・・・?」


顔色は昨夜よりも良くなっているが、まだ青白い。目の下には薄く隈ができていて、疲労が完全には抜けていないことが分かる。


「僕も入院することになりました。昨夜の戦闘でで、体に負担がかかりすぎたって」


ルーベルトは弱々しく微笑んだ。


「身体強化魔法を無理に使ったから、それで体を壊してしまいました」


「あの時か。ヴァルドとの戦闘中、視界の端っこでルーベルトが戦士じみた動きしてたしな」


ルーベルトはセラフィナを守るため、魔法職なのにも関わらず、無理して近接戦闘で戦った。本来ならこの行動は自殺行為として避けるべきだ。


のに、ルーベルトは戦った。死ぬかもしれないのに。ルーベルトには無理して戦ってもらったことについて、謝らないといけないな。


「ルーベルト、無理して戦ってもらって悪かった」


「謝らなくていいよ」


ルーベルトは、力なく首を横に振った。


「僕が、そうしたほうがいいと思ったから、そうした。それだけだ。・・・それより、リュートこそ大丈夫?その怪我・・・」


ルーベルトの視線が、俺の体に向けられる。

包帯が巻かれた肩、固定されている肋骨、テーピングされた足首。見るからに痛々しい姿を俺はしていた。


「ああ、これは・・・」


「あ~、この怪我は、ヴァルドって男と戦ってな。それで、ボコボコにされた」


「ヴァルド・・・あの時、宣戦布告してきた男のこと?」


「まあ、そうだね」



その時、病室の扉がノックされた。


「入ってもいい?入るよ?」


「あ、ちょm・・・」


俺が声をかける前に、扉がゆっくりと開いた。

入ってきたのは、セラフィナだった。

セラフィナの左腕には、まだ包帯が巻かれていたが、昨夜よりは動かせるようになっているようだった。


「お前、何で来たんだ?」


「お見舞いに決まってるでしょ。で、お前等二人共、どれくらいで退院できるん?」


「大体一週間」


「僕は三日」


「一週間か・・・」


セラフィナは腕を組み、少し考え込むような仕草を見せた。


「最悪のタイミングだな」


俺は自嘲気味に笑った。

戦争開始と同時に退院。つまり、満足に体を動かせるかどうかも怪しい状態で、いきなり実戦に放り込まれることになる。普通に考えれば、無謀極まりないが。


「じゃあ、リュートが退院するまで、(クラウス)パシらせて準備を進めとくから、お前らはそこで大人しく怪我を治すことに専念して」


「はいよ」


また、扉がコンコン、とノックされた。


「入ってもいいですな?」


「ど~ぞ」


俺がそう言うと、アランとケルビの二人が入ってきた。


「よう、リュート」


アランが、いつもの軽い調子で声をかけてきた。だが、その目には心配の色が滲んでいた。


「お前ら、どうした?」


「お見舞いに来たんや。それと・・・」


アランは一瞬、言葉に詰まった。視線がセラフィナに向けられ、そして再び俺に戻っていく。


「なんで公爵家のお姫様がおるとやん⁉」


「「「あ・やっぱり」」」


ケルビが鬼の形相で俺の方に向かってきた。


「リュート・・・なんで公爵家のお姫様と仲良くしているのかな?隣のベットで寝ている君もだよ。」


「あ~色々あって・・・」


俺はセラフィナとの出会い、つるんでいる理由、その経緯を半強制に説明させられた。それを聞いた二人は頭を悩ませていた。


「・・・まず、幼少期に盗賊に攫われたセラフィナ公爵令嬢ば助けて・・・」


「そこから内密の友人になって、学園で本格的に友人として関係を持った・・・」


「「いや、どゆこと?」」


「そのままの意味だよ。」


アランとケルビは、しばらく呆然とした表情で固まっていた。

無理もない。公爵家の令嬢と、平民の冒険者志望の学生が友人関係にある、なんて普通は考えられないことだ。


ケルビが口をパクパクさせながら、必死に言葉を探している。


