第十二節 ノブ・リローデッド
第十二節 ノブ・リローデッド
「!! は?」
「だから、名字があなたと同じ、松本になるんでしたよねー」
「!!!?(コイツ……)」
松本は我が耳を疑った。
後ろ美人、k以来の、頭の中お花畑で、脳みそが腐っている変質者が、電話越しに居り、自分に話し掛けてきている……。松本は自宅のアフター5というリラックスできる環境に居たハズだが、この状況を呑み込めずにいた。
「お……おい」
「はわぁ?」
松本は重い腰を上げるように、頭の中お花畑のノブに対してゆっくりと口を開いた。
「この前の告白なら、もう断ったハズだ。それがどうだ? 何で俺とアンタが結婚する流れになってるんだ?」
「え? 違うんですか?」
「ああ、違う」
「ダメなんですか?」
「ああ、ダメだ」
「えぇー、ショックぅー……ガチャン! プープープー」
「!!」
電話は急に途切れた。松本はすぐに確信した。
(アイツ……断ったから、キレて電話を切りやがった……!!)
「畜生!!」
松本は自宅を飛び出した。雪の降りしきる寒空へと――。
「延安だか信子だか知らねぇが、とんでもねぇヤツだ! あのBBA!!」
松本は往来する人混みの中、人目もはばからず叫んだ。
そこへ――、
「呼んだ?」
「!!」
延安が現れた。
――。
「ギャハハハハハハ! 傑作だな!」
「このっ! 他人事だど思って……!」
松本は事の本末を、延安に話したのだった。
「何とかならねえか?」
「さあな」
「解決策は無いか?」
「知らね(笑)」
「助けてくれねぇのか」
「やだね」
「…………」
「俺はお前が不幸になるコトが嬉しくてたまらねぇんだよ、じゃあな」
延安は松本に背を向けて去っていk
「ゴッ!」
こうとしたら松本に一撃喰らわされた。
延安、散る!!
(クソ!! あんな奴の相手している場合じゃねぇのに……誰か相談できる人は……!)
松本はハッとなる。
(相談できる知人が……居ない……)
数日後――、
「位置について! よーい」
「パァン!!」
「ダッ!!」
「頑張れー!」
「いっけえー!」
とある日のとある河川敷で、〇△□×高校の、駅伝大会が開かれていた。
(走るのは苦手だ……)
身長185cm、体重100kgの松本は、短距離走も長距離走も不得意としていた。
(テキトーに流すか……?)
松本は無理をせず、駅伝大会を軽くこなそうとしていた。
その時――、
「あなたー! 頑張ってー!!」
「!?」
走路の脇から松本を応援(?)する声が聞こえた。松本は声のする方へと目をやる。
すると――、
「うふっ」
そこには学校関係者に紛れて、ノブが君臨していた。
(! あのBBA!!)
松本はどう転んでも不利な状況に立たされた。ここでノブから逃げるためにペースを上げたら『うっふ。応援の効果ね。声が届いて、松本君がよく走れてるわ』とノブのBBAが勘違いする。しかし、それを避けるためにペースを落とすと、ノブから第二声、第三声が飛んでくる。
「なんか、『あなたー』って聞こえなかったか?」
「誰かの彼女じゃないの?」
「ヒュー、お熱いねー」
第二、第三走者以降の生徒がざわつき始めた。
(クソッたれ!!)
結局、松本はペースを上げることも下げることもできず、そのままのペースを保ってその場から走り去って行った。
「うっふ」
ノブは恍惚状態にあった。
そこへ――、
「らにちてるんれすかぁ?」
後ろ美人、kが姿を現した。右手にはナイフを手にしている。
「わらちのまちゅもちょきゅんにらいちて、あなられすっれー!?」
kの怒りのボルテージはMAXになっていた。お前にはk氏が居るだろうに……。
「キエエエエエエエエエ!!!!」
kはノブを切れたナイフで襲った。
「ザスッ」
ナイフは、確かにノブの腹部に刺さった。
しかし――、
「ん?」
ノブは致命傷はおろか、ほぼノーダメージの如く、そこへ佇んでいた。
「!?」
kは愕然とした。クルッとkの方向を向いたノブは口を開いた。
「私、松本君と同じ苗字になるんですよー」
「!!?」




