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リビングデッド、七四〇赤(カラフルコレクション)/絶滅危惧・魔眼  作者: 錯誤
Collection.1 恒常的に持続する世界をくれたあなたに/共有する白昼夢
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4.脳みそが腐っているのだな


      ☆






 火宮ひのみやと出会った、入学式の日の放課後。


 生徒会室。


 どさっ、と束ねた紙類が落下する音がして、中林と、対面する人物は、それぞれ音がしたほうをむいた。


「なっ……」


 胸の前で抱えていた物理書籍を数冊、足下に取り落としたらしい、ウェーブがかった髪の少女は、それが些事だと言わんばかりに赤縁眼鏡のレンズ越しに琥珀の目を見開いて、信じられないように声を上げた。


「なんで、あんたがここに……!」


「? この人に呼ばれたからですが。というか、きみもそうなんじゃないですか? ……えっと、……?」


闇森くらもりさん、だよ。緋視はなみくん。新入生代表で挨拶もしてたし……、なにより、きみと出身中学同じはずだけど、あんまり仲良くなかったの、かな?」


 中林は端末に目を落とした。白樺は画面上にQRコードと一緒に『バカ』とうるさいフォントで表示していた。コードに刻まれた『中学時代の白樺が見た記憶』を認識、脳内チップが情報を吸い上げ、『スクリーン』に上映を開始する。


(余談として、その場でコードを生体が目視確認するような技術は現時点では開発されていないが、未来においては可能性として存在する。その『可能性』の処理を脳内チップが代替した。あくまでその能力者の機能の拡張に留まる話だが、ヒト単体では困難な処理を代行する。それがオン・オフのスイッチだけではない、能力の外部操作機構に備えつけられた設計だった。その設計に従えば、中林緋視は、ヒトが到達しうる技術ならば、その場で再現できてしまう存在になる)


 必要な記憶を閲覧した中林は、その情報どおりの答えを発する。


「……いや、交流はありました。仲については、まあ、お察しのとおりというか」


「見た感じ、たぶんきみが悪いと思う、けど……そうなると、困った、な。人手が足りなくなっちゃったから、きみらふたりとも、生徒会に動員しときたかった、けど」


「それ、俺に拒否権あるんですか? 雨垂あまだれさん」


「親戚だし、ね。そのあたりの配慮は、期待したいところ、かな」


 問いかけに、雨垂は意味深に笑って応じる。中林は嘆息し、


「拒否権はないんですね……。まあ、部活入らない予定なので、いいんですけど」


「一応、よほどの理由がないかぎり、部活動には所属してもらう決まりになっているんだけど、ね。生徒会役員は免除だけど、掛け持ちも可能だから、その気があれば、部活参加は歓迎、だよ」


 中林は「ははは」と乾いた声を上げ、それとなく目を逸らした。“陽”のオーラが彼には毒だったのだ。


「あいにくと、やりたいことがないので。闇森さんもそんな感じなんですか?」


 だから避けられている闇森に話題を振るという選択をし。


「……中林くんが生徒会入るっていうなら、あたしは入りません」


 そうやって、にべもなく跳ね除けられた。


『いつものことだよ』と白樺が画面にメッセージを表示する。『中林相手だと。闇森。めっちゃ塩だった』


 なら気にするほどでもないな、と感情を切り替えて、中林は「まあ、闇森さん、バイトで忙しそうですしね。俺も始めようかと悩み中です」と雨垂に相談を持ちかけた。


「ああ、特に禁止されてるわけでもないし、いいんじゃない、かな。許可を取る必要はあるけど、メールでも構わないみたい、だよ。僕も去年の夏休みには、短期のバイトを入れてた、かな」


 経験を語ったのち、生徒会副会長は首を捻った。


「……うーん。なんでか、そのときの記憶があいまいだ……よっぽどの激務で、防衛機制が働いてる、って話だと、ちょっとこわいかも、な……」


「夏休みですか。……なら、そこが鍵なのか」


「なにか、言った?」


「いえ、聞こえてないのならなにも。俺はこれから金を負う予定があるので、参考になるようなお話を聞ければと思ったんですが、そういうことなら引き下がります」


 慇懃に言った中林のセリフに、そっぽをむいていた闇森が、つ、と眉を上げた。


「借金? 奨学金とはべつに?」


「ええ、まあ。……俺、きみに奨学金の話なんてしましたっけ」


「それを言うなら、あたしはキミに、ここで会ってからバイトのことなんて話した覚えはないよ」


「……そうでしたね」


 ここで会ってから、ということは、それ以前。中学時代、お互いのパーソナルな部分を語らう程度には親しい間柄だったということだろう。白樺の『記憶』にはそんな情報はなかった。顔を合わせれば言い合いになるような、そりの合わない同級生。──その情報が誤りだとは思わないが、一面的なものであることは、自らがなんの気なしにこぼした言葉が証明していた。


