人畜生共
「リュート。やっと見つけたよ・・・」
ルーベルトはどうやら講堂の出口でずっと待っててくれたみたいだ。
「お前。学園長の話聞かずに寝てたな?」
「いや・・・寝てないよ・・・」
「ふ~ん。本当は~?」
「寝てました…」
「やっぱりか。知ってたけど。」
「うわ、ひどい・・・」
「ごめん、ごめん。それで今から行くんだっけ?」
「ロビーでクラス表が張り出されるから、どこのクラスに所属するか見に行くんだよ。」
「そうだった。忘れてたよ。ありがとう、ルーベルト。」
ロビーに移動をしたんだが、たくさんの人だかりが邪魔をしてクラス表が見えない。
この調子じゃ、昼飯が食えなくなりそう。
先に昼飯食っとくか。
「ルーベルト。ここでずっと待ってると昼飯が食えなくなるからさ、先に食堂で食いに行こうや。」
「・・・そうだね。ここでずっと待ちぼうけ喰らっているよりはマシだね。」
「それでは、ぜひ私と一緒に食事をいかがでしょうか。」
・・・この声、前に一度だけ聞いたことがある。澄んだソプラノ寄りの声がロビー響き渡る。
俺を除く近くにいたすべての生徒が彼女を見ている。
髪は淡い金色〜白金、腰まで届く長髪。澄んだ蒼の瞳。
肌は透けるように白く、病的ではない自然な陶器肌。
スタイルまだ成長途中の、華奢で直線的な体つきで肩幅は狭く、腰も細い。
その佇まいは気品に満ちている。
そして何よりその美しさ。
年齢が分かりにくい美しさ。可憐というより、幼さの残る威厳が先に来る顔だちをしている。
その美貌さを可愛らしい制服でさらに引き立てる。
誰もが彼女の美しさに心を奪われるだろう。
その二つ名は『気高き美の結晶』と呼ばれている。
だが、俺はこの女を知っている。異世界に来てからずっと危険人物として恐れていた・・・
「ご無沙汰いたしております。セラフィナ公爵令嬢。」
「お顔を合わせていただけませんか。リュート・アルス様。」
俺はセラフィナに顔を合わせた。セラフィナが敬語なの謎に威圧感を感じる。
「お顔にはそれほど変化が見られないようですね。成長されたのは体格だけでしょうか。」
「余計なお世話でございます。それで、ご用件は何でしょうか?」
「何かと言いますと、先ほど申した通り昼食のお誘いをさせていただきます。」
「誠に申し訳ございませんが、今回はご遠慮させていただきます。」
「申し訳ございませんが、拒否権はございません。」
おいこら。堂々とそんなこと言っていいのかよ。ただ、ここは人目に付く。もし断ったら俺はともかく、ルーベルトも貴族連中に目を付けられるかもしれない。そうなった場合、俺も此奴もこの学園生活がおじゃんになるかも。
まあ、こいつのせいででもう既に目を付けられたかもしれんが。
「はぁ・・・わかりました。一緒にいただきましょう。恐れ入りますが、ルーベルト様もご一緒にお越しいただいてもよろしいでしょうか?」
「ええ、構いません。」
「分かりました。行くよ、ルーベルト。」
「えっ、あっ、うん。分かった。」
俺とルーベルトはセラフィナの後をついて回った。
しばらく歩くと、セラフィナの寮室所に着いた。とゆうか、女子の視線が鋭い。あれ?ここ女子寮じゃね?
