生き残るのが目的なら、最適はこうよね
ドンッ、グシャッ ミシミシミシ ギィィィィィィ
「ギャッ グエッ」
扉を勢いよく開いた瞬間、肉が潰れるような湿った音とおぞましい呻き声が聞こえた。
そして勢いがつきすぎたのか、扉も古くなっていたのか、蝶番がドア枠を引きちぎりながら倒れ、そのままゴブリンに覆いかぶさる形となった。
私は倒れた扉を力いっぱい踏みつけ、そのまま正面にいるゴブリンに先ほど作ったガラス付き木材を叩きつける。ガラスがゴブリンの首元に勢いよく突き刺さり、ゴブリンは首から血を吹きながら首をおさえて倒れた。初撃は成功、しかし残念ながら初めて作った武器は一撃であっけなく壊れてしまった。
「マズイ、なにか武器!!」
わたしは、折れた木材を片手に辺りを見渡す。興奮しているからなのか、一秒一秒が引き延ばされたかのような感覚になる。一番最初に踏み倒したゴブリンの錆びたショートソードが足元に見えた。私はショートソードを拾い、足元で扉に潰されて気絶しているゴブリンにトドメを刺した。
そしてそのまま、こちらを睨みつけて今にも飛び掛かってきそうなゴブリンと反対方向に全力で逃げた。別に全部倒す必要ないよね。
私は川にたどり着いていた。そしてゴブリンはどうやら追ってきていないらしい。あきらめたのだと信じたいが、油断はできない。
「うんめ、うんめ」
まずは、水を飽きるほど飲んだ。
必死に逃げ続けた結果、服はボロボロの土まみれ、汗まみれになっていた。
しばらくしても追ってくる様子が無かったので、服を脱ぎ、下着だけになった。そして、川の中に入り汚れた体を洗う。火照った体が冷たい水で冷えて気持ちがいい。
私は川の水がうっすらと光っていることに気が付いた。もしかして、毒?と思ったが今のところ体調に変化はない。
気持ちが緩んだのか、体が急に疲労を思い出したかのように疲れと眠さを感じた。そして脱ぎ捨てていた服を着なおし、木の下まで移動して仮眠をとることにした。
しばらくして、なにかに担ぎ上げられた感覚があったが眠りの心地良さには勝てず、意識は再び深い眠りの中に沈み込んでいった。
ふと目が覚め、辺りを見渡すとのどかな花畑にいた。そして、徐々に意識が覚醒していき自分が眠っていたはずの川のほとりではなく謎の花畑にいることに気が付いた。
「随分とねむってたわね」
背後から女性の声が聞こえてきた。もちろん私は振り返ることなく全力で逃げ出した。
「あら~随分と怯えちゃってるわね、誰かに逃げ出されるなんて何百年ぶりかしら」
なにか後ろで言っていたが、逃げることに必死なのでよくわからない。そして私は、花畑を逃げていたが、おかしなことに気が付いた。景色が変わらない、それどころか同じ場所を走り続けているかのような感覚になる。
「もう満足した?人間じゃあここから出ることはできないわよ」
体力が持たなかったのと、この明らかな異世界で私が言葉を理解できたという不思議に興味が湧いたので、思い切って振り向いた。
そして私は声の主の姿を見て、ここはやっぱり異世界なのだと思い知った。