第五節 イブキの修学旅行その4
第五節 イブキの修学旅行その4
翌朝――、
「ふわぁー」
大きなあくびをする、イブキ……。
イブキ達の修学旅行、二日目が始まった。
朝食を食べ、身支度をし、ホテルを出る。バスに乗ると、担任教師が声を上げた。
「皆―。今日はまず、漆喰シーサーを作るぞ」
「何だ何だ? 漆喰シーサーって」
「シーサーはなんとなくわかるけど……」
ざわつき始める車内。
「漆喰は藁や石灰等を材料にした粘土の様なモノだ。それを素に、シーサーの置物を作るぞ!」
「なるほどー」
「粘土細工のよーなもんかー」
車内は和気あいあいとしていた。そこに一人、闘志を燃やす者が――、
「学年一の漆喰シーサーを作ってやるゼェ……」
イブキである。
「うわっ、イブキ……」
「あ……」
そんなイブキは、後ろに居た常盤さんや佐伯さんにも分かる様に、有り余る闘志で湯気が出ているような様子だった。漆喰村に着いた。ここで漆喰シーサーを作ることになる。あーだこーだ高校の生徒達は思い思いにシーサーを作っていく。
「俺は青のを作るぜー」
「俺は赤に塗る!」
そんな中、イブキは――。
「出来た。牙10本仕様黄金漆喰シーサー!」
牙を10本も付けた金色のモノを作ってしまった。どうやって金色にしたのか……?
「やったぜ! アタイのが学年一だ!!!!」
その時――、
「ボロッ」
「!!」
イブキが作ったシーサーの牙が、剥がれ落ちた。
「!? ああ! アタイのシーサー!!」
イブキが作ったシーサーは牙が抜け落ちた、入れ歯の老婆の様になってしまった。
昼――、
イブキはショックで、昼食はコメ一粒しかノドを通らなかった。
午後――、
一行は首里城を見学していた。生徒達はそれぞれに写真を撮影していた。
「シュン……」
未だに気を落としているイブキ。そこへ常盤さんと佐伯さんが声を掛けた。
「イブキぃ!」
「元気出しなよ」
「!」
「ほら、顔上げて」
そこには、漆塗りによる美しい朱色の建造物がそびえ立っていた。
「朱ぇ!」
「フフッ、良いもんでしょ」
「写真撮ってもらおうよ。あ、センセー」
三人は首里城内をバックに写真を撮ってもらった。その三人の表情は、これ以上ないくらい笑顔だった。
――、
その後、一行はひめゆりの塔を見学していた。ガイドは戦争について語っている。
しかし――、
(アタイが欲しているのはこんなマジメな修学旅行じゃあない。アタイが欲しているのは――)
不謹慎極まりないイブキ、ガイドの説明にはこれっぽっちも耳を貸さなかった。防空壕内の見学でも、イブキの意思は変わらなかった。
(フフフ。もうすぐ、アタイの修学旅行が再始動する……。夜が来る――、アタイの修学旅行が再び、幕を開ける!)
その後も戦争に関わる施設見学を行っていくうちに、いつの間にか日が傾いていた。
一行は二日目のホテルに辿り着いていた。
「今日はここに泊まるぞ。点呼をとる」教員による点呼が行われた後、生徒達はホテルにチェックインした。イブキ達は夕食を食べた後に、風呂に入った。
女湯にて――、
「常盤さーん、胸おっきい。いいなぁ」
「えー、そう? 佐伯さんだって立派なもんだよー、ほらっ」
「わっ! 触んないでよー」
「……」
イブキは自分の胸に手を当て、その小ささに言葉を無くしていた。
「てやんでぃ!! 胸の大きさだけが女の価値じゃねぇんだよォオ!!」
「ガラガラ……ダァン!」
イブキは風呂から駆け出して行った。
「何? アイツ……怒ってる?」
「何でだろうね……?」
常盤さんと佐伯さんはハテナ顔だった。
――、
今回も部屋割りは同じで、初日と同じ4人が同じ部屋で寝るコトとなる。部屋に4人が集まった。
「ねー、好きな人言い合おうよ」
女子Aが切り出した。
「はぁ? 別にいいけど、何で?」
「修学旅行っぽくていいじゃん」
「アタイもその意見に乗ったゼ!!!!」
常盤さんと女子Aとの会話にイブキが割り込んだ。
「じゃあまず、常盤さんから」
「私は、付き合っている人いて、バイト先の2つ上の大学生」
「おおー、いいね。じゃあ佐伯さんは?」
「わ、私も付き合ってる人がいるよ。同じクラスの、K君」
「えー? 意外―。じゃあ、イブキさんは?」
「アタイは……」
イブキはふと、一人の男、いや、漢の姿を思い起こす。身長185cm、体重100kgのあの漢を……。しかし、フルフルと首を横に振った後、言った。
「0歳から120歳まで! この世の全ての男が、アタイのストライクゾーンだぜ!!!!」
「ブハッ。何それー」
「じゃあ、言い出しっぺのAさんは、誰が好きなの?」
常盤さんが切り込む。
「私はねー」
「?」
「特に居ないの」
「ガクッ」
ずっこける様子の3人。
「でもねー、この手の話好きだから、楽しかったよ」
「へー」
「そっか」
ふー、とため息をつく4人。
そこで満を持してイブキが口を開いた。
「身体も温まったところで、ボケもんやるぞぉ!!」




