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第1話 異世界の土と小さな窯

工房の空気は、今日も釉薬の匂いで満ちていた。

織田藍は静かに茶色の土をこね、低めの声で独り言をつぶやく。


「もう少し、均一に……うん、いい。」


窯に並べた小さな碗に最後の釉薬を掛け、扉を閉める。手が覚えている動作だ。炎の温度を確認し、火加減を微調整する。ここでミスをすれば、全てが灰になる——その緊張感すら、藍は好きだった。


だが、次の瞬間、突如轟音が響いた。

「——あっ!」


振り向く間もなく、窯から火花が飛び散り、床の土が舞った。熱と光に包まれ、藍は視界を失った。


気が付くと、そこは土と石と木の香りに満ちた小さな村だった。手に触れる土は冷たく、どこか温かみもある——まるで生きているかのように。目の前には小さな修理屋台があり、老人や子どもたちがこちらを見ていた。


「……ここは……?」


村の少年、エルハンが一歩前に出る。

「……あなた、藍さんですか?」


藍は自分の名前を聞かれて、首をかしげる。記憶ははっきりしている。現代の工房、釉薬、窯、そして事故……そして今、自分はここにいる。


「……ええ、私、織田藍と申します。あなたの村で、何か手伝えることは……?」


小さな依頼はすぐにやってきた。壊れた碗、ひびの入った壺。手を伸ばすと、土が手のひらに馴染む感触が懐かしくも新しい。

藍の心に、ふつふつと熱が灯った。


「よし……やってみよう。」


焼き物は、ただの器ではない。人の暮らしを支え、文化を繋ぎ、時には秘密を抱く。藍はまだ知らない——この小さな窯が、国を変える日が来ることを。

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