闇の中の小説投稿サイト
運が良かっただけだと思うのだけど、僕の書いた小説が、小説投稿サイトで高いランキングを獲得した。それで、まあ、書籍化されて、コミカライズもされた。
……ただ、正直に告白するのであれば、僕本人には、まるで自信がなかった。
だって、流行ってそうな小説を幾つかコピペしてAIに読み込ませて、「いい感じに混ぜ合わせて」と指示を出して出力されたやつに、てきとーに手を加えただけなんだ。お陰で楽に書けた(?)けど、物語に整合性もないし、オリジナリティもない。文章だって下手だ。“売れる”って思う方がどうかしているだろう? 一体、どうして小説投稿サイトで受けたのかまるで分からなかった。
案の定、と言うか何と言うか、書籍化された僕の作品はまるで売れなかった。コミカライズの方は漫画家さんのお陰で少しは売れているみたいだけど、世間での評価は微妙。これじゃ漫画家さんに悪いと思って、「自由に改変しちゃって良いですよ」と伝えたから、これからは少しはマシになるかもしれない。
ところで僕の友達も小説を書いている。彼の小説は僕と違ってオリジナリティもあって文章力も高い。ただ、やや地味な所為か、あまり話題になっていない。それでも僕の小説に比べれば随分と売れていて、一部での評価も高い。難を言えば、コミカライズには不向きといった点だろうか? その壁さえ超えられれば、きっと何かの切っ掛けでもっと売れると思う。僕は陰ながら彼を応援していた。
が、そこで驚くべき話が飛び込んで来たのだった。
「アニメ化ですか? 僕の作品が?」
出版社の担当さんから、そんな話を聞かされたのだ。
僕は困惑してしまった。
だって、僕の作品よりも僕の友達の作品の方が明らかに質が高い。アニメ化して成功する確率が高いのは彼の作品の方だろう。
僕の様子を見て取ったからか、担当さんはこう続けて来た。
「と言っても、本決まりじゃないのだけどね。この話が進むも進まないも、君の態度次第だよ。
ほら、アニメ化されたら、君の作品…… 特にコミカライズの方は売上げが増えると思うんだ。もちろん、著作権料も貰えるし、グッズも売れるかもしれない。つまり、君の収入は増えることになる」
担当さんが何を言わんとしているのか、そこまで言われれば流石に分かった。つまり、賄賂を要求しているのだ。僕の収入が増えた分から何割かを渡せって事だろう。
「僕の作品なんかよりも、他にもっと売れそうな作品があると思いますが……」
思わず僕は友達の作品名を言っていた。僕に声をかけるよりもそっちの方が儲かりそうだ。すると、担当さんは俄かに顔色を変えたのだった。
「いや、まぁ、彼の作品は確かに魅力的だけど、アニメ化には向かないと思って……」
動揺している。
その様子で僕は察した。
……なるほど。むしろ人気が出そうだからこそ、アニメ化には不都合なのか。
アニメ化で人気が出てしまったら、もうその作家は賄賂に頼らなくても良くなるだろう。すると彼らは賄賂を受け取れなくなってしまうのだ。だから、敢えて、それほど質の高くない、賄賂に依存しなくちゃならない作家の作品をアニメ化しようとしているのじゃないだろうか?
……いやはや、小説投稿サイトは闇深い。
どうしてあの作品が?
みたいな作品がアニメ化されるのには、もしかしたら、こんな裏事情があるのかもしれない。
(……なんて事は、流石にないと思いますが、思わず首を傾げたくなるような作品がアニメ化されるケースは確かにありますよね)