誓い
声の主は半透明だった。そしてなんかうっすら光っている。その姿は例えるなら神様のようだった。
「神様ですか?ここは天国?私は死んだんですか?」
「うふふ、質問がたくさんね。でも気持ちはわかるわ。一つずつ答えてあげる。まず、私は神様じゃない、私は精霊女王。ラミーサっていうの、よろしくね。
そしてここは天国じゃない。ここは狭間、私の治める精霊界と人間たちの住む世界の混ざり合う部分。あなた川の水を飲んだでしょう?あれは精霊界から漏れ出た水で適性のあるものは傷を癒し体力が回復するの。適性がない者が飲むと死ぬのよ?あなたとっても運がいいわね。」
なんかさらっと怖いこと言ってる…
「あの水に認められた人間は精霊界に立ち入る資格を手に入れることができるの。そしてあなたがここにいる理由は私が連れてきたからよ。
久しぶりに適性のある人間を見つけたから嬉しくって連れてきちゃった。うふふ」
突然のこと過ぎて頭が回らないが、私が生きていて、このスケスケの人は精霊とかいうファンタジーな存在の女王とかいうすごいお方ということだけは理解できた。
「はぁ、なるほど。私ゴブリンに追いかけられてたんですけど、ここには入ってこれないんですか?」
「もちろんよ、魔物が精霊界に入れるわけないじゃない。いい?魔物っていうのは世界の穢れが集まって生まれるの。人々の憎しみや哀しみは本来は本人の心の中に留まるんだけど、少しずつ漏れ出て魔物になるのよ。ここ、精霊界は穢れた存在を許容しない。」
よかった、ここは安全なようだ。一時はどうなることかと思ったけれど。
「あなたはこれからどうするつもりなの?ゴブリン程度を倒せないのならここを出てすぐに死ぬわよ?」
どうやらラミーサに拾ってもらえたのは本当に幸運だったようだ。
「あの~安全な所まで送ってくれたりはしませんか?あはは流石に都合良すぎま『いいわよ』いいんかーい。」
「でも貴方はそれでいいの?誰かに守られつづけるなんて、納得できるのかしら?いいえ貴方はそんなの耐えられないわ。知っているわ、すべて」
「いやいや私なんかにはどうせ自分の身ひとつ守れませんってば・・」
「言ったわよね?私はあなたのすべてを知っているって。あなたが死ぬほど負けず嫌いなことも、でもどうにもならなくて、自分に絶望して、悟ったような気分になって諦めて自分自身を騙していること。そしてそのことすらも忘れちゃったふりをしていること。」
図星どころではなかった。精霊というのはデリカシーという言葉を知らないのかと、怒りすら湧いていた。だが、それよりそのことに対して何も言い返せない自分が恥ずかしかった。ここから消えてしまいたいような気分だった。
「ごめんなさい、いきなり貴方の心を暴くようなことをして。ただ私はあなたに伝えたかったの、ここはあなたの暮らしていた世界じゃない。つまり、あなたはここから新たにスタートするチャンスがあるってこと。そしてあなたの努力は今、この世界で報われる。だから、もう一度だけ頑張らない?私、頑張る子好きなの」
驚いた、なぜこんなにも私を励まして助けようとしてくれるのだろう。
「私には、何ができますか?」
「うふふ、貴女には無限の可能性があるの、なんでもできるわ。貴女が努力を惜しまず、諦めない限り。私は貴女の力になりたい。」
「どうして、私なんかを・・・」
「言ったでしょう?私は頑張る子が好きなの。それと私なんかって言うのも減らせるようになりましょう、私ならばって胸を張っている貴女の姿が見たいわ、そのほうがずっと素敵よ。」
そっか…そうだ、ここは私の暮らしていた世界じゃないんだ。私は今の瞬間から生まれ変わるんだ。
なぜかこんなにも私を応援してくれるラミーサのためにも覚悟を決めよう。