昼休み
三時間目が終わり、昼飯の時間だ。この学園の時間割は向こうのとちょっと違って、午前午後それぞれ1時間授業×3回の計6時間授業なのだ。今は授業が終わり、昼飯を食いに行くところだ。
昨日はセラフィナの所で飯を食ってたけど今日はアランとケルビの三人で食堂とかで食うか。
「なぁアラン、ケルビ、今から食堂で飯食いに行かね?」
「別にかまわんよ」
「いいよ・・・」
「りょーかい。それじゃあ行こうか」
そんまま、三人仲良く食堂に向かおうとしたその時、教室中が騒がしくなった。
「おい!『セプテム・ルクス』が近くに来てるらしいぞ!」
「え⁉本当⁉すぐ行く!!」
沢山の生徒が何処かに走って向かっていく。よく見ると他学年の生徒も何処かへ向かってるし。
「なあ、セプテム・ルクスって誰だよ」
「セプテム・ルクスはこの世界全土で希望と流行を司る七人として知るうトップアイドルグループや。お前知らんやったん?」
「うん、知らない。」
村に引きこもって冒険者活動してたから知ってるわけないやろ。てか、皆どこに向かっているんだ?
近くの窓を見ると学校の校門前に七人の色男がいる。
その周囲をたくさんの女子生徒が囲みこんでいる。よく見たらアリアもいるやん。彼奴、そう言うの意外と好きなんだな。
・・・あれ?一人見覚えがある奴がいるな。確か・・・思い出した。校長室にいたあの色男だ。
少し眺めているとその色男は此方を見掛けた。なにキメポーズしてんだよ。ちょっと引くわ・・・
「それで、二人は今から食堂に行く?それとも、セプテム・ルクスを生で見に行く?」
「俺はそうゆうの一切興味ないんけんやめとくよ」
「僕もあまり知らないからやめておくよ」
「分かった。それじゃあ食堂に行こうか」
そのまま三人で食堂へ向かうことにしたが、校舎の外は既に異様な熱気に包まれていた。
黄色い悲鳴、誰かが転び、誰かが名前を叫ぶ。まるで祭りの真っただ中だ。
「昼休みってレベルじゃねぇぞ!!!」
「毎回こうなるわけやないで。たまたまや、たまたま」
アランはそう言いながらも、周囲を警戒するように肩をすくめていた。
食堂に着くと、予想通り空席は少なかったが、それでも端の方に三人分の席を見つけることができた。
俺は日替わり定食、アランは肉多めのプレート、ケルビは野菜中心のメニューだ。
「しかし、校長も大変やな。アイドル偶々通りかかるだけで学園が戦場や」
「あ~あの入学式早々人外宣言してきた校長ね。ほんとあの人何者なんだろうな」
そう言いながらスプーンを口に運んだ、その時だった。
突然空気が重くなった。それに気づいた俺はすぐさま魔力感知を発動した。
「・・・さっきの校門で魔物が発生した。魔物は一体だけだが・・・」
「嘘やろ・・・なんでこげなところで魔物が発生したんや?」
「分からない・・・けど、冒険者としてこの状況、見過ごすわけにもいかないから行ってくるよ」
俺はスプーンを置き、立ち上がった。ケルビが青ざめた顔で此方を見ている。
「大丈夫・・・?」
「心配ないさ。すぐに戻ってくる。・・・だから俺の昼飯食うなよ?」
「「分かった。」」
俺はすぐに食堂から出て校門へと向かった。それと同時に念話がつながった。
ルーベルト:(リュート聞こえる?)
リュート:(ルーベルトか。状況はどうなっている?)
