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Ⅲ話 来てみたけど…

 気が付くと、俺は森の中にいた。周りを見渡しても木が生い茂り、奥の方も同じような景色が並んでいる。


「あ、あれ? 街に行くんじゃなかったのか? なんで森の中にいるんだ?」

『あ……もしもーし、聞こえる~?』


 周りには誰もいないはずなのに、なぜか声が聞こえた。しかも、脳内に直接話しかけているような感じであった。


『聞こえてたら返事して~』

「き、聞こえてます。この声…もしかして神ですか?」

『良かった聞こえたんだ~ そうだよ私だよ~ それと神って呼ばれるのはあんまり好きじゃないの 私は大和・フィーネ 大和でもフィーネでもいいわよ。』

「俺は、釘谷凌牙くぎやりょうが。 もしかしてだけど、大和・フィーネって自分で付けた?」

『そう! よくわかったね! 実は神にはほとんど名前が無いから。でも、どうしてわかったの?』

「違和感しかない名前だったから。」

『やっぱ、そうよね~』

「――どうして脳内に話しかけてくるんですか? 異世界ものじゃ大体ほったらかしじゃないですか?」

『まぁ普通はそうかもだけど、折角だし?サポートしてあげるよ。』

「それは嬉しいな。それじゃあ、大和さん。街ってどっち?」

『えーっと……どっちだったけな? あれれ? ワカンナイ』

「噓だろ~! サポートするんじゃないんですかぁ⁈」

『でも大丈夫、さっき落とした時に地図をいれたんだけど無い?』

「え! いつの間にそんなもの……ちょっと待ってください……。」

『たしか、右ポケットに入れたはずだけどなー。』


 言われた通り、右のポケットに手を入れると中から四つ折りになっている紙が入っていた。その紙を開くと、ホワイトボードに貼っていた地図と瓜二つの大陸が描かれている。そして、その地図には赤い点が一つ、点滅していた。大和さん曰くこれが現在地らしい。


「……はぁ⁈ ヘルムから結構離れてる森じゃねぇか⁈ セルムフォレスト……隣接してるとはいえ遠いじゃねぇか……どうなってんですか‼ 大和さん‼」

『あははは……転生させたときにちょーっとずれが発生したみたい……。てへぺろ』

「最悪だ……まぁ地図はあるし。行けるには行けるか。」


 地図に表示された現在地からヘルムに向かって歩き始めた。道中、俺は習得した魔法を試しに使っていた。特に、生成魔法は使い勝手が良かった。ファーストギフトなだけのことはある。試しに、日本刀を生成してみた。使用してみると、剛性は高く、切れ味も抜群。その後、試しに一丁拳銃を生成した。威力も問題なし弾丸も生成でいるから実質弾切れはなし。最高やんか~。


 三日後··……


『大丈夫?』

「もぉ無理……。」


 俺は、三日間所々でキャンプをしつつ街にへと向かっていた。しかし、距離も距離なので身体的、肉体的に限界が近かった。しかも、生成魔法で食材系を何一つ作り出すことができないという最悪な仕打ち。声も擦れ、歩くこともままらなかった。少しずつ歩んでいると遠くから人の声らしきものが聞こえ足早にその声のところへと走り出した。しかし街に入る前に、街を目の前にして倒れてしまった。


 気が付くと俺は見知らぬ天井とベッドに横たわっていた。起き上がろうとしたものの体が言うことを聞かず動かなかった。

しばらくして、部屋に一人誰かが入ってきた。俺は、扉の方向を向くと白いシャツにエプロンを身に着けた女性が入ってきた。


「起きたの。マスターに言ってくる。」

「あ、ちょっと!」


 その女性は、すぐにどこかに行ってしまいまた一人になった。ベッドの近くにはテーブルが置いてありそこにはコップ一杯の水が入っていた。かろうじて体を動かし、その水を口にした。再び、ベッドで横になっていると、扉からさっきの女性と身長が高いエプロンをした男性がやってきた。


「どうやら、意識が戻ったみたいだね。」

「あ、あの、あなたは? それにここは?」

「ここはわしの店の二階だ。それにわしは、シューメル・クラインだ。彼女は……」

「セレナ・フィール」

「あ、お、俺は……凌牙……リョウガクギヤです……。」

(異世界の名前ってこんな感じでいいんだっけ?)

