Ⅷ話 討伐祭前
三週間、俺たちのいる喫茶店は監視をされているような感覚があった。しかし、監視があった以外に特に影響はなく襲撃などを受けることは無かった。そして、万事屋としての仕事も何件か請け負い、こなした。そしてついに、ラズベンで行われる討伐祭に向かうことになった。
シューメルさんは、臨時休業の貼り紙を張り、戸締りをした。
「さて、行こうか ラズベンまでは長旅になるからな」
「ラズベンまでは、どうやって行くんですか?」
「街の入り口らへんに長距離用の馬車が出てるんだ それに乗るんだ」
「へぇ~ それなら、もっといい方法ありますよ」
「え? もっといい方法?」
「付いてきてください」
そう言い、荷物を持って俺はあるところに案内した。その場所とは、普段射撃場としているセルムフォレストだった。そこには、布で覆われた大きなものが置いてあった。
「これが、いい方法なのか?」
「ええ、見たら驚きますよ~」
俺は、大きなものを覆っていた布を取り外した。その中からは大きな一台の車が現れた。三人は目を見開いて驚いていた。
「な、なんだこれは‼」
「車輪の付いた、獣?」
「ピックアップトラックか‼」
「ツカサさん、正解! そう、ピックアップトラックで~す! これなら、長旅でも快適に行けますよ!」
「ほんとか! しっかし、よくこんな大きいものを造れたよな どうやったんだ?」
「俺の生成魔法を使用しただけですよ」
(造るのに三日かかったけど…)
荷物を、荷台に載せ全員シートに座った。三人は、車内をずっと見渡していた。無理もない、なぜなら初めて見る物には関心が湧くからだ。俺は、エンジンをかけ出発した。木々をかき分け馬車道に入りそのまま走り続けた。
「すごいな~ 馬車より、振動が少ないし何より座りやすい いいな」
「落ち着く」
「そういえばシューメルさん」
「なんだ?」
「馬車なら何日ぐらいかかるんですか?」
「そうだなぁ…二日半から三日ってとこかな?」
「へぇ~ 多分一日で着きますよ」
「たった一日だと⁈ 本当か‼」
「え、ええ 多分そうですけど…」
「まるで、ラズベンじゃないか」
「そうなんですか」
「あの国も不思議な乗り物があってな、蒸気で走る列車?というものがあるそうなんだ」
「蒸気機関車ですか… この世界に、もうそんなものが」
「知っているのか?」
「あ、はい」
「最近の若い人は物知りなんだな」
「そ、そうですねー」
(こっちの世界じゃもう、時代は電車なんだよ!)
車を走らせて約一日、ラズベンの入り口前までやってきた。人気のないところで車を停め、セレナさんのファーストギフト、透明化魔法でピックアップトラックを隠した。そして、入り口の検問を通りついにラズベンにへとやってきた。
「すげぇー‼ めっちゃ近代的だー‼」
「俺らのいた世界とほぼ変わらないぞ すごい」
「久々に来たが目新しいものばかりだよ この街は」
そんなことを言っていると、目の前から、馬車が二台走ってきた。その馬車が停車すると先頭を走っていた馬車からアーマーを着た男が一人歩いてきた。そしてその男はシューメルさんに向かって敬礼をした。
「お久しぶりです 隊長」
「久しぶりだな それと俺はもう隊長じゃないよ」
「いえ、隊長は隊長です それよりお変わりないようで」
「そっちはそっちで立派になったみたいじゃないか」
「隊長が熱心に教育していただいたたわものです」
「そうか 良かったよ」
「それで聞いていた話では、ご到着はもう二日ほど後だと聞いていましたが…」
「あぁ、そこにいるリョウガくんのおかげで一日で来れたよ」
「たった一日で⁈」
「変わった乗り物を使って来れたんだ 彼には感謝しているよ」
「なるほど とりあえず、城に向かいますか?」
「そうしようか」
俺たちは、用意された馬車に乗り城にへと向かっていった。城に向かっている最中、街には飾り付けや木の骨組みなどがあり、着々と準備が進んでいる様子だった。さっきシューメルさんと話していた人はフォルド・バーンという人で分隊長を行っている人だそう。昔は、シューメルさんに訓練を教わっていたらしい。そんな話をしていると城壁を越え、城の中に入った。そして、四人は国王陛下、女王陛下の待つ玉座の間に向かった。城の中には、多くの警備兵やメイドがいた。そして、玉座の間の入り口にへと到着した。
「一応言っておくが、王の機嫌を損ねるようなことは言うなよ」
「分かってます」
フォルドさんが扉を開け、中に入り片膝をついてしてを向き挨拶をした。
「討伐祭に来てくれてありがとうシューメル隊長」
「お言葉、ありがたい限りです」
「うむ 他の者も執事を通して聞いておる ヘルムでは喫茶店をやっているそうではないか」
「はい、街の者にも親しまれており観光客にも喜んでもらえるよう努力しております」
「フォッフォッフォ、そうかそうか それはよいことじゃ」
「粗品ではありますが店のものを持ってまいりました」
「おぉ~ それはうれしい 後でいただくとしよう」
シューメルさんは、執事に持ってきた粗品を渡した。そして、数分話したのち間を後にした。
「シューメル隊長には、あとで兵の訓練を行ってほしいのですがいいですか?」
「ああ、わかった 君たちはどうする? 街でも観光するか?」
「そうしようかな」
「そこの三人には頼みたいことがあるんだ」
「頼みたいことですか?」
「実はさっき、女王陛下からお願いをされてな 書物庫の掃除と子どもの世話をしてほしいそうだ」