 高校に入ったら、彼女はバイトで忙しくなる。


 意識するまでもなく、それは『以前』の中林にとっての当然だった。


「……『一緒の高校に行こー』って約束、忘れたと思ってたのに」


 聞こえるか聞こえないかくらいの音量で、闇森がつぶやいた。──そんな約束は知らない。中林は、妙に水分が減ってかさついた口内で舌を動かす。


「家から近いので、自然と選択肢に並んだというか」


「嘘。電車通学にしてる時点で、そんな近いと思ってないこと、わかるんだけど」


 落ちかけた陽射しに濡れる目は、『期待』と呼ぶべき感情に染まっていた。言い繕おうと思えば簡単に誤魔化せて、しかし考えに反して、舌の滑りが鈍くなる。これは能力ではない。闇森守鈴に(・・・・・)能力は存在しない(・・・・・・・・)。だから、中林が沈黙を余儀なくするのもまた、『躊躇い』という感情によるものだった。


 それを口にだせば、決定的に目の前の人を傷つけてしまうことがわかるから。そんなことを恐れる『自分』は、きっと、この人が傷つくところを見たくないのだろう。


「本当は、覚えてるの?」


 覚えていない。脳内にはつぎはぎで、実感というものに乏しいデータが、ピースを欠いたパズルめいて残るのみ。中学時代の記録は、白樺めぐみという『バックアップ』がなければそこに紐づく情報を引きだすことすら危ぶまれる。中林緋視の『未来視』はそういうふうにできている。……そんなことを言うわけにはいかないから、中林は『眼』を凝らし、目を逸らした。


「覚えているなら、覚えてないふりをするのは、あたしのこと──」


「──ところで雨垂さん。生徒会に欠員がでたって話ですけど。どこの役職が足りないか、聞いてもいいですか?」


 遮った声は、自分でも不自然なほど機械じみて抑揚に欠けていた。問いをむけられた雨垂は失笑を洩らし、


「いやいや……誤魔化すの下手だな、きみ」


 噤んだ闇森を気の毒そうに見るも、「とはいえ、質問の内容自体は、もっとも、だね」と蚊帳の外に置かれた話の主導権を握り直す。


「足りないのは、書記、だよ。去年、ひとり辞めちゃって、ね。募集はかけてたんだけど、引き継いでくれる人がいなくて、だね……」


「会長さん、人望ないんですか?」


「あるよ、超あるよ。ただ、その会長が、新しくメンバー入れたがってないらしくて、ね」


 雨垂は「だから、入ってくれるなら、書記じゃなく、べつの新設する役職に就いてもらうことになると思う、よ」と、心なし申し訳なさげに結んだ。


 離脱したメンバーというのが、生徒会長と仲がよく、また戻ってくるのを期待して、枠を潰すのを渋っているとかだろうか。


 ありそうな話だが、真実はわからない。なので直接訊くことにした。


「そのいなくなった人って、どんな人なんですか。会長さんと仲よかった人とか?」


「そう、だね……、? おかしい、な……同級生だったはずだけど、接した記憶がぜんぜんない……星野ほしのさん──ああ、会長のことだけど、彼女とは、仲違い、ってほどじゃないけど行き違いがあって、それで拗れちゃってる、んだと思うけど……」


