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プロローグ-2

 遅めの桜が満開の頃――

 長閑(のどか)な田舎を電車が駆け抜けていく。


 時期と時間のせいもあるのか、その車両の乗客は少年一人だけだった。

 歳の頃は中高生位だろうか、小柄で華奢な、少女と見紛う容姿の少年だ。

 短く揃えられた髪の襟足が、少年が男性である事を主張していた。


 少年は、先ほどから気難しい顔でスマートフォンを操作している。

 歳の頃を考えるとごく普通の行動だが、スマートフォンの画面を見て、少年は抑えていた悪態を思わず零していた。


「あの婆さんは、三年振りに連絡を寄越したと思えばこれかよ――」


 その声は少年の容姿に違わず、声変わり前を思わせる澄んだ高音だったが、吐き出された言葉には隠しようの無い険が滲んでいる。

 そのスマートフォンの画面はただ短く、『遥希、お前の力が必要になった。すぐに参集されたし』とのみメッセージが記されていた。


「せめて理由だけでも書いてくれれば良いんだけどな……」


 愚痴が口から零れる一方で、遥希もこの呼び出しにある程度の見当を付けている。

 三年間音信の無い師匠からの連絡だ、碌でもない事が起こりつつあるのは容易に想像がついた。

 遥希が思わしくない未来に思いを馳せていると、スマートフォンに新たなメッセージが届く。

 それは待ち合わせを示すもので、迎えを寄越すからと、その場所と時刻とが指定されていた。


「いや。明らかにタイミングがおかしいだろ、これ」


 愚痴を独り言ちながら、待ち合わせの指定もないまま出発した自分に対しても、良く躾けられたものだと、思わず苦笑いする。


 とは言え、遥希にも予定があり、また師匠の家には行き慣れていたから、迎えは必要ない。

 なので、『迎えは不要』とだけメッセージを返し、スマートフォンをしまい込む。


「あれから、もう三年か――」


 そして、久々に墓参りにも行かないとな、と遥希は呟く。

 電車は少しずつ都市部に近付いて行く――

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