精霊術と剣術そして旅立ち
100年…案外短かった。私が精霊術を身に着けるために要した時間だ。もっとかかると思っていた。精霊族は永遠に近い寿命を持っている。そろそろ勇者と魔王が誕生しているころだ。争い自体はあと20~25年先だと予想されるため、私もそろそろ戦う術以外の力を蓄えなければならない。そのため私は精霊界を離れた。精霊界にいれば戦乱に巻き込まれることはないがさすがにほっておくことはできない。起こると分かっている悲しみを無視できるほど割り切れる性格じゃない。100年生きてもそこは変わらなかった。
私の意志を聞いたラリーサはとてもうれしそうに笑いながら
「あなたのそういうところ、大好きよ」
と送り出してくれた。しかも精霊王の剣をくれた。精霊術を剣に付与した時の効果がとんでもないことに加え、ある特性がある。これが目玉と言っても過言ではない。
それは、剣の大部分が精霊力によって構成されている、ということだ。つまり、刃こぼれは自動で修復し、精霊体となった精霊族相手にも斬撃が当たるということだ。しかも精霊力で構成されているため、非常に軽い。剣に精霊力を加え密度を高めていくと強度も上がり、切断力も増すのだ。
つまりこれは持ち手が素人だと一流の剣となり、持ち手が一流の場合、超一流の剣となるのである。
ラリーサはきっと、前の世界での剣道を完全に諦められなくて、剣術を独自に開発し、魔物をこっそり試し切りに討伐していたことを知っているのだと思う。
「ラリーサには一生勝てる気しないなぁ」
私が目指す国はこの世界最大の帝国で、かつて勇者と婚姻を結んだ王族の治める国、グレートアイギス帝国である。そこの首都アイギスにはこの世のすべてが集まるという。前の世界であこがれていた上京を、こちらですることになった。正直結構わくわくしている。
着いたら、とりあえずは傭兵にでもなろうと考えている。
「でも先はまだまだだね、のんびり行こう」