 不確かな口振り。脳裏をまさぐるように、二度三度、こつこつと側頭部を叩く雨垂だったが、やがて諦めたように吐息した。


「……ダメだ。原因が、わからない。なんで佐々木(ささき)さんは、出て行ってしまったんだっけ……」


「……佐々木?」


 反応を返したの闇森だった。彼女は目上相手に怪訝さを隠そうともせず、どころか不審人物を見るような棘のある眼差しで、『冗談にしてもおもしろくない』、と。


「佐々木さみどりさんですか?」


「そう、だけど……そう、そんな名前だった」


 雨垂は頭痛がするように額を押さえて黙りこんでしまった。話がつかめない。さきほどのやりとりの手前、気が進まないながらも、闇森に声をかける。


「……有名な人ですか?」


 闇森はちろっと横目で見返して、仕方なさそうに口を開く。


「まともな受験生なら、受験する学校の主立った情報を集めて然るべきだけど、中林くんだしね。事故でヒトがひとり(・・・・・・・・・)亡くなった程度の悲劇(・・・・・・・・・・)、目新しくもないだろーから、チェック洩れしたのかな。


 でも──石動いするぎ先輩。


 あなたは覚えていないとダメです。


 佐々木さみどりさんは、去年の夏、あなたの旅行に同行して、その旅行先での死亡が報告された生徒なんですから」


「……ああ、誰かと、思えば」


 中林の紫眼は、記憶を閲覧するのに使ってからずっと、光ったままだった。その目は屋内にいる自分を除いた生者と死者を正確により分ける。『未来視』の起動後、経年を刻んだ面貌を露わにする闇森と対比して、まったくの不変の存在はあまりに異質だった。去年の夏に死んだと推定される体は、腐敗の進んだ気配もなく、外部からなんらかの手が加わっていることが窺い知れた。


 生者の言葉を捉えた死者は、最前までの混乱が嘘だったように、片目をにこりと笑みの形にして──


「佐々木さみどり。それが、僕の『未練』の原型なんだ、ね」


 謎めいたことを、口にした。






      ☆






 石動のあとについて石段を登り切った山頂で、まず中林たちを迎えたのは、塗りたてのペンキの色も艶やかな一基の鳥居だった。


焔花サクラ神社』


 刻まれたその名の通り、色は鮮やかながら、淡い印象を受ける薄紅色。コンクリート造りの堅牢な、高さ二〇メートルの大鳥居である。


 目指す本殿は、その鳥居と比してもなお勝る存在感をもって、遠方にそびえていた。


「【国内最古の神社かみやしろ】って触れこみですけど、ふつうに現代技術使ってるんですね」


 石動が遠隔操作を切って動かなくなった雨垂を背負い、五〇段を昇った中林は、けれど息切れひとつなく、のんびりと雑談を振った。石動はべつの生き物を見るように、胡乱な目をしながら、はあ、と軽く息を整えてから応じる。


「祀られた存在が、そもそも特異に過ぎる。なにせ『現存する神体』そのものなのだから」


「先端技術の採用も、神様自身の意向ってことですか」


 わかったような顔で、なるほど、とうなずく中林。それに石動は平坦な顔で補足を入れる。


「一応、住居として用いられているとはいえ、外観は観光にもってこいだ。見栄えを意識して整備するのは、むしろ自然な話だろう」


「言われてみれば、そんなものですか。国母の住まう社も、世相には逆らえない、か」


「……国母という呼称も妙なものだ。他に言いようがないとはいえ、“彼女”の与えた影響はこの国程度に収まるものではない」


「能力の祖、って話ですからね。能力者は全員、あの人から生まれた。世界規模の『災害』、なんて言ったら失礼かもですが」


 雑談が途切れると同時、鳥居の下からまっすぐ伸びていた、参道を舗装する石畳が途絶える。


 本殿は鳥居と違い、朱ではなく、黒を基調とした落ち着いた色合いで建っていた。神社という体裁を取っ払った、住人の趣味によるものである。


 古社のため拝殿は存在せず、ただ観光地であることを示すように、手前に賽銭箱が鎮座し、やや新しめの鈴が頭上に垂れ下がっている。参拝時同様、銭を投げて鈴を鳴らせば、『ど~ぞ~』と緩い声がかかり、閉ざされた襖が、す、と滑らかに開いた。


 開いた襖の正面には、三つ指をついてお辞儀する巫女服を着た女性。


「お待ちしてましたよ~。緋視はなさん、梅雨あめちゃん、雨垂しずくさん、……それから~、紫桜はるちゃんはおかえりなさ~い」


 いたくのどかなあだ名で呼ばれたそれぞれは、その呼び名に反応する前に、最後に挙げられた名前に意表をつかれ、揃って振り返る。


「……えへへ。きちゃった☆」


 意識のない雨垂を除いた四対の視線を受けた火宮は、バツが悪そうに頭を掻きながら、身を隠していた茂みから姿を現した。しおらしいのは態度だけで、言っている内容は白々しい。その態度さえ上辺のものだったのか、服についた葉の欠片を払いながら次の言葉を発する際には、けろっとした顔で。


