ⅩⅤ話 新たな旅
翌日、店があったところには新しくレトロ風の店が立っていた。
「なんじゃこりゃああああああああ!」
「み、店が…建ってる! わしの店が!」
「おい噓だろ……一晩で建てたのかよ…」
「前より、いい」
店内に入ると、天井も高く床や天井にはこげ茶色の板材、木の幹をほとんどそのまま使ったような柱、俺がいた世界でもありそうなほどの内装になっていた。そして、カウンター席にはクレイドがいびきをかきながら寝ていた。
「ん? あぁ、お前らか… できたぜ、喫茶万事屋 久々に楽しかったよ ん゙ーーーはぁ…」
「まさか一晩でこれを⁉」
「そうだが? 本気でやったら基本は半日でできる もちろんツカサちゃんのためだけど」
「いや、なんて言ったらいいか… そうだ、代金の方だが…」
そうシューメルさんが言いかけた時、クレイドは右手を少し前に出してそれを断った。
「悪いが金なら要らん 貯金はいくらでもあるんだ それに、ほとんど使ってないし もったいないだけだ ツカサちゃんに会えるならそれが代金だ」
(ツカサちゃんの前でそんなことをするわけにはいかない! ファンクラブの恥だ‼)
その後、シューメルさんが朝食を作ってくれた。クレイドも物凄い笑顔で朝食を食べていた。そして昨日の続き誰が破壊したのかなどについて話し合った。
「やはり、ポストに何か入れた人物と数分前に見た物陰が怪しいな」
「はい、これ」
「これは?」
「ポスト、入ってた」
そう言って、セレナさんがテーブルに置いたのは小さい黒い巾着袋だった。俺は、その巾着袋を手に取り中身を確認した。中からは、一つビー玉のようなものが入っていた。
「なんだこれ? ビー玉?」
「何故ビー玉がこの中に? しかも、変わった模様が入ってるな」
俺たちがビー玉に集中がいっている時、クレイドだけは巾着袋の方を気にしていた。
「これは…防御繊維じゃねぇか‼ しかもクラスレベル5の一級品‼」
「なっ‼ 防御繊維だと⁉」
「シューメルさん、知ってるんですか? その防御…繊維?とか言うの」
「ハベーヌ産…というかハベーヌ以外では絶対に作成、加工ができない超強力な繊維 クラスレベル5となるとどんな攻撃をくらっても傷一つ付かない代物だ… その分加工がとてつもなく難しいそうだ」
「ええ‼ そんなの強すぎじゃないですかそんなの‼」
「ハベーヌはこの大陸中、一番戦闘能力の高い兵を持つ国家…これも兵のために作られたものなんだ」
「とは言っても、使われているのはクラスレベル3の防御繊維、位が高いとせいぜい4ぐらい 5なんて加工がむず過ぎて何にも使えてないんじゃねぇのか」
「うーん、さらによく解らなくなったな…」
シューメルさんが考え込むと、クレイドはテーブルに置いてあるコーヒー少し眺めたのち飲み、「ふぅ」と息をついた。
「まぁ、こればっかりは考えたってしょうがねぇ それと俺はハベーヌに帰る 遅く出ると、付くころには夜だからな 向こうに付いたらあいつに聞いといてやるよ」
「それなら俺が送っていきますよ 車の方が早いですし」
「くるま? なんだそれ? 食べもんか何かか?」
「乗り物ですよ 馬車より速いですよ」
「そうか… なら乗せてもらうか…」
俺がピックアップトラックのあるところまで案内するために、出ようとするとシューメルさんが呼び止めた。
「リョウガくん、ツカサくんと一緒にハベーヌに行ってきてくれないか?」
「え! ツカサさんとですか? でもどうして?」
「何となくだが、これから途轍もなく良くないことが起こりそうな気がするんだ そう思っているときに君たちを見ると、何故か良い方向に未来を変えてくれるんじゃないかと思えるんだ 単なる勘だがね」
「シューメルさん…」
「もし、君たちが良くないことからこの大陸を救うためにやって来たなら、そのために行動してくれ わしからのささやかな願いだ」
「分かり…」
「それ返しに…うっ!」
俺は慌ててツカサさんの口元を抑えた。そして、ツカサさんに対してものすごい勢いで首を横に振った。ツカサさんは小声で「すまん」と一言いった。
「わ、分かりました ハベーヌに行って何かわかりそうなこと調べてきます」
「ありがとう」
(まぁ元々魔王を倒しに来たんだけど…いっか!)
俺とツカサさんは身支度をしたのち、ハベーヌに向けて車を走らせた。クレイドさん曰くハベーヌはヘルムから北西にあるとのこと。面積自体も大きく、2番目の大きさらしい。半分を過ぎたところで一度休み再び夜中に出発した。ちなみにクレイドさんはというと・・・
「ねぇ? ツカサちゃんはどうしてあの店に?」
「凌牙に拾われて、行くところが無かったからあそこで」
「へぇ~ いくつだったりするの?」
「20」
「え! わっか‼ 噂で聞いたけど戦闘能力が途轍もなく高いとか聞いたけど、20で…すげぇ」
(え‼ ツカサさんって二十歳だったの‼ 意外と年近かった 二個上じゃん… それにしても、世界を救ったって大和さんが言ってたけど…世界って若くても救えるんだ……)
ハベーヌに向かっている途中、車の左側に白く高い塔が見えた。そしてその周りは他の国と同じように壁が立っていた。
「クレイドさん、左のは?」
「あぁ? あぁ~ 中央都市ヴァルザスだ この大陸の中で一番栄えてる国だ 技術の進歩で言えばラズベンが一番、兵の進歩で言えばハベーヌだがな えへへツカサちゃん~」
「は…はぁ… あの塔は?」
「あれか? 四近神がいる塔だな 居るといっても、頂上だが…」
「よんきんしん?」
「四人の神に近しい存在のことだ 四近神は、この大陸全土の統制を取っている それとファーストギフトが三つ以上、アフターギフトにオリジナルのものがあること戦闘能力が高い、もしくは賢明な奴しかなれない まぁ基本なれないな」
「基本的関わらなそうな方達だな~」
(大和さんに言ったらなんて返ってくることやら…)
『四近神なんて所詮雑魚だぁぁぁ!!!! ひれ伏せぇぇぇ!!!!』
「うっせぇぇぇ!! キャラ崩壊してるじゃねぇぇかああ!!」
「どうした? 急に叫び出して」
「あ、何でもないです…」
「???」
『もっと出番寄こせーーー!!!!』
俺は、ハベーヌに着くまで大和さんの大声愚痴を永遠と聞かされ続けた。