ルーベルト:(今、校門に突然現れた魔物と僕とセラフィナ、あとアリアって人と
三人で応戦中。でも、一つ不可解な事があるんだよね・・・)
リュート:(不可解な事?・・・まぁいいや。とにかくそのまま戦っていてくれ。
俺もすぐに向かう。)
ルーベルト:(分かった)
念話が切れた。俺は全力疾走で走って行った。
【ルーベルト・フォン・アルヴィス】
魔物が発生する少し前に遡る。
沢山の生徒が校門に集まっていくのをルーベルトはその様子をぼーっと眺めていた。
その先で七人の色男が突っ立っていた。無論、リュート同様、彼らのことは一切知らない。
その様子を偶々見掛けたアベルが話し掛けてきた。
「どうした?ルーベルト」
「あ、アベル。たくさんの生徒が校門に走っていくのを眺めてた。それで、そこにいる七人の色男誰かな?」
そう言い、ルーベルトは校門を指さした。
「あらら、あそこに居るのトップアイドルグループのセプテム・ルクスじゃん」
「知ってるの?」
「逆に知らない方が驚きだよ。」
そんな、有名人なんだ。
セプテム・ルクスの目には沢山の女子生徒で埋め尽くされている。なんか大変そうだな。
暫くアベルと言葉を交わしていた時、ルーベルトの視界の端に校門で倒れている少女が見えた。
よく見ると、右手が爪の生えた肉塊へと変化していた。
次の瞬間、少女の背中が裂け、そこから出てきた肉が全身を包み込み、異質な組織が盛り上がっていく。
この様子をルーベルトとアベルはしっかり見ていた。
「なぁ見たか?人間が魔物に変化したぞ・・・」
「うん・・・僕も見た。行ってくるよ。アベルは・・・」
「先生に報告してくる」
「ふふっ、話が早くて助かるよ。頼んだ」
そう言い残し、窓を突き破って飛び降り、空魔法で最短距離で飛んで移動した。
魔物はまだ動いていない。
・・・が、今のうちに殺しておかないと死者が出る。
ルーベルトは火球を発動し、魔物のいる所を正確に狙いを定めて打ち始めた。が、何故か魔法は当たる寸前で消え失せた。単純に距離が足りなかったんじゃない。
「恐らく魔法を遮断したんだろうな・・・少し厄介だな」
周囲では、異変に気づいた生徒たちが悲鳴を上げ、逃げ惑い始めている。ただ、一部の生徒やセプテム・ルクスが冷静に避難指示を行っているためか、今の所、死者を出していない。
・・・今の所は。
ルーベルトは魔物付近に着地し、別の魔法を発動しようとしていた。
「悪いね。ちょっと遅れた」
後ろから若い女の声がした。振り向くとセラフィナがそこにいた。
「何の用ですか?今忙しいんですけど・・・」
「私も今絶賛忙しいんですけど」
「貴方が首を突っ込んだんでしょうが・・・」
魔物の右腕が二人の方に襲い掛かる。二人にとっては容易に避けられる速度なためか、避ける素振りを見せなかった。その様子を見ていたアリアが剣を取り出し、右腕を受け止めた。
「何を為さって要るのですか!そんな棒立ちをしていたら今ので死んでいたのですよ!」
「「ああ、悪い」」
二人は抑揚のない声でそう答え、セラフィナは剣を抜いた。
「それじゃあ、どうやって討伐する?ルーベルトの手の内は大体は知ってるけど、アリア嬢の戦闘スタイルは知らないからね・・・」
「誠に遅ればせながら申し上げますが、貴方様は王位継承者の一人であるセラフィナ公爵令嬢でありませんか?何とこの場所にて何をなさっていらっしゃるのでしょうか?」
魔物が襲い掛かってくる。しかし、セラフィナは細身の身体からは想像できないほどの剣速で、魔物の腕を切り落とした。
「今はそんなこと気にしなくていいの。それよりも・・・あらら、腕が生えてきたじゃない」
「再生速度早いね・・・」
「何故この状況をお二方は冷静に保つことができるんですか・・・?」
「「知らん」」
二人はアリアに対して少し強く言い放った。
「それよかルーベルト。この事リュートには伝えた?」
「あ、伝えてないわ今から伝えるから待ってて」
そう言ルーベルトは念話でリュートに話しかけた。
「お~い!!!そこしっかりしてよね!!!まあ、彼奴ならこれぐらいのこと気づいていると思うけど。・・・さてと、アリア嬢、今から此奴殺すけど手伝ってくれるかな?」
アリアは答えに屈していた。当たり前だ。赤の他人とはいえ、目の前で自分と近い年齢の少女が魔物に変化したからだ。しかも惨く、醜く。
「・・・」
「・・・だったらルーベルトを守ってほしい。私があれ切るから」
アリアは少し口をつぐんだが答えを出した。
「・・・わかった。」
「じゃあ、ルーベルト、強化魔法寄越せ。早く。」
「それが人に頼む態度なのですか・・・?」
ルーベルトは強化魔法をセラフィナに向けて発動した。
