Ⅶ話 今でも……
襲い掛かってくる魔物に、ツカサさんは一気に距離を詰めていった。鞘から刀を抜くと同時に上に魔物を切り上げた。その切り上げた刀を下に下げ後ろにいた魔物も倒してしまった。そして次々と対処していくツカサさんとは打って変わって俺は何もできないでいた。その時、俺は魔物がいるとこよりさらに奥の方で大きな影がこっちに来るのを発見した。
「まずいまずいまずいまずい‼ ツカサさん‼ 奥から巨大なのが来てる‼」
「なに!」
ツカサさんは、最後の一匹を倒した後、目を凝らし奥を見た。そして、その魔物は一瞬にして消えた。
「ど、どこに!」
「いや、上だ‼」
上を見上げると、頭上に大きな影がありそれはツカサさんめがけて落ちてきた。すぐに後退し、俺も構えた。目の前には、今まで出会った来たよりも巨大なサソリ型の魔物が現れた。俺は頭を撃ってみたものの弾き返され全く効いていなかった。
「まじでぇ⁈」
「直接やった方がいいな」
そう言うとツカサさんは、木々を踏み台にして上へと駆け上がり空中にへと飛んだ。そこで、何かを操作し持っていた刀の刀身が緑にへと変化した。刀を横に振ったとたん斬撃が魔物に向かって進み、胴体にへと当たった。当たったところは大きく傷が入っており、俺もそこに向かってアサルトライフルで狙撃した。そうすると、魔物が暴れ出し苦しんでいた。
「行ける! 効いてるかも‼」
ツカサさんは、またもや何かを操作し次に赤い刀身にへと変化しそのまま重量を使い一気に胴体に切りかかった。ツカサさんが胴体に突撃し見えなくなってすぐに魔物は全身が燃え出しその中からツカサさんが平然と歩いて出てきた。
「こんなもんかな」
「ええええええ‼ どうゆうことぉー!」
「外が無理なら中から調理すればいい ただそれだけだ」
「さ、さすがです・・・・・・」
俺たちは、すぐに店にへと戻り今日あったことを話した。シューメルさん曰く、あの森の魔物が活発化しているのは珍しいことだという。普段は一日に数匹出会う程度だが今日は十数匹一気に出会っていた。特に大型の魔物に。
「何だか、今後嫌な予感がするな あの森だけだといいんだが」
「そういえば、ツカサさん さっき、人の気配もあるって言ってませんでした?」
「なんか、見られている感覚は……‼」
ツカサさんは、急に入口の方にへと走り出し、扉から飛び出した。そして、辺りを見渡していた。そのとき、ツカサさんは柄の部分を握っていた。俺たちもすぐに追いかけて周りを見渡したが誰もいなかった。
「どうしたんだ? 急に飛び出したりして……まさか!」
「監視されてた……気づいたとたん逃げられたが…」
「監視か…誰かに狙われているのかもしれんな…」
「ますます、嫌な予感が的中しそうだな…」
その日の夜、俺は最近読み始めた魔法学についての本をベッドで読んでいた。そして今読んでいるのは、魔力の循環についてだ。この本によると、魔力は心臓とリンクしており血液のように循環している。集中することによって、魔力の流れは速くなり一点に集中させるときに素早くかつ使用魔法の威力増強にも関わってくる。そして、魔力の持ち主が死亡した場合は、空気中に魔素として還元される。その還元は、三日ほどで行われ三日経つと完全に魔力は無くなる。ちなみに、魔力は心臓に多く蓄積されているらしい。
次のページへ行くと、魔力の使い方について書いていた。魔力は、どこか一点に集中させると魔法が使えるようになるが、負傷部分に意識させると軽くではあるが治癒することができる、しかし、これはあくまで応急処置に過ぎない行為なので回復魔法や道具を使った方が賢明だろう。と書かれていた。
内容は、理解できたがそれをどう使うかについては難しいところではある。
「結構、研究とか進んでるんだな~ まぁそうか 何世紀も先に行ってる街があるんだもんな~」
『な~に読んでるの?』
「大和さん… 魔法学についての本ですよ いろいろ書いてあって面白いですよ」
『へぇ~ いいわね 知識は持ってるほど良いからね』
「ですよね~ まぁ読み終えるまで結構ありますけど…」
『そうね』
そう言った後、大和さんは少し黙り込んでしまった。そして、数分した時にまた話しかけてきた。
『ごめんなさい 私のせいでこんなことになっちゃって…』
「え? 急にどうしたんですか」
『もっと、君がいた地球でいろいろやりたいことがあったと思うけど、それを私が止めちゃって… それに、知らなさすぎるせいでこんな事態になってるし…』
「気にしなくてもいいですよ 今も今で、十分楽しいし別の地球で強かったっていうツカサさんにも会えて、それに特訓までしてもらって… こっちに来たことに嫌なことなんて一度もないですよ 大和さん」
『そう言ってくれる人初めてかも』
「大和さんが喜んでもらえるなら十分ですよ それに、大和さんが俺を担当してくれて今に至るわけだから、きっと何かの縁ですよ」
『そうね……ありがとう、凌牙くん……』