「リュートは、幼い頃にセラフィナ様を助けて、それで友人になった・・・ってこと?」


「そうだよ。別に、そんなに驚くことでもないだろ?」


俺は当たり前のように答えた。


「「驚くわ!!!」」


「え?」


「たいって、セラフィナ公爵令嬢っちぇ!二つ名は『気高き美の結晶』と呼ばれよらすあのセラフィナ公爵令嬢っちぇ!」


「女子ですら惚れてしまうと言われた、あのセラフィナ公爵令嬢だよ!!!もし、この関係バレたら狂信者に襲われちゃうよ!!!」


狂信者?セラフィナいつ宗教作ったんだ?セラフィナの方を向いたら『私は何も知りません』というそぶりを見せていた。

アランが俺に耳元に口を近づけてきた。


「てか、下心とか湧かないんか?」


「セラフィナに下心?ないないwww。彼奴、本性は人でなしだから」


「おい。全部聞こえてんぞ?」


セラフィナが俺の頭をつかんできた。


「痛い痛い痛い!!!頭蓋骨粉砕しちゃう!!!」


「その原因を作ったのは紛れもなくリュートだけど???」


「だってそりゃそうだろ!!!お前、盗賊の爪ひっぺがして情報吐かせたり、その処理を俺に丸投げしたり、挙げ句の果てには闇ギルドや暗殺者ギルドを乗っ取ろうとしてたじゃねぇか!!!」


さすがに、大規模戦争を起こそうとしていることは触れないようにした。まあ、それを伏せてもセラフィナの悪行はどれもやばいものばかりだけだけど。


「まじ?」


「マジ」


俺の頭を強く掴みながらセラフィナがアラン達の方を向いた。


「原へった。何か見舞品ある?」


「果物あるで」


ケルビが袋を掲げて見せた。中には、色とりどりの果物が詰め込まれている。林檎、葡萄、蜜柑。どれも新鮮で、艶やかな色をしていた。


「サンキュー」


「セラフィナ、俺のは?」


「ああ、ごめんルーベルト。君の分は残しとくよ。」


「おおい!!!無視すんな!!!」


「えっと・・・リュート、体の調子はどう?」


ケルビが心配そうに聞いてきた。その表情は、いつもの穏やかさの中に、僅かな不安が混じっていた。


「大分良くなった。もうすぐ退院できそうだ」


「そっか。よかった」


ケルビは安堵したように微笑んだ。


「じゃあ、退院したら、また会おうな」


「それまで、ゆっくり休んでね」


「分かった」



また誰かがノックをせずに入ってきた。


「よぉルーベルト。元気か・・・」


病室に入ってきた男はその部屋の周囲を見渡して、驚きと焦りの表情になった。


「おおい!ルーベルト、なんでこんな所にセラフィナ嬢がいるんだ!?」


あ〜やっぱし。さっきアランとケルビが焦っていたからとは思ったが、やっぱりこうなるんだな。

てか、さっきルーベルトの名前読んだよな?てことはルーベルトのクラスの友達か!ルーベルトにも友達ができて、俺はとても嬉しい・・・


「何でリュートは涙目になっているの?」


「なんか・・・泣けてきた・・・」


「「「「「お前は親かなんかか?」」」」」


おお!綺麗にハモった。その後、ルーベルトは新しい友達の紹介を行なった。名前はアベルと言うらしい。それが終わり、ふと時計をみると学園が始まる30分前だった。


「じゃあ、私は授業が始まるから帰るね」


「ほなさいなら」


「早く学校で会えるの楽しみにしとくよ」


「ルーベルトじゃあな」


「さよなら〜」


そう言い残して、四人は病室を後にした。


「賑やかだったね」


「久々に、何も考えずに遊べた気がする」


俺もそう答えながら、天井を見上げた。白い天井。何の変哲もない、病院の天井。だが、その何でもない光景が、今は妙に心を落ち着かせてくれる。戦争のこと、ヴァルドのこと、一週間後のこと。全てを一時的に忘れて、ただ友人たちと笑い合えた時間。それは、きっとこれから先、貴重な思い出になるのだろう。


