毒親
博多弁に関しては翻訳ツールを使っています。
使い方間違ってる所あったら教えてほしい。
俺はすぐさま男湯で身体を洗い、何とか一組の入浴時間中に風呂に入ることができた。
偶々風呂に入っていた同級生の『アラン・カルロス』に自分の寮部屋の場所を聞いた。
「なあ俺の寮部屋ってどこか分かる?」
「ん?おおかた、寮ん入り口に貼ってあるけんそこ見りゃあ分かるて思うばい」
ガッツリ博多弁喋っとるやん・・・って突っ込むのはやめとこ。
「そんで、お前リュート・アルスやろ?」
「そうだけど・・・どうしたんだ?」
「俺、お前んルームメイトん一人や。」
おや、早速ルームメイトの一人がわかったな、ラッキ〜
「ならよろしくな。アランって呼んでもいい?」
「別によかよ」
そういい、俺とアランは握手をした。結構ガッシシ握った。
「それじゃあ、俺は先に上がるから」
「おう、また後でな」
「おう、ならまた後でな」
そう言い、俺は風呂を上がり、部屋着に着替え、寮の入り口に向かった。寮の入り口には大きい紙が貼ってあった。
さてと俺は一体どこだろうな・・・
目を通していると、俺の名前が書いてあった。その左側には寮の部屋番号右側には二人のルームメイトの名前が書いてあった。右側はさっき会ったアランの名前と、もう一人のルームメイトの『ケルビ・マッケウス』と書かれていた。
そういえば今年の男子寮部屋は三人から四人入ることになっているんだっけ。
どうやら入学定員を決めていなかったため、及第点を超えた生徒は皆合格判定を貰ったのだ。そのため、今年の入学者数は去年の約2倍の200名となり、とんでもない生徒数になった。そこら辺ちゃんと管理しとけよ。
何故、こんなにも受験者数が多かったのか。その理由は単純に強くなって冒険者になりたい人が多いからだ。クロカワのおかげで今のご時世、冒険者が男女問わず若者の憧れの職業となっている。しかし、実際冒険者は弱肉強食の世界なため、強者である必要があるのだ。そのために入学する生徒が多い。
俺とルーベルトには関係ないけど。
部屋についた。質素な木製の扉で番号札がかかっていた。
中に入ると二段ベットが二つ、丸型の小さいローテーブルが置いてあり、そこでケルビが死ぬ物狂いで勉強していた。その眼と心には温もりが無くただの人形のようなものだった。
ごく稀に俺やルーベルトのように入学する前から冒険者となるものもいるが其奴等に関しては相違点がある。
俺やルーベルトのように自ら冒険者になったものと、無理やりさせられた人たちがいる。前者に関しては優秀な冒険者が知人か親にいたら特に問題ないんだが・・・
「ケルビお前、少しは休憩したら?」
「ダメだ・・・しないと・・・しないと・・・売られる・・・捨てられる・・・」
後者に関しては大問題だ。親は子供をただの道具として扱っている。そういった子供たちは冒険者になる以前に、なった後でも体や心を壊してしまい、まともに生活できなくなってしまう。この世界、病院の代わりに教会があり内科や外科、精神科など、なんでも直してくれるんだが、その費用は桁外れの価格をしていて平民には払いきれないのだ。
そうなったらどうなるか。
捨てられるか売られるかの二択だ。そうなったら、彼奴が裏社会を支配し、色々改革とかしない限り、まともな生活に送ることがほぼ不可能になってしまう。
それを危惧して各国は様々な対策をとっていた。オルディナシスでは一部成功したが他の国では意味をなさなかった。
その結果、各国はこの状況を完全スルー。そして今でも、ケルビのような境遇の人がたくさんいる。
許されることではないよな・・・
俺は無言のまま、ケルビの背後に回った。
机に向かっているのに、指先は微かに震えている。文字を追っているようで、実際には何も見えていない目をしている。
「・・・売られるとか、捨てられるとかさ・・・」
できる限り軽い口調で言ったつもりだったが、思ったより低くなってしまった。
「ここは学園だ。少なくとも在学中は、そんなことは起きないさ」
ケルビの肩がぴくりと動いたが、顔は上げなかった。
「保証なんて・・・ない・・・」
「あるよ」
俺はそう言い、ローテーブルの縁に腰を下ろした。
「この学園、形式上は保護施設も兼ねてる。成績が最低でも及第点を割らない限り、強制退学はまず無い。売買なんて論外だ」
それは事実だ。表向きには綺麗事を並べているが、少なくとも商品として外に流すほど、学園も腐っちゃいないし、それを彼奴は名声集めのために見逃さないだろうな。
ケルビはようやく鉛筆を置き、ゆっくりと俺の顔を見た。
虚ろだった瞳の奥に、ほんの僅かだが、疑念と希望が混ざった色が宿っている。
「・・・本当、か?」
「ああ。俺が嘘つく理由、ある?」
しばらくの間、沈黙が流れた。
そして、ケルビは小さく息を吐いた。
「・・・少し、だけ・・・休んでも・・・いいのか・・・?」
「むしろ休め。今のままじゃ、実技で倒れるぞ」
そう言うと、ケルビは力が抜けたように床に転がった。
その瞬間、扉が勢いよく開いた。
「リュートもう来てたんか」
入ってきたのは、風呂上がりで髪を雑に拭いているアランだった。
「もう一人おるやん。此奴か?」
「・・・そうだよ」
「よろしくな!アラン・カルロスたい!」
アランは何の躊躇もなく手を差し出した。
ケルビは一瞬戸惑ったが、ゆっくりとその手を握り返した。
「・・・よろしく」
その握手は弱々しかったが、確かに人のものになった。
俺はその様子を見ながら、胸の奥で静かに誓う。
少なくとも、この部屋にいる間だけは——此奴を道具扱いする世界から切り離してやる、とそう俺は誓った。
「なぁ、なぁ、そこ二人はさどこけん来たんな?」
唐突にアランが俺とケルビに聞いてきた。
いや博多弁だから難解なんだけど・・・多分アランは何処から来たのか聞いたんだよな?
