第二節 イブキの修学旅行
第二節 イブキの修学旅行
イブキ、高校二年生の秋。都立あーだこーだ高校のホームルームにて――。
「明日が待ちに待った修学旅行だぞー」
「うおおおおおおおおおおおおお!!!!!!」
イブキのクラスの担任の一言で、教室内のボルテージは最高潮に上がった。
因みに、その年既に〇△□×(丸さんかっけぇ死角無し)高校を卒業済みの松本、彼のその後を知る者はいない……。
「旅行先は知っての通り、沖縄だ」
「ハイハイハーイ!!!!」
イブキが全身全霊をかけて右腕を上げた。
「何だ? イブキ。質問か?」
「秋といってもあの沖縄。当然、泳げるんですかいー!!!?」
多少、言語障害になっている。
「イブキぃ、日本語は正しく使おうな。だが、その質問には答えてやる。天気によるが、海水浴には問題ないだろう」
「ヒィィイイイイヤッフゥゥウウウウウウ!!!!」
有頂天のイブキ。
「こらこら、あまりはしゃぐな」
(何持ってこっかな? トランプ、UNO、ピザ〇テト、ボケもんもいいかな?)
担任はイブキをなだめたが、あまり効果は無い様だ。
「ひとまず、だ。持って行っていいお小遣いは2万5千円だ。多く持って行ったら、一時的に没収するからな! あとは、不必要なものを、持ってかない様に!!」
『はーい!』
かくして、イブキのクラスのホームルームは終わった。
その夜――、
「佐伯さん、常盤さんをグループに入れてっと」
イブキ自室にて、どうやらイブキはスマホで連絡を取り合う様だ。
イブキ:明日はボケもん持ってこ―ぜ!?
常盤さん:おっいいねー
佐伯さん:え? いいのかな?
イブキ:全責任はアタイが負う!! 泥船に乗った気持ちで居ればええんや!
常盤さん:にゃはは! それ、大船の間違いじゃね?
佐伯さん:余計に不安になるよー
夜は更けていった。
そして――、
「皆居るかー!? 点呼をとるぞー」
修学旅行当日がやってきた。
一同は学校からバスに乗り、羽田空港に向かった。
「バリバリバリバリ、むっはー! ポテチが止まらないぜ!!」
イブキはバスの中、朝っぱらからポテチを頬張っていた。流石の担任もそれを見逃す事はできず、
「おーい、イブキぃ。ここで降りるか?」
「!? な、なな……」
動揺を隠せないイブキ。そして深々と頭を下げる。
「お代官様ーそれだけはお許しをー!」
「アハハハハハハ!」
バス内は笑いに包まれた。
数時間後――、
「よーし、空港に着いたぞ。もう一回点呼だ」
一行は羽田空港に到着した。
「何だ!? あんなにいっぱい鉄の塊が滑走して……な!? 飛んだ……だと……!」
「お前はいつの時代の人間だ? 飛行機も知らんのか」
「にゃはは、ウケる―」
驚愕するイブキ、それにツッコミを入れる担任。それを見た常盤さんは、笑いを堪えずにはいられなかった。
『まもなく○○時○○分の、那覇空港行きの便が発着します。該当の方は搭乗ゲートまでお越しください』
アナウンスが流れた。
「よし! 飛行機へ乗るぞ。皆、遅れるなよ」
『はーい!』
都立あーだこーだ高校一行は、飛行機に搭乗した。
『プー、プー、プー、……皆様、間も無く離着致します。シートベルトをもう一度ご確認ください。那覇空港への到着は……』
機内、アナウンスが鳴っている。
「ワクテカが止まらねぇ」
イブキはウッキウキだった。
「ガシャン」
「!?」
飛行機が離陸のため、動き出した様だ。
「ゴ――――」
乗客全員にGが掛かる。
「!? !? !?」
イブキは錯乱状態になった。次いで、
「ス……」
機体が離陸した。掛かっていたGもいつしか無くなっていた。
「ふいー、三途の川を渡りかけたゼー……!?」
ふと、機内から外を見るイブキ、陸地が遠のいていくのが見えた。
「ああぁ!! アースがァアア!!!」
「黙れ」
しびれを切らした担任が、遂にやってきた。
「お前なぁ、いくら飛行機が初めてだからって、はしゃぎ過ぎだ。高校生ならもっと、落ち着きをだなぁ」
「あ!!」
「!?」
再びイブキは機内から外を見る。
「雲に……近づいていく……」
「無視かコラ」
暫くし、機体は雲よりはるか上空を飛んでいた。
「ひゃっほーい! 今標高何mだ? 更なる高みへ、アタイは辿り着いたぞ!!」
(……馬鹿に付ける薬はない……)
担任はイブキを説得することを諦めた。
一同は知らなかった。この旅が、一体どのようなモノになってしまうのかを――。