「リョウガくんか、よろしく。」

「よろしくお願いします。」


 シューメルさんは、少しばかり微笑み「かしこまらなくていいよ」と言ってくれた。近くにあった椅子へと座り俺がここにいることについて話してくれた。


「そ、それで俺はどうしてここにいるんですか?」

「三日ぐらい前に街の近くの森で倒れてたのを買い出し中のセレナが見つけてな。ここまで運んできたんだ。」

「そうだったんですか……。ありがとうございます……。」

「ところで、なんでまた森なんかに居たんだ? あそこは魔物が多い上に凶暴だから、誰も近寄ろうとはしないんだがな。」

「実は、気が付いたらあの森にいて地図を頼りにしてここまで来たんです。でも、もうすぐのところで倒れて……。」

「なるほどな……。大体事情は理解した。動けるようになるまでここにいるといい。行く当てがないならうちに住んでも構わんよ。」

「あ、ありがとうございます!」

「それじゃわしは、下に戻るよ。まだ片付けが残っているしな」


 シューメルさんは、部屋を出て一階の方へと行ってしまった。セレナさんも、すぐに一階に降りてしまった。


「はぁ……まさかこんなことになるとは……。しかも、三日も寝てたのかよ……。そういえば大和さんは?」

『呼んだ?』

「大和さん! なんで起こしてくれなかったんですか⁈」

『仕方ないじゃん! 倒れて瞬間、通信が切れたんだから……。』

「ええ…… それで、今まで何してたんですか?」

『も、も、勿論心配したし、何回か回復しないか試したわよ。画面ぶっ叩いて。』

「そうですか」(ぜってぇ嘘だ というか乱暴すぎないか?)


 数時間後、少しはまともに動けるようになった体を動かしつつ一階に降りて行った。そこには、カウンター席でコーヒーを飲んでいたシューメルさんの姿があった。


「もう動けるようになったのか?」

「かろうじて…… 歩けるのがやっとぐらいです……。」

「あまり無理はしない方がいい。ところで何か用かな?」

「聞きたいことがあって。」

「ほう?」

「魔王についてなんですけど。今ってどのぐらい侵攻とか進んでるんですか?」

「はい? なにを言っているだ君は。」

「え?」

「魔王は15年前に打倒されたよ。勇者一行によって。」

「え…えぇぇえーー⁈」『えぇぇえーー⁈』

「もしかして知らなかったのか? 大々的にニュースになっていたから、知らない人はいないはずなんだがな。」


 俺は、壁の角に行き大和さんに話しかけた。


「ちょちょちょ‼どうゆうことですか⁈魔王いないって言われたんですけど⁈」

『私も知らなかったわよ‼今聞いたもん‼しかも、15年前って最近じゃないの⁈』

「神の情報源どうなってるですか⁈古すぎでしょ‼」

『反論できねぇー!』

「見てたんじゃなかったんですか? 地球の様子。」

『実は管理の担当自体は私じゃなくて、ほかのところなんだけど……なんせ最後に聞いたのが20年とか前とかだから…… は……はははー。』

「役立たずー‼」

「ど、どうしたのかね? 急に独り言ぶつぶつと。」

「す、すいません。知らなかったもんで頭が混乱して……。」


 シューメルさんの方へと振り向き、少し下を向いた。申し訳なさと、恥ずかしさがあってか顔を上げられない。


「いまどき、知らないなんて言う人がいたとは。可能性があるとしたら召喚者、もしくは転生者か。しかし、魔王がいないのに召喚なんてことしてもな……というと転生者か。」

「え? 召喚者なんているんですか?」


 俺にとっては意外なことでしかない。召喚者自体、ラノベや漫画でいることは分かるのだが、転生者と召喚者が同時にいるという作品はそこまで見たことがない。逆にあるんだと思うほどだ。


「別の世界から魔王討伐を成し遂げられそうな人間を召喚し、こちら側に来た人を召喚者と呼んでおる。」

「へぇ~」(まじで、漫画みたいなことやってんだ。)

「召喚者は、こちらの世界の人間よりはるかに高い能力を持ち合わせている。勇者一行にも召喚者は何人かいたはずだ。それほどまでに強力なものだからな。」

「そんなに頼もしいんだ。」

「あぁ、でもまあろくなやつはいないがな。」

「そ、そうなんですね……。」

「長話しすぎたな。もう休んだ方がいい、怪我人は無理すれば治りが遅くなる。」

「すみませんこちらこそ。それじゃ失礼します。」


 そう言い、俺は元居た部屋にへと帰っていった。


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