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恥ずかしいが止まらない

「ノア様……!?」


 ど、どうしましょう。私のせいでノア様が倒れてしまったわ……!


「エルシー様、大丈夫です。落ち着いてください」


 イーサンがすぐに駆け寄り様子を確認する。


「……気絶している、というより、気持ちよさそうにお休みになっています。念のため医者を呼びますがおそらく問題ないかと」

「そう……」

「いつもの発作ですよ。エルシー様のお陰で、徹夜明けにも関わらず寝てくださらなかったノア様がようやく休んでくださいました」


 私のお陰というより、私が贈り物を渡したせいで気絶した、が正しい気がするわ。気にしないでってことよね、きっと……。


 イーサンが軽々とノア様を抱きかかえベットに休ませる。身長が185 cmあるノア様をひょいと運べるイーサンは一体どれだけの力持ちなのかしら。


 彼も175 cmくらいあるとはいえ、凄いわよね。そんなに筋肉がある感じもしないし……って、違う違う。確かに凄いけど感心している場合じゃないわ。


「イーサン、お医者様を呼びに行くのでしょう?」

「はい」

「それじゃあ、その間は私がノア様をみているわ」

「承知しました。よろしくお願いいたします、エルシー様」


 イーサンが部屋を出ると、私は椅子を用意してベット脇に座った。彼の言う通り、ノア様はとても気持ちよさそうに眠っている。


「ノア様……?」


 呼びかけてみたものの、返事はない。

 ――――そういえばよく考えてみると、ノア様の寝顔って初めて見るわ!どうしましょう。何だか見てはいけないものを見てしまっている気がする。それでも、私の目はノア様の寝顔から離れてはくれなかった。


 真っ白な肌にフサフサの睫毛。鼻筋はスッと通っていてもはや芸術品の域。唇は少し薄めで、きちんとお手入れされているのかツヤツヤ。


「改めて見ると本当に綺麗なお顔……」


 今はお肌の血色感が無く唇の色も無く、やっぱり体調が悪いみたい。それなのにこんなにお顔が美しいなんてどうなっているのかしら。


 そんなことを考えながらノア様のお顔をボーッと眺めていると、ノア様の耳だけが赤くなっていることに気がついた。しかもよく見るとノア様の体が少し動いているじゃない!


「……ノア様、もしかして起きているんですか?」

「……」


 返事はない。でも絶対、ノア様は起きているわ……!という事は、まさか……


「さっきの私のつぶやき、聞こえていたんですね……?」


 そう聞くと、観念したのかノア様の瞼が開いた。


「すまない。エルシーの声が聞こえた瞬間に目が覚めた」

「そ、そうだったんですね……」

「エルシーは僕の顔、ちゃんと好きでいてくれたんだね。かっこいいって言われたの、初めてだ」

「……!?!?」


 ふにゃりと嬉しそうにノア様は笑った。ノア様はすごく幸せそうだけど、改めてそう言われるとすごく恥ずかしい。


「え、ええと……」


 私はそれ以上何も言えず、視線を逸らすため横を向いた。


「本当に綺麗なお顔って言ってくれたよね?」

「……」


 は、恥ずかしい……。ノア様はいつも可愛いって言ってくださるけど、いざこっちからかっこいいって伝えるのがこんな恥ずかしいなんて。しかもつぶやきを聞かれたから尚更恥ずかしい。


「はあ、可愛すぎる。……エルシー。こっちを向いてくれないか?」

「む、無理です……!恥ずかしいから無理です!」


 ちょっと待って。いつもとは違って、ノア様が攻めに攻めてきてません!?!?


「残念……。でも横顔も可愛いからずっと見ていられる」

「は、恥ずかしいんですが……」


 ノア様は宣言通りじっと私の横顔を見つめている。私はどうしたらいいのかしら……。


「ねえ、エルシー」

「……はい」


 ノア様の声色が変わった。きちんと目を見ないといけない気がして、私は顔の向きを戻した。


「なんだか疲れ果てていて叫ぶ気力がないみたいだ。今なら発狂しないで言いたいことがちゃんと言えるかもしれない」


 確かに、ノア様の声は普段よりもずっと小さく、低い。叫べないくらい疲れている中でこれ以上お喋りしないで欲しいけど、ノア様の「言いたいこと」がなんなのか、ちゃんと知りたい。


「言いたいこと、ですか?」

「ああ。せっかく貰ったプレゼント、開けられなくてすまない。そして、心配かけてすまない。エルシーがプレゼントを選んでくれたっていうことが凄く凄く嬉しくて。嬉しすぎて気を失ってしまったみたいだ」

「本当に心配したんですよ……!」

「すまない。……中身は今開けても?」

「中身は元気になってから見てください」

「分かった……」


 明らかに落ち込んでいるのが声のトーンから分かる。ノア様には申し訳ないけれど、中身を見て発狂するとまた倒れてしまうかもしれないから、今はやめてほしい。


「それと、最後に」

「最後に……?」


「僕に、チャンスをくれないか。今回の噂がきっかけで、僕はエルシーに甘えてばかりだと改めて思った。この発狂してしまう癖を、なおすことにする」

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