それと同時に、セラフィナは剣を構え魔物に向かって突撃した。魔物はそれに反応し、ターゲットをセラフィナに絞って攻撃を始めた。
しかし、その攻撃はルーベルトが強化魔法をかけていたためすべて避け切った。そこから空中で体を反転させ、魔力を圧縮した蹴りを叩き込み剣を差し込んだ。
衝撃が内部に浸透し、魔物の体が大きくよろめく。
魔物の肉体の一部が崩れ落ちて核が露出した。
「弱点み~っけ♡」
「うわ。気持ちわる。」
「ちょっと今のマジで引いた奴だろ!!!それよりもこれで決める!」
だが、核が不気味に光り始めた。ルーベルトは魔力感知を使用しこの状況を理解した。
核が爆発する。
「あ、逃げろ!!!」
「わ、間に合わねぇ・・・」
核が爆発した。
【リュート・アルス】
「あの三人・・・ほとんど終わらせてるじゃん」
リュートは校門へ移動中、時折三人の戦闘を魔力感知で見ていた。魔物はほとんど体力を削られているためか、動きがとても遅いのが分かる。
「とゆうか、セラフィナ結構動けるんだな。今魔物の腕を切った時の剣速、相当早いね」
これなら大丈夫、とリュートは考えた。
その瞬間、魔物の魔力が急増しているのを魔力感知が知らせを送った。
やばいな。恐らくあれは自爆する下準備を行っている。てか、彼奴らそれに気づいていない⁉
やば、巻き込まれるじゃん。何か手はないか・・・そうだ。見よう見まねであるけどあれ使ってみるか。
そう言い、俺は魔物の方に目にも止まらない速さで移動し、二つの結界を発動した。
けたたましい轟音が王都中を響かせる。近くにいた人はパニックになったり、耳鳴りを起こした。
しかし、この爆発に巻き込まれた人は誰もいなかった。
何故なら・・・
「うわ、遅れて登場とかまるでヒーローだね。リュート」
「腹立つわ・・・」
そこには核の周囲に二枚の結界を張ってるリュートの姿だった。
その様子を見ていたルーベルトが結界の方を指さした。
「リュート、その結界は何?」
「これは物理結界と魔法結界を重ね掛けで発動したんだ。今思えば魔力による自爆だから魔法結界だけで良かったけど」
セラフィナが呆れた様子でこちらを見ている。
「どこで覚えたのよ・・・」
「それは企業秘密で★」
アリアが、三人に対して質問を問いかけた。
「・・・貴人方は一体何者でしょうか・・・?」
「「「う~ん・・・そうだな・・・」」」
「ヒーロー」Byリュート
「人外二名と真面枠一人の仲良し三人組」Byルーベルト
「悪だくみ連盟」Byセラフィナ
三人はお互い顔を見合わせはじめ、三人の醜い言い争いが始まった。
「・・・なあ、リュート。僕は兎も角、君とセラフィナはヒーローじゃないと思うんだけど・・・」
「そうそう、私は兎も角リュート、君は魔王陣営だと思うけど?」
「はぁ⁉二人して何で俺のこと否定するんだよ⁉それに魔王枠はセラフィナじゃないんですか?」
「違います~www私は・・・」
「邪神でしょ?」
「ブフォッwwwルーベルト正解だよwwwセラフィナは魔王じゃなくて邪神だったわwww」
「お前ら二人して何だよ!!てかルーベルト、自分で真面枠とか言ってるけど自画自賛じゃないんですかぁ~???」
「セラフィナよ。彼は俺たち三人の中で一番真面っていう意味で言ってるんだよ」
「ちが・・・違うから!!!」
アリアはそのやり取りを呆然とした表情で見つめていた。そこに立つ三人は、まるで昼休みの延長のような軽さで言葉を交わしている。
「・・・意味が、分かりません」
「ん?どうした?アリア」
ぽつりと、震える声が零れた。
「目の前で、人が・・・魔物になって・・・爆発して・・・それなのに・・・」
アリアの視線は、消え去った魔物がいた場所に釘付けだった。血も、肉片も残っていない。ただ焦げた地面だけが、現実を主張している。
「・・・怖く、ないのですか?」
その問いに最初に答えたのはルーベルトだった。
「怖いよ」
その答えはあっさりとしていた。しかし、はっきりと言っている。
「怖いし、慣れたくもない。・・・でもね」
ルーベルトは、アリアの方を見て小さく笑った。
「立ち止まったら、次に死ぬのは誰かだから」
セラフィナは剣を納めながら、肩をすくめる。
「それに、今回は運が良かった方よ。爆発型コアなんて、街中で起きたら本来は死者が出る。不本意だけど、リュートが来てなかったら大惨事になってたよ・・・」
リュートは結界を解除しながら、苦い顔をセラフィナに向けていた。
「それに、人為的変異、魔力遮断、おまけに自爆機能付き。完全に誰かが意図してやってるね。多分これ、ただの事件じゃないよね?」
セラフィナがそう言い、リュートとルーベルトは静かに頷いた。
その瞬間、遠くから複数の足音が聞こえてきた。




