表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

逢魔が刻

サブリミナルなループ

作者: 名月らん

「あ~どこまで話したっけ」

「気が付いたら曲道にいた所」

「そうそうそれでね」


私は薄暗いテントの中で話し出した。


「そこを曲ったら目の前に海が広がってて、でもものすごく高いところだから下を覗き込んだのよ。そうしたら」


赤と黒の服を着た男女がうつ伏せで倒れていた。

そこは小川のようだった。

私は不思議に思い、ふと


これって救急車を呼ばないと、いけないんじゃない?


携帯を探そうとポケットを探したが見つからない。

私は急いで引き返し

古びた役場の建物に入った。

でも人の気配がしない。


困ったなぁ


他の建物に行こうと玄関を出た瞬間


ドン!


突然、誰かにぶつかった。

びっくりして顔を上げて相手を見ようとしたが、顔がすりガラスに隠れたようになって良く分からない。


誰?


私はもう一度目を凝らして見てみたが、やはり顔ははっきりと見えない。


「どこに行く」


歪んだ低い声がする。


「どこって救急車を呼びに」

「そんなもの必要ない」


私は驚き顔のよく見えない相手を見上げ


「なんで?だって向こうの崖の下に人が倒れてるのよ」


そういう私にその人は


「どこだ?誰もいないのに?」


私が慌てて崖の方に走って行き下を覗き込むと、そこには誰もいなかった。


「?」


不思議に思っている私にその人は


「いい加減にしないと出られなくなるぞ」


その言葉に驚いて振り向くと、その人の姿はもうなかった。


出られなくなる?


その瞬間、辺りが真っ暗になった。


なっ何?何?何?


私はパニックになった。そんな私に遠くから光が近寄ってくる。

どんどんなる光。


眩しい


と目を瞑った私を光が包んだ。

しばらくして恐る恐る目を開けると真っ青な海が広がっていた。

真っ白な灯台が奥に見える。


ん?


なにかに引っ張られるような感覚がして、私の意思とは関係なく灯台へと歩き出していた。


止まらない


そんな私の手を誰かが掴んだ。


「まだいたのか!」


この声はさっきの


その人は私を担ぎ上げて反対方向にあるき出した。

私は驚きされるがままだったが、顔を上げて灯台を見ると静かに崩れ落ちていった。


私が行かなかったから崩れた?


何故かそう思った。


ここは夢の中なのだろうか?


「違う」


私はキョトンとした。


「夢の中じゃない」


え?声に出してないのに


「声に出さなくても分かる」


私が驚いていると下の方を指差し


「ここ」


そこを見ると

文字が浮かんでいた。


えええええええ


何?何?何?


「閉じ込められたんだ」


何??


彼は私をおろしベンチに座らせ


「誰の仕業かは分からないが俺たちはこの世界に閉じ込められた」


私はポカンと聞いていた。

彼は軽くため息をついた。


「全くわかりませんって感じだな。とりあえず抜け出さないと・・行くぞ」


といい彼は私の手を握った。

私は混乱しつつも彼を信じてみようとその手を握り返した。


ふと下の方に文字が浮かぶ。私が文字を見ようとした時、彼が


「ちゃんと前を見てろ」


というので読みそこねてしまった。

そして、いつの間にか街の中にいた。

そして突如、私達に向かってくる車に私達はビルの影に隠れた。

すると、大勢の人間が私達を取り囲んだ。


「つーかまーえた」


伸びてくる手を必死で払いのける私を彼は又担ぎ上げ


「飛ぶぞ」


いや何?飛ぶって何?


と焦る私を尻目に彼は飛び上がった


え?


そして気がつくと飛行機の中にいた。


「いやどうやって乗り込んだの?これ、もう支離滅裂でしょ」


と私が言うと彼はフッと笑いながら


「そうだな、本当に有りえないよな」


といった。


そうありえない


「文字は浮かぶし場面は突如変わるし空まで飛べるなんて、まるで何かのゲームみたいね」


何気なく言うと彼は私の方を向きじっと見てきた。


「あれか」


その時飛行機が大きく揺れた。


「とう飛行機は緊急着陸いたします」


彼は急いて私に立ち上がるように言った。

慌ててシートベルトを外し立ち上がると


「お客様困ります」


とキャビンアテンダントがよって来る。

私達は非常口へと走って行き、彼が扉を開け私達は飛行機から飛び降りた。


怖い


そんな私を彼は強く抱きしめてくれた。


どれくらい時間がたったのか、目を開けると真っ暗なテントの中にいた。


「大丈夫?」

「え?」


わけも分からずポカンとしていると


「話の途中で固まったから驚いた」


話の途中?


「変なことが起こったって話てたろ」


私の頭の中に記憶が蘇った。


「そうそう、そうだった。あ~どこまで話したっけ」

「気が付いたら曲道にいた所」

「そうそうそれでね」


そこで私は違和感を覚えた。


これはデジャブ?

