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3るの怪  作者: 森三治郎
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沼田 恵美の受難(7)

今回が最終回となります。


10、倒錯の世界


 ほぼ、東京のど真ん中、いや日本のど真ん中の地下にアリの巣のような謎のような迷宮が存在していた。その中で蠢く怪しい人々。改めて地下には危険がいっぱい、謎がいっぱいあるものだと思う。

その怪しい男、下重 昭一が前を歩いて行く。肩には機関銃こそ無いものの、拳銃、弾薬、手りゅう弾などの入ったザックがあった。

「しっ・・・・・」

下重さんが、立ち止まった。

「誰か来る」

遠くから、微かに靴音がする。通路は隠れるところが無い。

「引き返そう。足音を立てないように」

我々は(きびす)を返した。私たちの帰る方向とは逆だ。ますます、遠くなる気がする。

どれ程歩いただろう。距離感が分からない。下重さんが、また立ち止まった。扉がある。

下重さんが道具を取り出し、カシャカシャと始めた。地下の住人たちは、ピッキングが得意らしい。

扉を開け私たちは慎重に進んだ。薄暗い廊下を進むと、微かに物音が聞こえてきた。

なお進むと、女の怒りの声に混じってビシッビシッっと鞭を振るうような音と、男の悲鳴、哀願の声が聞こえてきた。

「ここにも、拘束され拷問を受けている人が居るみたいね」

「うん、地下には似たようなシュチュエーッションがあるのだな」

「場合によっては、助けなきゃ」

私たちは、そろ~と様子を窺った。唯野さんが「あっ!」と息を吞んで振り返った。振り返って私と目が合うと、目が泳いでそのまま考え込んでしまった。

下重さんは低く「う~ん」と唸っている。私はこわごわ覗いて見た。

思わず「ウソ~!」と言ってしまった。

四つん這いのバーコード頭の全裸の男が居た。際どいハイレグの少しウエーブの掛かった長い髪の女がムチを振るっていた。悲鳴を上げる全裸の男は見覚えがある。

「えっ、ウソ~、あの人官房長官。こんなとこで、何してんの~」

「サド、マゾプレイみたいだな・・・・・」

「何してる」

「動画を撮ってんの」

私はスマホを向けた。

「世も末だ・・・・・」

「堕落してる」

「思い知れー、売国奴―!」

下重さんは手榴弾を取りだし、ピンを抜いて投げつけた。アッという間もない。

「何てことを!」

「まずい、逃げるぞ」

私たちは逃げ出した。カン、コロコロと手榴弾が転がり大きな爆発音がして、地下に大きく反響した。

3人でバタバタ逃げ出した。しばらくして、後ろから「待てー!」「逃がすなー!」などの怒号が聞こえた。恐怖以外のなにものでもない。おそらくは要人のSPだろう。私たちは全速力で逃げた。

しかし、相手は屈強のSPたちまち距離を縮めて来た。

「止まれー、止まらんと撃つぞー!」

日本の警察は律儀だ。こんな時でも、警告を発してきた。下重さんが、手榴弾を投げつけた。

大きな爆発音と悲鳴が上がり、取り敢えず追跡は無くなったようだ。だが捜索は続くかと思われる。もう、地下には住めないだろう。

「ああ~あ、下重さん、やってくれますね~」

「すまない」

「もう地下には住めないですね」

「うん」

「すまない」


私と唯野さんは都営地下鉄一之江駅に向かった。下重さんとは、地下鉄で別れた。

アジトに着きテレビを付けてみると、官房長官入院のニュースが流れていた。

放送では、官房長官は自宅の階段で転倒し、複雑骨折重症とのことだった。当然、SMプレイの最中に暴漢から襲撃とはならなかった。

それより、今後の行動の話し合いになった。

「どうするの、もう地下には住めないよ」

「ふふふ」

唯野さんが不気味に笑った。

「恵美さんのスマホ、貸してくれ。動画の写真を送りつけてやる。我々のことを捜索するなら、動画を週刊誌に売ってやると警告するのさ」

「官房長官を脅すの」

「脅すんじゃない。警告さ何とかなるさ。それより君だ」

「う~ん」

「どうだろう、神隠しにあって全く知らない土地に居たというのは・・・・・。その間の記憶が全く無いということでね」

「そうね~、いいかも~」

「どこか、行ってみたい所はあるかい」

「じゃ~、岩手県の遠野市。柳田邦男の『遠野物語』の舞台になった所よ。いろんな伝説とか座敷(ざしき)(わらし)とか、それに神隠しもあったような。今回の企画にぴったし」

「うん、それにしよう」



11、不明の女高生発見保護される


 5月14日、午前4時ごろ、行方不明だった江戸川昴高校の沼田恵美さんが岩手県遠野市の○○神社の境内で発見保護されました。なお、沼田さんは5月12日からの記憶がいっさい無いそうです。

神社の神主は「神隠しじゃなかろうか」と言っています。

近くの病院に入院となりましたが、少しやつれてますが外傷は無くいずれ健康も回復するとの見込みです。

テレビの報道を不思議な気分で見ていると、父さんと母さんが入って来た。

「恵美、大丈夫か」

「うん」

「そ~良かった~」

「まったく心配かけて~、しょうがない子ね~」

「ごめん、でも心配ないよ」

心配なのは、父さんと母さんの仲だよ。


 沼田恵美はその後のさまざまな治療を受けるも、不明の間の記憶は思い出せないと言うばかりだった。


お読みいただき、誠にありがとうございます。


皆さまの幸せを、お祈り申し上げます。





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