「えっと・・・グリーセリア村って所」
「ああ、遠隔地にある村の中で経済力がトップクラスな所やろ?」
「そうなの?」
「そうばい。」
経済力が高そうなのは知ってたけどここまでとはね。もはや村とは呼べないところだな。
「それか、ケルビは?」
「オルベルトってところ・・・」
どこだ・・・そこ?
この世界の地理に関しては資料がなくて馴染みがないからな・・・
「あー・・・あすこか・・・」
なんかアランが渋い顔をしている。そんないいいイメージがないところなのか?
ケルビの親だっているしね。
「あすこは超学歴主義な国デワレイムの主要都市の一つしこんなしこんな・・・相当賢くんと生きていけんけんな・・・」
そんな所があるのか・・・アメリカや韓国以上の学歴主義な所っぽいな。
「それか、ケルビは本当はなんやりたいんや?」
「・・・ふつう」
ケルビは小さな声で呟いた。
そして少し恥ずかしそうに口を開け、喋り始めた。
「普通の・・・生活・・・・・・おかしい・・・?」
「おかしくなんか無いさ。普通の生活を送りたいって誰もが思ってることだよ」
「そうや。これおかしいって嘲笑う奴はおんなし人間と思わんとき」
少し明るく、そして恥ずかしそうではあるが、子供のような健気な声でケルビは答えた。
「・・・うん!」
ふと時計を見ると時刻は9時半になっていたため、俺たち三人は消灯時間10時になる前に寝る準備を行なった。
二人は荷物の整理や制服の確認も既に終わらせていたが、俺はと言うと一切終わらせていないため、すぐに整理を始めた。ルーベルトが最低限に整理してくれてたらしく、荷物の片付けはすぐに終わった。
さてと、どんな制服なのかな〜?
荷物と共に置かれていた制服が入った袋を開けた。
「おお〜!」
なるほどね。白をメインの色にした日本のブレザーみたいな感じかな?
左胸には学園の紋章が縫い付けられ、銀色のボタンが静かに光ってるな。学園色の細身のネクタイ、ズボンは動きやすい濃紺をしている。
早速来てみることにした。今は誰もいないから別に問題ないし。
制服を着た感想は結構かっこいかも・・・
そう思いながら、謎にキメポーズを繰り返した。
特に意味はないが。
「何自分に惚れこんでると?」
「アビャハアァッッッッッッッ!」
いきなりアランに話しかけられ、俺はぶったまげた。
おまけに変な声も出た・・・
恥ずい・・・
「・・・なん処けんその声出したと?」
「だ・・・だってさ!いきなり話しかけられたからだよ!!!」
「赤面してるけど大丈夫?」
「なわけあるか!!!」
・・・うう、恥ずかしい・・・
俺はすぐさま部屋着に着替えた。
幸い俺が決めポーズをしてたのを見られたのはアランだけだし大丈夫だろ。多分。
それにすごいイタイ奴に見えたかも・・・
記憶を消す魔法ってあるのかな?
暫く待つと、ケルビが帰ってきた。
「おーい、もう寝るじぇ」
アランが電気のスイッチに手を掛けてた。
「はいはーい」
「いいよ・・・」
アランが電気を消してすぐ俺ら三人は床に就いた。
あぁ・・・何度思い出しても恥ずかしい・・・
そうずっと思っているといつの間にか眠っていた。
俺はこの日、異世界生活初の黒歴史が誕生したのだった。