「リュート」


「ん?どした?」


「一つ、聞いてもいい?」


ルーベルトは、少し躊躇いがちに言葉を紡いだ。何かを聞きたいが、聞いていいものか迷っている。そんな様子が、その声音から伝わって来た。


「いいけど」


「昨日、ヴァルドという方と戦ったと言ってたけど・・・、どんだけ強かったんだ?」


ルーベルトの問いに、俺は少しだけ考え込んだ。

ヴァルドのあの圧倒的な強さ。人間とは思えない戦闘力。そして、魔法使いを否定する確固たる意志。

どう説明すればいいのか・・・


「一言でいえば、()()()()()()。でも、次に会う時は、必ず倒す。てか、ルーベルトはヴァルドって男知ってる?」


「知らない。」


ヴァルド・・・ルーベルトも知らないのかよ。どこが有名人だよ。普通の狂人じゃねえか。


「でも、次に会う時は、必ず倒す。そのために、今は体を治して、力を蓄える。彼奴を止めるために。お前も、ルーベルト。しっかり体を治せ。三日後には退院できるんだろ?」


「はい」


「なら、それまでゆっくり休んで、完全に回復しろ。無理はするな」


「分かりました」


ルーベルトは素直に頷いた。


その後、二人は他愛のない話をした。

学園のこと、授業のこと、友人たちのこと。戦争とは無関係の、平和な日常の話。それは、どこか現実逃避のようでもあったが、同時に心を癒す時間でもあった。



やがて、夕暮れが近づいてきた。

窓の外の空が、徐々にオレンジ色に染まり始める。一日が終わりに近づいている証だ。


「そろそろ、夕飯の時間ですね」


ルーベルトが時計を見ながら言った。


「ああ。病院の飯、まずくないといいけどな」


「多分大丈夫。ここの病院は、食事にも力を入れてるって聞きたから」


「マジか。それは期待できるな」


俺が笑うと、ルーベルトも小さく笑った。

その時、扉がノックされた。


「失礼します。夕食をお持ちしました」


看護師が、ワゴンを押しながら入ってきた。

トレイに載せられた夕食は、確かにルーベルトの言う通り、見た目も良く、栄養バランスも考えられているようだった。野菜スープ、焼き魚、サラダ、それにパン。シンプルだが、丁寧に作られているのが分かる。


「どうぞ、ごゆっくり」


看護師はそう言い残して、病室を出て行った。

俺とルーベルトは、それぞれのベッドで夕食を取り始めた。


「美味しいですね」


「ああ・・・うまい・・・」


「・・・なんでリュートは泣いているの?」


当たり前だろ。俺が病院で入院してた時、流動食しか食えなかったからな・・・

手術後は高たんぱくのもの、食べれたからよかったけど。


これなら、入院生活も少しは楽になるかもしれない。

食事を終えると、看護師が再びやってきて、トレイを片付けていった。


「では、おやすみなさい。何かあれば、ナースコールを押してくださいね」


「はい、ありがとうございます」


ルーベルトが丁寧に礼を言った。

てか、この世界にもナースコールとか、存在するんだな。


セラフィナ(やあやあ、2人とも。体調はどうだい?)


「hふぃううぇあgふぉghにp!」


ルーベルト(一応・・・)


行き成り、セラフィナが念話で話しかけてきたから、びっくりして変な声が出てしまった。ルーベルト達に変な目で見られたの恥ずかしい・・・


リュート(んで、何の用だ?)


セラフィナ(すっごい面白い展開になって来たんだ♪)


ルーベルト(面白い展開?)


リュート(あ~とっとと、要件話してくれ)


セラフィナ(はいはい・・・)


















セラフィナ(ユリウス以外のセプテム・ルクスのメンバーが全員惨殺された)

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