俺ら、もしかしてやばいとこにいるのか?まあ、セラフィナがいる場所だから元からやばいか。
てことは猶更やばいじゃん。
何かを察したのか俺ら二人の方に振り向いた。
「そんなに警戒なさる必要はございませんよ。」
「そうか・・・」
中に入ると、きれいに整えられたベッドや椅子、机が置かれていた。
その机にはご丁寧に三人分の食事が置かれていた。
「えっと、よろしいのですか?」
「もう敬語で話すのはもうやめ。こっからは普通に話そう。さて、あの盗賊たち、どうなったのか知りたいから食べながら話そうよ。」
「分かった。お前があの盗賊たちをしばいた話の後からでいいか?」
「構わんよ。」
ここで、一息をついて、
「お前がな!あの後!俺に押し付けたからさ!お前を助けに来た騎士たちの説得が!死ぬほど!大変だったんだぞ!」
「あれ~?そうなんだ!ごめんね!押し付けて★次からは押し付ける量を減らすからさ頼んだよ★」
こ・・・この人でなしが・・・
「下手したら俺死ぬところだったんだぞ。それを『あれ~?そうなんだ!ごめんね!押し付けて★』で許すか!しかもまた頼んだって・・・まあ、そのおかげで盗賊のアジトの襲撃が楽に終わって、ルーベルトを含む、人質たちを解放できたしな・・・」
「やっぱり私のおかげだね。」
「調子乗るな!!!」
・・・しばらく食事を挟むと、ルーベルトが怪訝そうな顔をしてセラフィナに聞いた。
「えっと、セラフィナ・・・様。」
「様付けなくていいよ。邪神セラフィナと呼んで」
「おいこら!誰が邪神だよ!魔王リュート!」
「お前だろ!それ!」
「ああん⁈」
「あの・・・」
「「ハイ。なんでしょう?」」
「セラフィナさんは、盗賊に攫われたって言ってたけど本当は、自ら攫われに行ったの?」
「そうだよ~」
「やっぱり?おかしいと思ったよ。お前、絶対裏社会にスパイかなんかを潜り込ませてるだろ。」
「せいか~い!」
せいか~い・・・じゃないよ。てか、そんなことして何になるんだよ。
「色々あって裏社会の内情を調査しないといけないからね。そうしないと、私、死ぬ可能性が高いから」
セラフィナ一体何考えてんだ。裏社会を調査しても何も特になることは・・・
あ、もしかして・・・
「セラフィナさんは、裏社会を支配しようとしているんですか?」
俺が聞く前にルーベルトが質問した。
「お、やっぱ君鋭いね。正解のご褒美として理由を教えてあげよう。一つ目はオルディナシス家暗殺を阻止すること。裏社会には暗殺ギルドとか闇商人ギルドとかあるから色々やばいのがあるからさ、そこを経由して他国の貴族や王族が暗殺依頼出されたら特定しようがないしね。仮に王族全員殺されたことを闇商人ギルドとかに知られでもしたら 、そこから情報が拡散されて、ここを植民地にするために周辺諸国や魔族が進軍してくるだろうよ。二つ目は・・・」
「王位継承争いか?セラフィナ。」
「せいか~い!さっすがリュート。この国の王位継承争いって結構血みどろの戦いになることが多いのよね。そのせいで、無関係の国がたくさん滅んだり、挙句の果てには聖獄干渉大戦が起きたりと色々とやばいのよ。・・・だけど、私まだ死にたくないし~そんな戦いに巻き込まれたくないから先手を打とうと思って。」
もしそれが本当なら、王位継承争いなんてとっとと引けばいいじゃんか。そうすれば他国が滅んだり聖獄干渉大戦なんて起きないじゃんか。
なんでこんなデメリットしかないことを態々しないといけないんだ?
「もしかしてですけど・・・どの派閥が暗殺依頼出したか分かり易くするためでしょうか?」
ああ~そうゆうことか。それが露見すれば確実にその派閥は落ちぶれやすくなるから、殺そうとしてくる敵貴族が減るってことか。そうすれば、王位を取ろうが取るまいが自身は生き残れる確率が高いわけか。
「まあ、それもそうだけど本命はわざと負けて善人ポジションを取ることだよ」
「・・・お前、えげつない作戦だな。」
俺がセラフィナの意図を汲み取っとったのをルーベルトは気づいて、驚きを隠せない表情をして俺の方を向いた。
「えっ?リュート、セラフィナの謀略分かったの?」
「ま、だいたいだがな。そもそも此奴は自分の手を汚さずに王位継承を狙っている。おまけに周辺諸国の植民地化もだ。」
そう言い、セラフィナの方を指さした瞬間、セラフィナは底意地の悪そうな顔をして、俺の方を向いた。
国のお姫様とは思えない狂人じみた悪魔の笑いをしたあと、セラフィナは口を開いた。