「お姉ちゃん。ただいま。……ってか。海からなんで実家うちに繋がってんのさ?」


 のんきな声が発せられるのと、ポケットに入れた端末がバイブするのに、時差はほとんど存在しなかった。取りだして見れば『悪い。シハルの行動を読めなかった』と七草からのメッセージが届いている。中林は目を細め、小さく息を吐いた。火宮の口振りから察するに、どうやら中林らが通った【孔】をそのまま抜けてきたようだ。『視れなかったのはこっちもなので気にしないでください』と手早く返した中林は、暇そうに毛先をつまむ火宮にむきなおった。


「言いたいことはいろいろありますが……まず得体の知れないものに軽々しく触れないでください」


「いやいや。はなみん。めっちゃふつーに通ってったじゃん。なら大丈夫なのかなーって。あと服! 持ってきてあげたんだから。感謝してね!」


 胸に大きく『I♥️熱帯』とプリントされた謎Tシャツをかかげて、火宮はドヤりと会心の笑みを浮かべた。ノーサンキューだった。ブツを受け取る中林の瞳は急速に光を失い、濁り具合は汚泥のよう。どんよりと澱んだ空に似つかわしい。


「ものすごく嫌そうだ……」


 おののく後輩の声を背景に、中林は一旦雨垂を地面に寝かせてTシャツを着用する。生地の品質が高いのか、やたらに肌触り良好なのが不可解だった。


「ありがとう、ございます……」


 血を吐くような思いで礼を言い、「どーいたしまして!」という善意一〇〇%の笑顔を意識的に視界から排除しながら雨垂を担ぎ直そうとしたところで、パチン、と。弾くような音が前方でした。


 視線を移せば、いつのまにか立ち上がった巫女服の女性が、開いた襖の手前、指を鳴らした仕草で淑やかにたたずんでいた。その傍らには、石動雨垂の体が悠然と浮遊している。


 思わず足下を見下ろす。雨垂が転がっていたはずの地面には、毒々しい色の雑草以外、目につく生物の気配が存在していなかった。


 視線を戻す。


 宙に漂ったまま頑なに接地しないはとこは、生物というより物体じみていて、浮遊する人型の風船めいた有り様は、体調の悪い日に見る夢のようだった。


 なんらかの手段で、大の男の体を瞬時に引き寄せたらしい、火宮に『姉』と呼ばれた女性は、「地面に寝かせとくと汚れちゃいますからね~」と言いながら、つい、と指を振り、その仕草のみで本殿の中に雨垂を移動させた。


 そうしながら彼女の目はこちらを見下ろしたまま動いていない。涼しげに、笑みをたたえて見据える瞳は、両目ともに真珠のごとき銀白色をしていた。


 赤みがかった黒髪は、アシンメトリーのショートカットで、長い片側は三つ編みでまとめられている。口を開けば親しみやすい・されど第一印象としては冷たさを感じさせる面差しや、ヘアアレンジの仕方など、『姉妹』とくくられても不思議ではないくらい、火宮と似た要素を持っていた。


清水しみずさくらか」


 石動は対峙する人物の名前をつぶやいた。声のもとに視線を動かしたなにがしは、頬に指をあて、わざとらしく首を傾げて。


「その名前で呼んでくれるのはうれしいんですけど~、いまは『火宮』姓で通っているので、そっちで呼んでもらえたらな~、って」


「……では【検体六号】と呼べばいいのか?」


「いいわけないでしょう」真顔できょとんと問い返す石動をぐい、と押しのけ、中林は彼女の名前を呼びかける。「朔良さくらさん……いや、字が違うだけで口頭じゃ変わらなくないです……?」


