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松本という漢Ⅴ  作者: 時田総司(いぶさん)


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第九節 スイカ割り

第九節 スイカ割り




季節は夏――、




松本、高校始まって以来の夏――。


イブキ、中学二回目の夏――。


二人は海に来ていた。燦燦と照り付ける太陽の下、ビーチに群がるビキニ美女達、それらを目当てに集る男共――。夏の海には、全ての若人を開放的にさせる何かがあった。




一方でタカマサは――、


「いっち! いっち! いっちにぃー!」




『ソーレ!!』




秋の大会に向けて、部活真っただ中だった。遊ぶ暇などない。この練習の日々が、〇△□×(丸さんかっけぇ死角無し)高校を、秋の予選っぽい大会で、一躍有名にする結果につながるのだった。




舞台は戻り、海――。


時代錯誤のダサダサの名前付けが付いたスクール水着に、浮き輪を持ったイブキは、準備体操などせずに着水していった。


「ひゃっほーい! 夏の海は気持ちがいいゼ!!」


「フッ」


松本はそれを砂浜で海パン一丁で見つめていた。数十分後、イブキが砂浜に上がってきた。


「マツモォーン。泳ぐの飽きた。何か別のコトしよーよぅ」


「ズデッ」


ずっこける松本。


「何だ、やけに早いな? そーだな……!」


松本は海の家に何かがあることに気付いた。


それは球体だった。


色は、緑と黒の縞模様。そう、お分かりの通り、それはスイカだった。


「フフフ」


松本は不敵な笑みを浮かべる。






――、




「マツモォン、これは何のプレイだ?」


イブキは手拭いで目隠しをされて状態で、棒を持たされていた。


「ハハ、知らないのか? これだから令和中学性は」


「おっ? 差別発言。PTAに訴えてやってもいいんだぞ?」


「色々とややこしくなるからやめてくれ」


「で、これはどういうプレイなんだ?」


「その言い方はよせ。俺が指示を飛ばしてやるから、それを聞いてスイカの位置を把握し、棒でスイカを割るんだ」


「おおー! スイカめ!! ぶっ潰してやる!!」


「物騒なコトを言うな。やるぞ」




イブキと松本のスイカ割りが始まった。




「しばらく前だ」


「ウス!」


「とっとっとっとっとっとっとっと」


「止まれ、2歩右」


「ウス!」


「サッ」


「行き過ぎたな、半歩左だ」


「ウス!(めんどくさなってきた)」


「スッ」


「そこだ! 思い切り叩き抜け!!」


「あいよ! 憤怒ふんぬ!!」




「カイン!」




イブキは棒を下方へ振り抜いた。しかし力不足のイブキ。棒はスイカに弾き飛ばされた。


「Oh……Noパワー」


イブキは落胆し、泣き、崩れる。


「はっはっは、お前にはまだ早かったな。どれ? 俺にやらせてみろ! 悔しいからって嘘の指示を出すのは無しだからな」


「あ、ああ。分かってるゼ(クソ! 嘘付くって何で分かってたんだ!?)」






――。




「じゃあ、始めるぞ」


「ああ。前にしばらく」


「スッ」




そこへ――、




「ここで会ったが百年目!! 松本ぉー!! 死ィイイイイイねェエエエエ!!!!」


鉄パイプを持った延安が、松本の後方からダッシュでやってきた。


「ん?」


「まっ……まままマツモン、逃げ……」




「ガンッ☆!!」




延安は松本の後頭部を鉄パイプで殴り抜いた。


「ドッ」


頭から地に落ちる松本。


「な……ななな何かヤバい倒れ方したぞ」


イブキはあまりの恐怖に、失禁寸前だった。


「はっはっはぁ! ざまぁ~。これで1カ月は動けまい! 松本ぉ! 敗れたり!!!!」


完全に勝利を確信した延安。事実、松本は鉄パイプで殴られ、ドクドクと頭から血が流れていた。


しかし――、


その確信は過信へと変わる。そう、虚偽の盲信へ……。


「はーっはっはっはぁああ!」


高笑いを止めない延安。


そこへ――、


「誰が敗れたって?」


「は?」


延安が振り返ると、そこには頭部から大量の血を流しながら立ち尽くす松本の姿があった。


「ギュッ! ブシュゥ!!」


松本は目隠ししていた手拭いを頭に巻き血を止血した(つもりなのか? むしろさっきブシュゥ!! とか言っt)


「黙れ」


……。


「ひっひぃいい」


「シャー」


これから行われるであろう粛清、それに対し恐怖に恐れおののき、失禁する延安。

「どぉおおした? 笑えよ延安」


「ずいっ」


松本は一歩、また一歩と延安に近付き、遂には目と鼻の距離まで詰め寄った。


「ガッ」


次いで、松本は延安の頭部を鷲掴みにする。




「メキョ、メキョメキョメキョ」




「わあってんだろうな?」


「ヒィ!」


「お前と俺、わあってんだろうな?」


「ッハ(訳分らん!!)」




「メキョッ!」




「! ! ! ! !?」


延安はブラックアウトした。




日は傾き――、


「カァー、カァー」


カラスが遠くの方で鳴いている。


「マツモォン、次どこ?」


「右。振り抜いてやれ」




「フン!」


「ブン!!」


「ひやぁああ」




松本とイブキは、延安を生き埋めにし、人間・スイカ割り危機一髪を行っていた。


「もっと左かなぁ?(すっとぼけ)」


「テキトーに殴ったる!」




「ブン! ブン! ブン! ゴッ!」


「ひっ! ひぇ! ひゃ! ゴフッ」




「やったー! 当たったよ、マツモォーン!!」


松本は右手親指を上にあげていた。


(俺をおもちゃにしやがって……)


延安は心の底から涙を流していた。




完全に日は暮れ――、


「さぁて、そろそろ帰るか」


「帰るゼ! マツモン」


「俺は松本だ」


「それはそうと、そのアタマ、大丈夫か?」


「ああ、血の気は多い方だからな」


(それは意味が違う気が……)


終わりに、珍しくツッコミ役に回ったイブキだったが、松本と仲良く家路を辿った。




浜辺で生き埋めにされた延安は――、


「うう、うぅ……」


フルボッコにされていた。


「まっ……まさか、このまんまじゃねぇだろうな!? おい! 誰かぁ!! 悪魔かよあの二人!! 誰かぁ!! Help me!!」




深夜――、


海辺は満潮を迎えた……。




延安、溺死!!!!




尚、葬儀は水葬だったという。




松本達の夏の思い出だった。

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