この話してたよね


その瞬間テントのカーテンの隙間から出てきた手が私の腕を掴み外に引きずり出した。


「チッ」


舌打ちにびっくりしてさっきまで話していた相手を見ると姿が消えていた。


「お前しっかりしろ」


急に怒られてムカついた私は


「何その言いかた、そんな言われ方される覚えはありまけんけど、あなた私の何なんですか?」


その言葉に彼は


「ああそうだよ他人だよ悪いか」


といいながらズンズン進んでいく。


「痛い、腕が痛い」


引っ張る手を緩めることなく彼は進んでいく。


「これっていつ終わるの?」


私がそう聞くと彼は呆れたように私を見て


「お前が終わりたいって思ったら終わるんだよ多分」


多分って


それでも、その言葉に何故か私は納得をしていた。


「でも、そうしたら消えちゃうの?あなた」


何気に聞くと彼は私の方を向き


「俺は消えない」


と強く言った。私は安心して


「うん終わらせる。ここで終わり」


と呟いた。すると世界は真っ赤に燃えだし私はどこかに弾き飛ばされた。


あれから1年がたった。あの日のことは今でも不思議に思い出す。

あの日、気が付くと私はライブハウスにいた。

そこは初めて行く場所で、知らないアーティストのライブを聞いていた。いまだに、なぜそこに行ったのか検討もつかなかった。


遅い昼食を友人と取っていると


「そうそう、あのライブ覚えてる?」


私が首を傾げていると


「私が占ってもらったテントの占い師さんに進められて行ったライブ!」


そうだ、私は彼女の付き合いでよく当たるという占い師のところに行ったんだ。


「あそこで配布してくれたDVDみた?なんかゲームっぽい画面でさ、私頭が痛くなってすぐに止めたんだけど」


そういえば家に帰って私はそのDVDを見ていた記憶がある。

彼女は身を乗り出し


「あれ回収になってるのよ!何でもサブリミナル効果ってのを使ってて、具合が悪くなったり訳の分からないことを言うようになったって苦情が殺到なんだってよ」


私は驚いて彼女を見た。そんな私を見て彼女は目を点にし


「まさか、一週間寝込んでたのってそうなの?早く言ってよ苦情入れないと」

「えっちょっと」


私が止めるのも聞かず、彼女は電話をかけた。


「ええそうです!私の友人もです!はい?え?」

「どうした?」


私が聞くと彼女が


「ライブのときの名簿残ってるから調べて、ここに来るって」


私は驚いて眉間にシワを寄せ


「いや、なんで来るの?ここ教えたの?」

「うん」

「いやバカ?あんたバカ?」


そう言うと友人は怒りながら


「じゃあ家に来てもらうの?そのほうがヤバいでしょ、ここならまわりの目があるしなにかされようもんなら目撃者いっぱいでゆうりじゃで!」

「じゃで?」


彼女は久しぶりの方言で真っ赤になった。


「あんたが怒らすから方言出たんじゃろ」

「中途半端になおってないよ」


と笑いながら言うと彼女はムッとした。そんな私達の所に二人の男性が近寄ってきて


「お電話いただきましたよね」

「遅くなりました」


え?この声


私が驚いて顔を上げると二人の男性は不思議そうに私を見た。


友人がひとしきり話すと


「あれを見て具合の悪くなった方の多さに反省しています。当初の制作時あのサブリミナル効果は入っていなかったので、後に確認したところ一人のスタッフがアーティストの要望を受けて差し込んだとの事です」


私はつい


「呪いですかね?誰かを閉じ込めるための」


と呟いてしまいハッとした。その私をもうひとりの男性がおどき見ていた。そして


「そうです、まさに呪いでしょうね。標的は誰でも良かったわけじゃなく特定の人物を狙っていた。だからその人以外は閉じ込められずに出ることが出来たんです。」


私は彼を驚きじっと見た。

友人ともうひとりの男性はそんな私達を不思議そうにみていた。


「私は特定の人物じゃなかったから出られたってことですか?じゃあその人は?その人はどうなったんですか?」


その私の問に彼は


「あの崖の下にいた二人がそうです」


ああ、この人かこの人なんだ


「それでもあの世界からなかなか抜け出せない人も」


私は彼の手を握り


「ありがとう、ありがとう!助けてくれてありがとう」


と頭を下げた。


「いえ仕事ですから」


え?


店を出て去っていく二人を私達二人は見送った。

帰り道友人が


「惜しかったね〜彼氏できそうだったのに」


というので私は彼女を睨みつけ


「仕方ないでしょ、あの人は苦情が増えて困ってた友人を助けるためにだったんだから。」


というと彼女は不思議そうに


「でもさ、あの人の病院に行ってもないのによく解いてもらえたよね?」

「あーそれは不思議ね」


私は貰った名刺をまじまじとみた。彼は心療内科医であり映像制作会社(あの映像をつくった会社)の友人から依頼され患者を見ていたとのこと。

当日の名簿を確認し全ての人に連絡していた。

もちろん私にも連絡をしたらしいがその途中で具合が悪くなりその後どうなったのか気になっていたらしい。

それ以上のことを彼は話さなかった。

私もこれで全て終わったと思っていた。


それから一ヶ月後私は思わぬ所で彼と再会する事になる。


「そうそうそれでね」


テントのカーテンの隙間から腕を掴まれ引きずり出され怒った声で


「君は又こんなところで何をしている!」









評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