夕飯
すまん!!!遅れた!!!
慣れない推理要素を入れたので矛盾が発生している箇所があるかもしれません。その部分を指摘してくださると幸いです。
暫く待っているとセラフィナが変装してやってきた。
俺も変装しとけばよかったかな?
「ルーベルトは?」
「分かんねぇ。もうちょい待ってから魔力感知で探すわ」
その後、すぐにルーベルトがやってきたため魔力感知は不要だった。三人は一旦セラフィナ専用の寮部屋で飯を食うことにした。
「相変わらず、綺麗過ぎな部屋な事・・・毎回毎回清掃員が掃除してんの?」
「まぁ、そうだね。でも、自分でできる所は自分でしてるけど」
「そういえばさ、僕ら普通に女子寮に入っているけど、大丈夫なの?」
「見られても金に物を言わせて口止めしたりしてるからほとんど問題ないと思うけど」
「うわ、権力の乱用・・・」
一旦俺たち三人は適当に椅子に座った。
さてと、今日の夕飯は何だろうか。
「夕飯できるまでは暇だからさ、少し話合おうよ。今日の事件について。」
セラフィナが聞いてきた。もちろん俺もそうつもりだ。
「いいよ。」
「僕もそれ言おうとしてたからさ、いいよ」
「それじゃあ話し合おうか。まず前提から整理しよっか」
セラフィナが指を一本俺たちに見えやすいように立てた。
「異論なし」
「僕も同意」
「じゃあ、話そっか。まず第一発見者のルーベルトに聞きたい。どのように魔物に変化したのかな?」
「う~ん・・・あの子のケースだと、肉塊が背中を突き破ってそれがあの子を包み込んで変貌した感じかな?」
へ~・・・想像以上にグロテスクな感じで変化してんだな。
「ほかにはある?」
そう聞かれたルーベルトは魔物に変化した時の記憶を呼び起こし始めた。
「・・・関係ないと思うけど魔物に変化する前さ、あの子の右手が異形の形になっていたんだよね」
「右手が・・・?どんな風に異形だったの?具体的に」
「う~ん・・・指が少し長くなって、皮膚が黒ずんでいた感じかな。ほんの一瞬だったけど」
「右手だけ・・・」
俺は何かが引っかかった。でも、まだ点と点が繋がらない。
「じゃあ次。変異したタイミング」
彼女は机を指で叩いた。
「倒れた直後。悲鳴も、前兆も、ほぼなし」
「毒や呪いなら、もう少しラグがあるはずだ」
ルーベルトが静かに言う。
「そう。だけどあの子は倒れた瞬間に魔物に変化したつまり・・・」
「条件を満たしたから、変わったってことかな?ルーベルト」
「そうだね、セラフィナ」
部屋の空気が、少し重くなった。
「条件?」
俺は聞き返した。
ルーベルトはそれを聞いて少し考えてから言葉を選んだ。
「う~ん・・・例えば特定の場所。特定の時間。特定の魔力干渉」
「校門前、昼休み直前、人が密集する時間帯」
セラフィナが即座に補足をした。
「・・・そういえばさ、普通の魔物に核なんてあったっけ?」
「う~ん・・・個体数は少ないけど、核はいるらしいよ。俺はあったことないけど」
すると、セラフィナが怪訝な顔をして俺に質問してきた。
「核持ちの魔物とは?例えばどうゆうのがいるの?」
「通常の魔物にも核持ちは居るらしいけど、有名なのは悪魔だね。悪魔は普通の魔物や人間とは異なり核がないと地上界で生活できないらしいからね」
「へぇ~・・・ねぇ、仮説なんだけどさ核持ちの魔物ってあの子と同じで、元は人間だったんじゃないかな?」
セラフィナのその言葉に、部屋の空気が一段と冷えた。
確かに、その仮説は成立する。成立するが・・・
「洒落にならんね。」
俺がそう言うと、ルーベルトは顎に手を当てて思考を巡らせ始める。
「てことはさ、これは戦争の前触れとかじゃないかな?」
さらに空気が冷える。
「戦争・・・」
「なぁ、ルーベルト。その根拠説明してほしいんだけど、いいかな?」