「おかあさん、でもいいんですよ~?」


「火宮が『姉』って呼んでるんだから、こちらがそう呼ぶのはおかしくないですかね……」


 げんなりと顔を背けた中林の隣、石動は、ひらめいた、と手を打って。


「では、『おばさん』と呼ばせてもらおうか」


「あはは~。ドタマかち割っちゃいますよ~?」


梅雨さみだれ……」


「うわあ。つゆぴょん。恐いもの知らずだあ……」


 火宮朔良。火宮七草・火宮紫桜の、続柄としては母にあたる人物で、現在二十三歳。満年齢十三歳の石動にとっては一〇も年の開いた相手であることはたしかだが、『口が悪い』ではすまされない程度には、ひどく不適切な発言だった。


 原義どおりの妙齢女性は、「怒っています」と言いたげに、腰に手をあてて上体を折り、ずい、と距離を保ったまま顔を近づけて。


「ダメですよ~梅雨あめちゃん。その言葉は一〇年後の自分に跳ね返りますから~。……そうですね~、『火宮のおばさん』とかなら許しますけど~」


「懸念するところはわかった、謝罪する。……あなたはいい人だ」


 石動は素直に頭を下げ、敬意をこめた眼差しで提案する。


「呼称は『義母宮』というのはどうだろう」


「それならいいです~」


「いいんだ……」


 中林は「いいんだ」と思った。満足げにうなずいた仮称:義母宮は、ぴ、と親指で背後を指し示し。


「ついてきてください」


 着ている服装とは合わないが。


 ひたすらにかっこいい仕草だった。






      ☆






『みなさん。遅参おそかったですね』


 義母宮につれられ入った広々とした板間。真っ先に目につくのは中央に設置された巨大な水槽である。


「ありゃ。ゆーくん。しゃべるの珍しい」


 他になにもない。祭壇なんてものもないので神社の本殿らしさはなく、だから、それが『祭壇』なのだった。


 コポコポと泡立つ緑色の液体に満たされた、円筒形の強化ガラス。その内部には、小さな、動かない生命体が存在していた。


 こちらを見返す目は緋く。着色された液体に照らされる肌は、青白く。薄い皮膚下には血管が浮いていた。


 年の頃、二、三歳の幼児の姿をした、祀られた神体。その名は──


火宮ひのみや悠久ゆうく。今代の魔眼継承者か」


「また新しい用語を……。考えるの楽しいですか?」


「うん」


「……。梅雨はかわいいですね……」


 中林が諦めた顔で感想を述べると、なぜか火宮がムッとした顔で噛みついてくる。


「つゆぴょんには言うんだー。ボク。一度もキミにそういうこと言われたことないんですけどー?」


「知りませんが……。言われたいんですか?」


「いやべつにぜんぜん」ないない、と手と首を振る火宮。「でもちやほやはされたい」


「それはある」うむうむと腕を組んで石動がうなずいた。「わたしの兄は雨垂で、言われたいのも雨垂のみだ……けれど、誰に言われようが気分がいいというのはある」


「きみら最低のこと言ってる自覚あります?」


 中林は短く息を吐き、水槽の中に目をむけた。


「……で、この子が七草の……? 神体が意志疎通可能な存在であることは聞き及んでいましたが……」


 懐疑的な視線を受けた幼児は、惑うでもなく婉然と、年齢不相応に口の端だけ歪めた笑みを浮かべて。


『……どうやら誤解いきちがいがあるみたいですけども。ぼくはあくまで模造品れぷりかみたいなもの。ここの神様ほんにん家出中ぼいこっとちゅうですから』


 分厚いガラスと内部に満たされた液体によって、火宮悠久には空気の振動を介した発声は不可能なはずである。


 だが、舌が足りない幼児にしては、妙に気取った語り口がたしかに耳に届いている。どういった理屈だ、と詳しそうな義母宮・石動あたりに目配せすれば、こほん、とおもむろに咳払いした年嵩の少ないほうが、前に立ってくるりと反転し。


「あれは声をだしているわけではない。翻訳した思念を、スピーカーを通じて外部に発信しているのだ」


「……思考出力はまだ開発段階と耳に挟みましたが」


 というか石動自身から聞いた覚えがあった。しらっと見る中林に、彼女は慌てず言い繕う。


「だからこれも実験段階……チップを埋めこんだ我々と違い、彼の入ったあの容器自体が外部操作装置となっている。あんななりだが彼はまだ『誕生』していない。あの液体は羊水で、母胎とはへその緒で繋がったままだ。この出力方法は、母体が『外』で能力を行使するに際して、胎内の子と意志疎通をはかる手段として模索されたかたちのひとつにすぎない。まあ、言っても、外部操作機能の回路を形成する火宮七草とは近い存在ではある。『翻訳』については大方のところ、意訳めいてはいるが、誤訳は少ないと判断している。火宮悠久個人に合わせたオーダーメイド品のため、量産化の目処が立っていないのが、目下の課題、というところか」


