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捜査(2)

扉が開き、明るい雰囲気を纏った青年が入ってきた。


「やっほー!レオン・アルヴァスで~す!」


陽気な声。弾むような足取り。

部屋に入った瞬間、空気が明るくなったような気がした。


「よろしくお願いしま~す!あ、そこの君たち学生?すごいね、騎士団の調査に協力してるんだ!」


レオンは俺たちに向かって親しげに手を振った。

レオンの魔力は・・・オルスと同じように、一切の濁りがない。

悪魔の魔力が混ざっている様子は、全く見られないな。


「レオン君、座ってくれ」


「はーい!」


レオンは軽やかに椅子に座った。


「それで、何を聞きたいのかな?」


騎士団長は質問を始めた。


「まず、昨日の握手会について聞かせてほしい」


「握手会ね!すごく忙しかったけど楽しかったよ~!みんなすっごく笑顔でさ、僕も嬉しくなっちゃった!」


レオンは本当に楽しそうに話す。


「握手した相手の中で、印象に残っている人物はいるか?」


「う~ん、みんな可愛かったからな~。一人一人ちゃんと笑顔にしてあげたかったから、できるだけ丁寧に接したつもりだよ。でも、行き成り一人のファンが魔物になったって・・・マジでビビった」」


その言葉には嘘がなさそうだ。

セラフィナも特に反応していないし。


「悪魔について、何か知っているか?」


「悪魔?う~ん、授業で習ったことくらいかな」


「では、悪魔と接触したことは?」


「ないない!そんな怖いもん、会いたくないよ~」


レオンは大げさに首を振った。

その言葉は、真実だった。


「分かった。ありがとう、レオン君」


騎士団長が聴取を終えた。


「いえいえ~!役に立てたなら嬉しいです!」


「そうだな。」


レオンは明るく手を振り、部屋を出て行った。





「なんか気が抜けるような奴だったな」


俺は完全に休憩モードに入ってしまった。


「そうだね。でもあと一人いること覚えてる?」


「あ・・・ああああああああ!!!」


魔力感知を乱用したせいで疲労はピークになっていた。


「何々?そんなに発狂して。悪いけどまだ仕事あるんだわ、ばーか。」


「セラフィナお前一発殴らせろ!!!」


「やなこった」





—————————————





扉が開き、最後のメンバーが入ってきた。


「ルーク・フェルディナントです」


無表情。抑揚のない声だな。感情が読み取れない、冷たい印象の青年。


だが、俺はこの人物を知っている。一度だけ、校長室で会ったあの時の色男だ。

あの時はめちゃくちゃ口喧嘩してたけど、今回はちゃんとかしこまった雰囲気をしているな。仕事でオンオフ切り替えるタイプの人間かな?


ルークは指定された席に座った。動作は機械的で、無駄がない。

ルークの魔力は、問題ない。悪魔(デーモン)は憑依されていなさそうだな。


「ルーク君、まず握手会の時のことを聞かせてほしい」


騎士団長が質問する。


「う~んと、沢山の人と握手をした」


「それじゃあ、握手した相手の中で、印象に残っている人物はいるか?」


「多すぎるから、覚えられないな。」


その言葉には嘘がなかった。

セラフィナも特に反応していないし、問題なさそうだな。


「悪魔について、何か知っているか?」


「授業で習ったぐらいのことなら」


「では、悪魔と接触したことは?」


「ない」


「そうか」


騎士団長が聴取を終えた。


「それでは、私はこれで」


そう言い残して、ルークは部屋を出て行った。




「リュート、セラフィナお疲れ」


ルーベルトが労いにやってきた。


「それで、どうだった?犯人分かった?」


「まあね。ただ、この取り調べでも決定打となる情報はなかったよ」


「でも、彼奴だけだろ?あんな事言ったのは・・・」


ルーベルトとセラフィナが頷く。

騎士団長は・・・何も理解してないように見えた。


「そうだ、騎士団長さん、今から言う人を()()にバレずに徹底的に調べあげて」


「分かりました、セラフィナ嬢。誰を調査したらよろしいですか?」


「〇〇〇〇〇〇〇〇」


騎士団長は深く頷いた。


「分かりました。最高レベルの監視をつけます」


「お願いします」


三人は騎士団本部を後にした。


馬車に乗り込むと、セラフィナが深くため息をついた。


「疲れた・・・真理視(ヴァニタス・アイ)、こんなに連続で使ったの初めてかも」


「お疲れ様」


ルーベルトが、また優しい声で労ってくれた。


「でも、一応犯人の目星はついたね」


俺も、静かに頷いた。


「ああ。でも決定的な証拠がない。だからこそ、慎重に動かないといけない」


馬車は静かに学園へと向かっていく。


今日一日の出来事を、頭の中でくよくよ考えてた。騎士団本部でのこと、セプテム・ルクスのメンバーたちのこと、事情聴取のこと。色々なことがあった。疲れもあるが、それ以上に、なんとも言えない充実感のようなものが胸の奥にある。


