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ようやく、はじめまして

「髪も瞳も明るいですし、エルシーは少したれ目で柔らかい雰囲気の子なので、ベージュは似合うと思っていたんです。地味になりすぎないようにピンクのアクセントが効いたドレスを選び、飾りは存在感のあるものにしてバランスを取りましたの」

「本当にマルカム嬢がコーディネートを組んでいるんだね。マルカム家は確か、多くの人気デザイナーを抱える工房を持っていると記憶している」

「ええ。それもありまして、私は幼いころから誰かのドレスを選ぶことが好きでしたの。エルシーと出かける時は大抵、私が装いを決めさせてもらっていますわ」

「素晴らしい。エルシーの純粋な可愛らしさに本当にマッチしていると思う」

「そうでしょうそうでしょう!髪型もこだわりましたの」

「ああ。ツインテールが可愛すぎて困っている」


 ノア様が身体をクネクネさせてブツブツと呟いている様子よりも、呟いていたことの内容のほうが気になったらしいソフィア。


 ノア様も今日の格好をとっても気に入ってくださったみたいで、ふたりはいつの間にか熱いトークに夢中になっている。


 じ、自分の話を目の前で聞くの、嬉し恥ずかしだわ……。でも、本当にソフィアのコーディネートは昔から可愛いの。私が選ぶと少し地味になっちゃうのよね。


「まさかガイック様がこんなにもエルシーへの想いを持っているとは思いませんでしたわ。ついつい熱く語ってしまいました。……学校での振る舞いは何か事情があっての事なのですね?」


 っといけない。話が本題に入りそうだわ。

 私は気持ちの切り替えのために紅茶を一口飲んだ。


「ああ。予想はついていると思うが、私の口から説明させてほしい。」


 ◇◆◇


 ノア様の発狂癖のこと、それが理由で学校で全く会話がないこと、それを改善するために協力してほしいことを話し終わると、ソフィアは納得したように大きくうなずいた。


「承知しました。私はエルシーの親友ですし、ふたりと一緒にいても不思議はありませんわ。ぜひ協力させてください」

「本当!?ありがとう、ソフィア!」

「きゃあ!ちょ、ちょっと、エルシー!」


 嬉しすぎて隣のソフィアに抱きつくと、ソフィアはバランスを崩しそうになりながらも私を支えて抱きしめてくれた。


「ごめんなさい。びっくりした?」

「びっくりしたわよ」

「嬉しくてつい」

「嬉しいからってはしゃぎすぎよ?」

「だ、だって、これからはノア様と学校で一緒にいられるし、ソフィアといられる時間も増えるし、楽しみがたくさんなんだもの」

「ええ。まあ、そうなったらいいのだけど……」

「ど?」


 あら、さっきまで乗り気だったのに急に元気がなくなった。どうしたのかしら。


「前途多難ね」


 困ったようにそう言ったソフィアの目線の先には――


 これでもかと言うくらいボロボロと涙を流すノア様の姿があった。


「ノ、ノア様?」

「こ、これから、学校でもこんな天使と話せるなんて、えぐ、嬉しいを通り越して神への感謝が止まらなくてえええ。エルシーを見るだけで涙があふれてあふれて……」

「ノア様、まず涙を拭いてください。レディのお二人が驚いていらっしゃいますよ」

「ああ、すまない。えぐっ。ひっく」


 イーサンが無表情でハンカチをノア様に渡している。『こりゃだめだ』って顔に書いてあるわ。確かに、これは思っている以上に前途多難かもしれないわね……。


 でも、せっかくノア様がやりたいっておっしゃっているんだから、私も頑張らないと。とはいえ、いくらソフィアがいてもちょっと話しただけで大号泣する今の状態で、いきなり学校で話せるとも思えないのよね。もし学校で発狂癖が出たら、今後のノア様の立場にも影響が出かねないし……そうだわ!


「まず、学校でいきなり話すのではなくて、ここで準備をしてからっていうのはどうかしら?」

「準備?」


 急な提案に、3人が首をかしげた。


「私を見ても泣かない練習をするんです。あと、自然な会話ができるようにしましょう。学校でお話をするのはそれからにしたほうが安全です」

「確かに、その方がやりやすいかと」

「さすがエルシーだ。こんなに可愛くて頭のいい子が婚約者だなんて、僕は、僕は、なんて幸せなんだあ~~~~~」


 いつの間にか泣き止んだノア様、今度は興奮のあまりヘドバンをかましているわ。ロックミュージシャン顔負けの、ハイクオリティヘドバン炸裂……!最近は、ノア様の発狂パターンも増えて飽きなくなってきている。毎回新鮮な気持ちで発狂を受け止めているわ。


「ノア様、画的に怖いのでおやめください。あと普通に後で頭がくらくらしますよ」

「む、そうだね」

「ノア様が落ち着き次第、早速練習を始めましょうか」


 こんな時でも冷静なイーサンが新しく紅茶を淹れ直そうとすると、ソフィアがおもむろに手を挙げた。


「それでしたら私、いい方法を知っていますわ」

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