「いいよ。と言ってもこれもただの仮説だけど。そもそも、核持ちの魔物って一回目の聖獄干渉大戦の数日前から突然発生し始めたんだ。それと同時に悪魔の活動や個体値が一気に増えてきたんだよね」
俺たち三人は大体ではあるがこの事件の真相が見えてきた。
「てことは犯人は悪魔を増やそうとしていたのかな?」
「となると、あの群衆の中で堂々と悪魔を憑依させたってことか?」
「じゃあ、何で悪魔に変化しなくて魔物に変化したのさ?」
ルーベルトがまた思考を巡らせ始めた。
「・・・単純に失敗したとか?」
「・・・やっぱり、ここの部分は犯人に聞いてみないと分からないね」
「そうだね」
「今までの話をまとめると犯人は悪魔?」
「そうしかないね。そして容疑者は、あの校門にいた人全員かな?」
ルーベルトが慌てて疑義を呈してきた。
「待って、どうやって悪魔を憑依させる方法が分からないから容疑者は校門にいた人だけじゃないと思うんだけど・・・」
「其処も問題なんだよね・・・」
「そういえばセレナさんが授業中に悪魔の憑依について話してたよね。リュートは寝てたから聞いてないと思うけど」
「マジで⁉俺知らないんすけど・・・」
セラフィナが呆れた顔で俺を見る。
「授業中に寝てたの?」
「・・・悪かったよ」
「まあいいや。ルーベルト、セレナさんが何て言ってたか教えて」
突然、轟音と共に女の悲鳴が食堂中に響き渡った。
「またか・・・俺とルーベルトは先に行くからセラフィナは騎士団よんで」
「分かった」
「あ、ルーベルト。悪魔の憑依の話は後で絶対に聞かせて」
「了解」
「じゃあ行ってくね」
俺とルーベルトは食堂に真っ先に向かった。
食堂に着くとひっくり返った机、割れた食器、逃げ遅れた生徒の悲鳴が響き渡り、魔物が数体現れていて、それに一部の生徒が応戦していた。
「・・・世紀末学校ってこう言うことなんだね。」
「何呑気なこと言ってんの!!強化魔法発動するからそれで前線出て戦ってよ!!」
「りょーかい。でも先に生徒の避難を優先しないといけないから速度に偏らせた強化魔法にして」
「いいけど・・・」
そう言い、ルーベルトは俺に向かって速度を重視した強化魔法を発動した。俺は真っ先に生徒を助けては魔物のヘイトを買ったりした。
一部の生徒はパーティーとして戦えているため其処は問題なさそうだな。特にアランとケルビのコンビがすごい。二人は完璧な連携で魔物を押さえ込んでいる。
俺でもこの連携を崩すのは難しいからな。
生徒の避難が終わり、俺は高速で走りながら魔物を視界の端で観察をし始めた。大型でもない。群れ行動でもない。強さは・・・あの校門にいた魔物と大差変わらないな。
でも、この場にいるすべての魔物が自爆されたら食堂どころか学園もろとも吹き飛ぶ可能性があるな。
一体ならともかく、複数体を結界で包み込むことなんて俺の魔力量的に不可能だから早く決着付けないといけないな。
「強引に倒させてもらうか。新スキルも使ってみたいし、『無傷迎え』!!」
『無傷迎え』は簡単に言うとパリィの上位互換のスキルで、敵の攻撃を完全に見切り、最小動作で受け流し、使用者は一切の傷を負わない迎撃技だ。それは単なる防御ではなく、攻撃の勢い、魔力、殺意そのものを利用して戦況を覆すと言う、とんでもない能力をしているのだ。
でもデメリットは地味にでかくて、スキルを当てるのに失敗するとスキル発動の反動が自分の方に帰って来る。おまけに、極端な集中力の消耗も行うから、脳の負荷が大きいのも難点なんだけど。
ただ、今回は上手く当てれたみたいだ。
しかし、別の問題が発生した。
「おお!・・・吹き飛んだ・・・ってどこまで吹き飛ぶんだ・・・」