「・・・とりあえず、今日は休もう。明日からまた授業だし」


「そうだね。騎士団が調査してくれるだろうし、俺たちは普通に学園生活を送ろう」


「そうしよう」


三人は、無言のまま顔を見合わせて、静かに頷き合った。

学園に戻ると、既に夕方になっていた。授業を終えた生徒たちがちらほらと寮に向かって歩いている。いつもと変わらない、平和な学園の風景。


「じゃあ、また明日ね」


「うん、お疲れ様」


「お疲れ~」


疲れた身体を引きずるようにして、俺たちは寮へと足を向けた。






俺が部屋に戻ると、アランとケルビが待ち構えていた。


「おかえり、リュート!どうやった?」


「お疲れ様。大変だった?」


「ああ、まあまあ疲れたよ」


俺はベッドに倒れ込んだ。


「で、何か分かったんか?」


「詳しいことは言えないけど、一応目星はついた」


「そうか。まあ、無理すんなよ」


「ありがとう」


その夜は、何事もなく過ぎていった。






翌朝、いつも通りの平和な朝が来た。

誰よりも早く目を覚まし、剣の素振りと魔力感知の訓練を行った。

寮に戻り、国語の長文を解く。

アランとケルビも起きてきて、三人で朝食を取りに食堂へ向かった。


「今日は普通に授業やな」


「うん。昨日は色々あったけど、今日からはいつも通りだね」


食堂に入ると、いつもと変わらない光景が広がっていた。生徒たちは普通に朝食を食べ、笑い声が響いている。まるで、昨日の事件など何もなかったかのように。この平和がずっと続けばいいのに・・・とそう俺は願った。


俺たちも席について、朝食を食べ始めた。




いつも通り、学園のホームルームが始まった。

ルグは相変わらず髪が無造作でぼさぼさでずんだられた格好をしている。いつも通りだの風景だ。

授業が始まった。いつも通りの鬼畜な魔法理論。いつも通りの鬼畜な実技訓練。ほかにも今日から受け始める数学科

・・・内容は、小学生高学年レベルだから数学じゃなくて算数だけど。




夕方。

寮に戻ると、アランとケルビが部屋で談笑していた。


「おかえり~」


「ただいま」


「今日は何もなかったな」


「うん、平和な一日だったね」


「それが一番や」


アランが笑う。

アランの言葉に、俺も頷く。確かに、今のこの状況は平穏そのものだ。何事もなく平和な日々が過ぎていく。それは、とても幸せなことなのだろうな。


俺は何気なく窓の外へと視線を向けた。夕日が学園を赤く染め上げていく。実に美しい光景で。そこには穏やかな時間が流れていた。


光が強ければ強いほど、影もまた濃くなる。そして、その影の中に何が潜んでいるのか。

まだ、分からない。




翌日。

また同じ朝が来た。

体内時計で目が覚め、身体を起こす。窓から差し込む朝日は、昨日と同じ角度で部屋を照らしていた。


いつも通りの朝の訓練メニューをこなす。

素振り、魔力感知の訓練。


朝食を済ませ、授業へ。

午前中の講義を受け、昼休みには食堂で昼食を取る。午後の授業をこなし、放課後は図書館で自習。そして夕食を食べる。

何も変わらない日常。




三日目。

同じことの繰り返し。

朝起きて、訓練して、授業を受けて、また訓練して、寝る。その繰り返し。変化のない、穏やかで、そして少しだけ退屈で平和な日々。


セラフィナとルーベルトと軽く話すが、特に進展はない。特別な話題があるわけでもなく、何か新しい発見があるわけでもない。昨日あった騎士団本部のことも、セプテム・ルクスのことも、まるで遠い昔の出来事のように感じられる。




四日目。

俺は図書館で、悪魔に関する文献を読み漁っていた。

何か手がかりはないかと思って。あの時のこと、あの不可解な出来事について、少しでも理解の糸口を掴めないかと。古い魔導書から、神話の研究書、歴史資料まで、片っ端から目を通していく。


しかし、新しい発見はゼロだった。既に知っていることの確認程度にしかならない。むしろ、セレナが図書館で見つけたあの本の方が、詳しく書かれていたくらいだ。


「・・・はぁ」


思わず、ため息が漏れた。

せっかく王立学園の図書館なんだから、もっと貴重な資料があると期待していたんだけど。



五日目。

何も起きない。

只々、静かに時間が流れていく。朝が来て、夜が来る。授業があって、訓練があって、また朝が来る。

・・・その繰り返し。穏やかで、何の変哲もない日常が、淡々と続いて言った。

俺は少しずつ、日常に戻っていく。


授業に集中し、訓練に励み、友人と談笑する。

セラフィナの軽口に呆れたり、キレたり、ルーベルトの優しさに救われたり、毒を吐かれたり。

・・・食堂で他愛もない話をしながら笑い合う。そんな、ありふれた平和な学園生活。


当たり前の日常。平和な日々。

『何も問題なんてない』そう思えるほどに、日常は俺を少しずつ包み込んでいった。


しかし、嵐は、必ず来る。

いつかは分からない。もしかしたら、明日かもしれないし、一年後かもしれない。その時が来れば、俺はまた、あの緊張感の中に放り込まれるのだろう。


ただ、今はその時ではない。俺はそう自分に言い聞かせながら、日々を過ごしていた。

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