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LEVEL 夢見改層

作者: わとし

不安定で安定した領域


入場方法:とある夢の美術館

退出方法:不明

気がつくと、私は美術館のエントランスに立っていた。


有名な場所なのかはわからない。


ただ、多くの人々が行き交い、静かに絵画を見つめている姿があった。


私も彼らのように展示された絵画をいくつか眺めてみたが、すぐに飽きてしまう。


なんとなく、装飾された壁に沿って通路を歩いていた。


ふと気づくと、周囲に人の姿がなくなっている。


静寂が満ちている。


近くにぽつんとエレベーターがあった。


無機質な銀色の箱。


私は躊躇なく、その中に入った。


中には1から10階までの数字が並ぶボタンがあり、


私は気まぐれで「7」のボタンを押した。


「チーン」


エレベーターが止まり、扉が開く。


そこには、灯りの一つもない暗闇が広がっていた。


何も見えず、ゴォーという環境音が響いている。


恐怖を感じた私は、ボタンを押してすぐに扉を閉めた。


その瞬間、ボタンの表示がバグを起こしたゲーム画面のようにノイズを帯び始める。


その時、1〜10階までだったボタンが11〜20階までのボタンに書き換えられた。


すでにボタンが押されているらしく、「13」のボタンが光っていた。


「チーン」


エレベーターが止まり、扉が開く。


そこはサッカー場だった。


眩しいほどの光と、音割れしそうなくらい大きな歓声が飛び込んでくる。


しかし、選手はおろか観客も誰一人いない。


「ここには降りてはいけない」


私の直感がそう叫んだ。


扉をすぐに閉める。


今度はボタンが21〜30階までに変わっていた。


そして、すでに「30階」が押されていた。


「チーン」


エレベーターが止まり、扉が開く。


そこには果てしなく続く通路があった。


突き当たりが見えないほど遠く、天井も高くて横幅も結構ある。


そして左右の壁には、壁に向かって等間隔にトイレが並んでいた。


扉を閉めようと手を伸ばしたが、ボタンはなくなっている。


選択肢がなくなった。


私は一歩、通路へと足を踏み出す。


やっぱり不安になって振り返ったが、


エレベーターはもうなかった。


私の足音だけが空間に響く。


どれほどの時間歩き続けた頃だろうか、


突然、前方に人影が現れた。


トイレに座っている。


壁に顔を向けていて、こちらからは見えない。


私は


「誰かがいる」


ということに安堵して近づいた。


……その瞬間、胸がざわつく。


これは、近づいてはいけない。


だがもう遅い。


急に足が固まって動けなくなる。


体も顔も固定されてしまった。


そして、彼が首だけをこちらに回す。


そこには、口も、目も、耳もない、のっぺらぼうの顔があった。


こちらを、無表情のままじっと見つめている。


私は力を振り絞り、走ろうとした。


しかし、どれだけ体を動かしても全く前に進まない。


足音すら飲み込まれるように、背後から世界が黒く塗りつぶされていく。


やがて、すべてが闇に包まれた。


私は、殺されたのだろうか――

目を覚ますと、自室の布団の上だった。


「よかった、夢だったんだ」


胸を撫で下ろす。


その瞬間、視界の端、壁の模様と目が合った気がした。

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