次の瞬間、吹き飛ばした魔物は一部の魔物を巻き込みながら壁の方に向かっていった。
そして・・・壁を突き破ってから止まった。
「・・・やばい奴じゃん。このスキル・・・」
「なんたいこの頭がイカれたスキルの威力は!!!」
またアランにチョップされた。
「お・・・俺も初めて使ったんだよ!!」
アランを含めたほかの生徒が残りを片付けてくれたらしい。にしても、無傷迎えは破嵐斬以上に扱いを考えた方がいいスキルだな。何なら使い勝手は下位互換のパリィの方がいいんだけど・・・
それよりも・・・たくさんの生徒がいる所に突然魔物が発生するなんて・・・
俺は嫌な仮説を立ててしまった。
「アラン、何でこんなに魔物が発生したんだ?・・・」
「簡単なことや。突然たくさんの女子生徒が魔物に変化し始めたとやん」
・・・やっぱりか。
俺の仮説は正しかった。
「・・・女子生徒、だけ?」
「せや。男子は一人もおらん。全員女子や」
・・・まてよ、てことはこれは無差別事件なのか。てっきり俺はあの子一人だけを対象にしていたと思っていたよ。
暫くすると、騎士団と教師たちがやってきた。うん、昼に見た光景とおんなじ光景だな。
その後からセラフィナがやってきた。
「ルグ先生、ちょっとの間、席外してもいいですか?」
「・・・どこに行くんですか?」
「う~ん・・・まあ、セラフィナの部屋かな?」
「分かりました。ただし、名前が呼ばれるまでは部屋から出ないようにしてください」
「分かりました。行くよ、セラフィナ、ルーベルト」
「「は~い」」
二人は一度セラフィナの部屋に戻っていった。
戻る前にまた、ルグの所に行き、耳元で囁いた後、二人の後を追った。
部屋に入るといつの間にか夕食が置かれていた。
でも、今は食べる気分にはならんけど・・・
椅子に座るとセラフィナが質問をし始めた。
「それで、あの大量の魔物ってやっぱり元人間?」
「多分ね」
「じゃあ、これ無差別事件じゃん」
「関係ないか分からないけどさ、あの魔物のほとんどは女子生徒らしいよ」
「うぇ・・・マジか・・・」
セラフィナが絶望顔をしている。ちょっと目の保養になりそうだ。お前の絶望顔は何故だか知らんけど飯が進みそうな見た目してるからな。
「ちょっと、今とても最低なこと考えてなかった?」
「イヤマッタク・・・」
「すっごくワザとらしいんだけど・・・てか何で女子生徒がほとんどなんだろうか」
ルーベルトが何か思いだしたような顔をしている。
「どうした?ルーベルト」
「あ、さっき話そうとしてたセレナさんの授業内容思いだしたよ」
「お、じゃあ教えてくれ」
「うん。悪魔の憑依方法は二つあって直接憑依型と間接憑依型があるんだ」
「「?」」
俺もセラフィナも聞いたことない単語だからかきょとんとした顔になった。
ルーベルトは指を二本立てた。
「直接憑依型は、そのまま悪魔が人間の身体に触れて、そこから精神に割り込む、または既に悪魔が憑依した人間がそれを行う。強引で成功率は高いけど、痕跡が派手に残る」
「で、間接憑依型は?」
「媒介を使う。たとえば魔道具とか」
この状況を見るに恐らくこの事件は直接憑依型の悪魔に憑依されて魔物に変化したのが真相っぽいな。
セラフィナが俺と同じ考えをルーベルトに質問形式で聞いた。
「てことは直接憑依型の悪魔に憑依されて魔物に変化したってことかな?」
「多分そうだと思う。間接憑依型だと、魔道具から悪魔の魔力が溢れ出すから、冒険者を目指す学生が全員見逃すとは考えにくい」
何となく納得できる。それに今考えたことだが間接憑依型の場合、最初の少女がどうやって憑依したかの説明がつかないしな。
となると直接憑依型で悪魔が憑依しようとしたのか。
でも、直接憑依型の場合はあんな大人数を、短時間でどうやって触れることが出来たんだ?
