XⅢ話 休む暇もなく
二人は、剣と刀を抜刀し鍔迫り合いをしていた。黒のコートを着た男はありったけの力で襲い掛かっていたのに対して涼奈は、するりと受け流していた。
「どうした! 攻撃してこないのか‼」
「残念 わたくしはしないわよ いいお相手ですけど 美しさに欠けますね」
「なんだと‼」
「さようなら 少しは楽しめましよ 名も知らぬ剣士よ」
そう言うと、涼奈は男の体に軽く触れた。その後、少し距離を取り納刀した。
「何故剣を戻す! 戦え!」
「残念だけど、あなたはもうすぐでこの世から消える お仲間にも見届けられずに残念ね それじゃあ、さようなら」
涼奈が振り向き、歩き始めた瞬間、男の体は膨らみ始めた。
「な、なんだこれは、元に戻せ!」
「ご愁傷様」
涼奈が指を鳴らすとその男は破裂し、木端微塵になった。そして涼奈は彼らのところへと戻っていった。
「あ、あのもしかして逃げられました?」
「ええ、追うのが遅かったようで 残念です」
「いや、良いですよ ロメオさんを助けれただけでも」
「すまない 君たちを巻き込んでしまい」
「大丈夫ですよ それより、城に行かないと」
ロメオさんは後ろの馬車にへと乗り、城にへと向かっていった。その後、夜になるまで祭りは続き、最後には花火まで上がった。
「へぇ~ この世界にも花火ってあるんだ~」
『原理は違くとも、似たようなものはたくさんあるわよ』
「大和さん 見てたんですか」
『見ないわけには、いかないわよ せっかくの、お祭りなんだから』
「そうですね」
そのころ、近くの酒場では・・・
「よくもまあこんなのワイに探せなんて言いましたね~」
「お前にとっちゃ簡単に仕事だろ? 書物庫から探すだけなんだから」
「書物庫ゆうても、何万冊ある中から探せなんて大変でしかないですよ~ でもまぁ、注目を外に集めてくれてたおかげで警備はガラガラでじっくり探せましたよ~」
「それで、これは本物なのか?」
「ええ、ちゃんと中まで確認しましたよ~ 禁書にある死者の復活魔法、神に対する冒涜的な魔法だからね~ 封印もされるわけだわ」
「それじゃ渡してもらおうか」
「ちょちょちょ、報酬の確認、させてもらうで」
「いいだろう」
そう言うと、男は下に置いていた袋の中から一つの木箱を取り出した。その木箱にかけられている錠を開け蓋を開けると中から20センチほどの棒状のクリスタルが入っていた。そのクリスタルは黄緑で透けているような見た目だった。
「ほぉ~ こりゃあ確かに本物やな ええよ、取引成立やな」
「了解した しかし、ただのクリスタルじゃないのか?」
「あんた、このクリスタルのことなんも知らんのか?」
「いや、俺の知っている話ではそのクリスタルに直接触れたものは数日のうちに死に至るとは」
「まぁ、そんなところや でも、逆を言えばこれはいい兵器になる」
「何が言いたい」
「そのまんまや それじゃワイはこの辺で失礼するわ またなんかあったらいつでも待っとるから~ じゃぁーな」
そう言うと、椅子に掛けていた上着を着た後、木箱を持って店の外にへと行った。木箱を渡した男はテーブルに置いていた自分の酒を飲んだ。
翌日、俺たちは宿を後にして城にへと向かった。その時にはもう涼奈さんは元の姿に戻っていた。その後、城の人たちにへと挨拶をしていき街の出入口までフォルドさんが用意してくれていた馬車に乗った。
「わざわざありがとうな」
「いえ、気にしないでください 隊長が来るって言うならいつでもお迎えに上がります!」
「そうか、それなら来年もよろしな」
「分かりました」
「フォルドさん、本当にありがとうございました 色々迷惑とかかけちゃって」
「いやいや、君たちのおかげでロメオさんが助かったんだ 礼を言うのはこっちだよ」
「役に立てたなら十分ですよ」
「それじゃ行こうか 世話になったな」
「いえいえこちらこそ お気を付けて」
その後、俺たちは隠しておいたピックアップトラックに乗り込みヘルムへと戻っていった。その際、俺はシューメルさんにいくつか質問を投げかけた。
「数日前に襲ってきた、集団について聞きたいんですけど」
「あぁ~ あいつらのことか あの暗殺部隊、確か『ナイトメア』とか言ったな」
「ナイトメア…?」
「わしが部隊にいたころでも時々、耳にしたんだが“どんな仕事もこなし関与した証拠は徹底的に消す”とだけ聞いたことがあるな」
「どんな仕事もこなし関与した証拠は徹底的に消す…か…」
「わしも部隊のやつを見るのは初めてだった 余程、戦闘の訓練を受けているようだったな 部隊としての統制や判断能力、あの時の撤退もしっかりと判断したうえでの行動だろう 相手をするとなると難しいだろうな」
「今回は、運よく引いてくれたけど、次は厳しいだろうな…」
シューメルさんと話をしていると、横に座っていたツカサさんがシューメルさんにへと聞いた。
「それなら、何故勇者を真っ昼間にやる必要があったんだ? 真夜中にでもやればよかったんじゃないか?」
「うーん、そう言われてもな、その点に関してはわしも気にしていたがよくわからないんだ」
「それに何故わざわざ、馬を先にやった 一発で射貫けるほどの腕はあったはずだ」
「言われてみると確かに… 他に狙いが?」
砂利道を進んでいると、前の方から馬らしきものが走ってくるのが見えていた。俺は車を停め、凝視した。よく見ると、馬の上には誰かが乗っているのがぼんやりと見えていた。ツカサさんも降りてきて俺に話しかけてきた。
「どうした? 急に止めて、何かあったのか?」
「前の方に、馬みたいなのが見えて、こっちに来てるっぽい」
「うん? 確かに、だんだん近づいてるみたいだな」
少し待っていると、馬は近づき車の近くまでやってきた。その上には人が乗っていてどうやら慌てた様子にも見えた。
「あ、あのどうしたんですか? 急いでいるようでしたけど…って、門番さんじゃないですか!」
「もしかして、リョウガくんか? ということは、シューメルさんはいるか?」
「居ますけど…」
「どうかしたのか?」
そう言い、シューメルさんが出てくると門番さんは手を肩に置いた。
「今すぐ、来てください‼ み、店が…店が大変なことに‼」
「え‼ なんだって⁈」