「あっはははは!そうだよ、リュート。正解だよ!」
またルーベルトが怪訝そうな顔をしている。説明しないとな。
「そもそも、此奴の美貌っぷりはこの上ない美しさをしているから、男も女も皆簡単に魅了されるだろうな。そんな奴が政治関係の戦争から距離を置いて民衆救済や孤児院支援だけを続けたら、名声も高まるだろう。でも裏では、裏社会を支配して闇商人ギルドで静かに流通を操る。武器の流通を特定の派閥にだけ届かせ、他の派閥では武器が不足するようにする。食料も同様だ。そうすると、その派閥に対してほかの派閥のヘイトが高まる。一方、暗殺ギルドでは密告や誤情報を流しまくって、派閥同士の協力関係を持たせないようにする。そうすれば彼らは、互いを信じられなくなり、互いに先制攻撃を仕掛け戦争が始まり、互いに自滅していくってことか」
「だけどね、周辺諸国はそれを黙って見過ごすわけがない。だったら、闇商人ギルドを通して武器と情報をばらまくの。」
「だが、お前は事実無根な情報を周辺諸国に吹き込むんだろ?」
ルーベルトが青ざめた顔をしている。
どうやらルーベルトもセラフィナの謀略の真意を見抜いたようだ。
「ぇ・・・もしかして、世界規模の戦争を起こそうと・・・」
「せいか~い」
ルーベルト、さっきからずっとドン引きしてんじゃん。
そりゃそうだよ。王位継承者の一人からとんでもない爆弾発言かまされたからな。
「闇商人を使って、一方の国には好機が訪れたと吹き込ませて、もう一方には侵略が迫っていると告げさせる。国を植民地化させるという期待と、植民地にされるという恐怖が同時に煽られて、周辺諸国はお互いを疑いながら軍を動かすだろうな。そこから、誰の意思とも断言できずに、連鎖するように広がっていく。一方暗殺ギルドでは、国境の将軍や外交官を静かに消していく。決断力のある者ばかりを狙ってな。そして残されたのは優柔不断な貴族、保身しか考えない官僚、責任を取らない将軍。国を支えるはずの柱は折れ、残ったのは腐った梁だけになる。結果、各国の軍は統制を失い、前線は膠着し、戦争は長引き、疲弊だけが積み重なった。その決定的瞬間をセラフィナは見逃さず、停戦を誓った書簡を敵国に送りつける。疲労し切った周辺諸国にとって救済をもたらすだろうな。そうりゃ、敵国の君主も此奴の即位を支持するかもな。内戦と国際戦争の両方を終わらせる存在として。」
「おまけに、負傷兵の治療や難民を受け入れを命じてが名声さらにアップ!」
「つまり・・・周辺諸国も巻き込んだ争いを起こし、他の派閥の王位継承者を失脚させ、善人の仮面をかぶった状態で王になるってこと?」
「ルーベルト、正解。百点満点だ」
ルーベルトがめっちゃ引いてる。こいつ今から戦争起こそうと言ってるからな。
「あ、あとさ俺らが毎日毎日密会みたいなことしてるとさ、他の貴族連中に目を付けられそうだからさ、なんか対策を取りたいんだけども・・・」
「あ~それか。どうしようか。一旦食べながら考えようか。」
食事を挟みつつ頭をひねった策を考えようとしたけど全然出てこない。
とゆうか、昼食がうますぎてそんな考えている暇ないよ。
だって、肉柔らかいし、タレもうまいし、パンもうめえし。
最高だったよ。
ご馳走様。
しばらく考えていたらルーベルトが案を出した
「ねぇ。念話で話すのはどうかな?」
「念話?それなにかな?」
「おやおや。邪神セラフィナ様でも念話というものは知らなかったようですな~。もう少し魔法のお勉強をした方がいいのではないでしょうか???ちなみに俺は知ってました~www」
「ルーベルト。こいつしばいてもいい?」
「お好きにどうぞ。」
「おい!待てルーベルト!俺を売りやがったな⁈ちくしょーーーーー!!!」
俺は今セラフィナにしばかれながら、ルーベルトの念話の説明を聞いてる。
「それで?念話とは?」
「言葉や身振り手振りを使わずに、通信できる魔法だね。やり方さえ覚えればだれでも扱える魔法だよ。それに、周波数を変えれば秘匿通信とかもできちゃう。」
「それいいじゃん。・・・さてと、リュートへの制裁はこれくらいにして・・・この三人で連盟組みたいんだけどもいいかな?」
「いいぜ。面白そうだし。」
「僕もいいよ。」
「即答かよ。まあ、いいか。それじゃあ設立とゆうわけで、乾杯!」
「「素直に乾杯って言えるものじゃないだろ・・・」」
そのあとは、ルーベルトが念話を開設して、セラフィナの部屋から退室したのだ。