しかも、女子生徒に・・・
・・・まさか、
「・・・なあ、犯人はセプテム・ルクスの誰かじゃないのか?」
その言葉を聞いたセラフィナとルーベルトは愕然とした表情になった。
が、二人ともすぐに冷静に戻り、思考を巡らせ始めた。
「・・・なるほどね。その発想はなかったよ・・・」
「だね・・・セプテム・ルクスならあの時の握手会でたくさんの女子生徒に直接憑依型で悪魔を憑依させることができる・・・」
セラフィナは腕を組んだまま、ゆっくり息を吐いた。
「・・・確かに条件は揃ってる。校門前、人が密集、直接接触、しかも女子生徒中心」
ルーベルトも頷く。
「セプテム・ルクスは触れる理由を自然に作れる。握手、肩に手を置く、距離の近さ・・・全部、直接憑依型の条件を満たせる」
「しかもセプテム・ルクスのファンってほとんど女子生徒だよね。だから被害者も女子生徒ばかりなんだ」
俺がそう付け加えると、セラフィナが何かに気づいた顔をした。
「待って・・・ルーベルト、最初の少女の右手が異形になってたって言ってたよね?」
「うん、言ったけど」
「それって・・・握手した手じゃない?」
その瞬間、部屋の空気が凍りついた。
「・・・そうか。直接憑依型は触れた部分から侵入する。だから右手が最初に異形化した」
「握手会で右手を握られた生徒たちが、時間差で魔物に変化していった・・・」
三人の視線が交差する。
点と点が、線で繋がり始めていた。
「でもさ」
俺は机を指で叩いた。
「セプテム・ルクス全員が怪しいわけじゃないだろ。七人もいるんだから」
「そうだね。全員が悪魔に憑依されてるとは限らない」
セラフィナが慎重に言葉を選ぶ。
「むしろ、一人か二人。残りは何も知らない可能性が高い」
「じゃあ、誰が犯人なんだ?」
「・・・それは分からない。今の段階では、セプテム・ルクスの誰かが犯人、としか言えない」
ルーベルトが悔しそうに唇を噛む。
「証拠がない。状況証拠だけじゃ、特定できない」
「だね。推理としては筋が通るけど、決定打がない」
「・・・この学園、もう安全圏じゃないな」
俺がそう言うと、二人は無言で頷いた。
「とりあえず、今分かってることをまとめようか」
セラフィナが冷静に提案する。
「犯人の目的は、恐らく悪魔を増やすこと。戦争の前触れかもしれない」
「手段は、直接憑依型。セプテム・ルクスの誰かが握手会を利用して憑依させた可能性が高い」
「被害者は女子生徒中心。これはセプテム・ルクスのファン層と一致する」
「でも、まだ犯人は特定できていない。セプテム・ルクスの七人の中の誰か、としか分からない」
「そして、憑依は失敗している。悪魔ではなく、魔物に変化してしまった」
俺たちは静かに頷き合った。
「・・・夕飯、冷めちゃったね」
セラフィナが苦笑する。
「食べとこ。腹が減ってると、判断鈍る」
ルーベルトが椅子に座り直した。
俺もスプーンを手に取り三人で静かに夕飯を食べ始めた。




