04 オオカミ君の本心
落ち着きを取り戻した私は部屋をやることを済ませてからさっさとベッドに横になった。
なんだかいろいろありすぎて思い出したら頭がパンクしそうだ。
とにかく明日になってほしいと思いながら、布団をかぶった。
次の日の朝。
眠れはしたが熟睡には程遠い。
目をこすりながら体を起こして、支度をする。
朝食と昼食を用意して、食べて、家を出る。
いつも通りだ。
「おはよう、理沙ちゃん」
全然いつも通りじゃなかった。
ドアを開けると大垣君がいた。
おそらくはいつも私が彼よりかなり早く出るので会うことはないのだ。
なのに待ち伏せしたように彼はいた。
実際に待ち伏せだこれ。
「おはよう。どうしたのよ、朝っぱらから」
「普通に理沙ちゃんと一緒に学校行きたいなって思って・・・」
「ああ、そう。じゃあ、行こう」
とりあえずめんどくさいから昨日のことは蒸し返さないでおこう。
私としてもちょっと恥ずかしい。
しばらく無言で一緒に歩き続けた。
「ねえねえ、理沙ちゃん」
「は、はい」
「今日もお弁当なの?」
「ええ、そうよ」
「今日も少し分けてくれる?」
「まあ、いいけど」
「やったー」
まるで昨日のことはなかったかのように話しかけてくる彼に少しイラっとする。
こいつにとってあれは何でもないことだったのか。
実際そうかもしれないけど、だからこそムカつく。
流石に言わずにはいられなかった。
「ねえ、昨日の夜のことはどういうつもりだったの?」
「ああ・・・キスしようとしたこと?」
キスしようとしてたのかよ!
心の中でツッコんだが、そうだろうとは思っていた。
「それだけじゃ済まなかったでしょ」
「そうだね。エッチしようとしたね」
なんだと、このレイプ魔め!
未遂だったけども!
「ちなみに本当にあなたのお家の風呂は壊れたの?」
「いや、お湯出るよ。嘘に決まってるじゃん。あんなに都合のいい話ないでしょ」
「この野郎!」
ついに心のツッコミが声に出てしまった。
「いやー、ごめんごめん。本気にしてたんだ。理沙ちゃんっていい人だね」
「本当に怒るわよ!
そもそも嘘だと思ったら家に上げるわけないじゃない」
「そうなの・・・最初からそのつもりで話しかけてきたのかと思ってた」
「そのつもりって、どのつもりよ」
「俺とエッチしたいのかなって」
「そんなわけないでしょ!」
「そうなの?じゃあ、何で話しかけてきたの?」
「普通に隣の席になったから話してみようと思っただけよ」
「なんだそうだったのか。てっきり俺の身体が目当てなのかと思ったよ」
「馬鹿じゃないの!」
何なんだこの男は。
身体が目当てって・・・私はエロオヤジか!
「どういう発想してるのよ」
「え、、僕に近寄ってきた女の子はみんなそうだったよ。
まあ、僕も嫌いじゃないし全然いいんだけどね。
でも、なぜかその後に気まずくなったり、怒られたりするんだよね」
「だろうね」
確かに彼ほどのイケメンだったらエッチ目的で近づく女も多いのだろう。
しかし、真剣交際を考えていた人もいたはずだ。
彼女たちにとってはこのヤリチンと噂の彼にすぐに手を出されては都合のいい女と思われていると感じてしまうだろう。
「だから理沙ちゃんが気まずくならずに一緒に登校してくれるのはうれしいな。
やっぱエッチはしない方が仲良くなれるのかな」
「そういう問題じゃない気がするけど、すぐにそういうことしようとするのはやめた方がいいわね」
確かに私もあのやられていたらこんな風に話せてなかったかもしてない。
ていうかやられてたら通報する事案だし。
「それじゃあ、君とはエッチなしの関係になろうかな。よろしくね、理沙ちゃん」
「はいはいよろしくね。あと、理沙でいいわよ。ちゃん付けは苦手」
「わかったよ、理沙。俺のことはまひろんでいいよ」
「自分でかわいいあだ名を提案してくる男ってどうなのよ」
こうして私には危ないオオカミ君な友人ができた。