星野サキ(おかあさん)能力使ひとづかいが乱暴あらいのが原因りゆうですね』幼児・悠久はしみじみと。『ぼく命令おーだーくだらないと、母親あのひと自分ひとり使用つかうことができませんから。出産うまれるときに母子両者ふたりとも崩壊はめつ防止ふせ安全装置せーふてぃろっく能力の事前行使権(がいぶそうさきのう)を、悪用ばぐらせているわけですから、ある程度ていど不便ふじゆうはしょうがないのですね』


「神話を紐解くに及ばずとも、」石動が引き継ぐ。心なし表情が生き生きしている。説明好きなのかもしれない。「──『妊婦の身を灼いて産まれる忌み子』の存在などは枚挙にいとまがない。そういった壊滅的な事故を予防する働き──端末の年齢制限、あるいは自転車の補助輪のようなものだろうか。能力者の母体が先んじて子の能力を行使する権限。妊娠期間の約一〇ヶ月を通して子の能力に慣れることで、出産時の子の『目が見えないストレス』による暴走を抑制、ならびに出産後、子の辿る問題点を予め精査して、今後に役立てる、手厚い保険めいた設計思想。


 それはこの『システム』を組みこんだ存在の功であり、罪でもあった。それがあったことで生みだされた命があり、それがあったことで『不要』とされた命があった。


『焔花神社』は神の存在を認知しない、または『いる』と認知してもさして重要視しないこの国の住民にとって、古くから児童遺棄地として利用されてきた場所だった。


 能力などという常外が蔓延る以前より、この場所に『神』、あるいはそう名乗るなにがしかが住まうことは周知されており、ゆえに育児を放棄する奴ばらにとっては『神頼み』、神の実在を信奉するなら消極的には育児の嘱託などという考えもあったかもしれないが、置き去りにすることに抵抗が少なかったことが理由に挙げられるだろう。罪悪感が薄れる選択肢を提示されればそれに縋るのが人間というものだ。『神様が拾ってくれたらもうけもの』と。


 十六年前、そうした種類の人間が七組(『組』とは限らないが)存在し、遺棄される予定だった子どもたちは、中林緋視を宿した母親の『未来視』によって、捨てられる前に発見され、由緒正しき古社ふるやしろにして『神』の体を解剖し尽くした実験施設、『焔花神社』に円満に引き取られた。


 それが【検体】と呼称される能力者。


『焔花神社』を出生地とする、ヒノミヤの子どもたちだ」


【検体(番外)八号】石動梅雨は傾けた蘊蓄をそう結んだ。


 ほへー、と感心したような聞き流すような声を洩らした、神の社を実家に持つひとり。火宮ひのみや紫桜しはるは、いまさらながらに質問を投げかけた。


「ってかさ。はなみん。ここになにしにきたのさ?」


「そういえばきみ、なし崩し的についてきたから、俺たちのやること知らないんでしたか」


「訊いたらめっちゃはぐらかしたのキミだけどね。で。どういう集まりなのこれ」


「ん……もう隠しててもアレだし言っちゃってもいいのか……?」


 気になる点は多々あったが(「火宮はなんでこっちに訊くんだ?」)、それをぐっと喉の奥に押し留め、中林は床に転がっている石動雨垂の体を爪先で指して。


「石動先輩の様子、どう思います?」


「見た感じ死んでるね」火宮はきっぱりと言ってから、鏡のように反射する曇りない瞳で、中林の顔を見返した。「はなみん。お行儀わるーい」


「雨垂を足蹴にするな殺すぞ」


 割りこんだ妹の声は純然たる殺意に満ちていて、中林は少し気圧されながら応じる。


梅雨院さみだれいん


「『あめ』と『れいん』をかけてるんだね!」


「軽口を解説するのやめろください……ってか足蹴にしてませんし。でもちょっと調子に乗ったのはたしかなので、それはごめんなさい」


「……本人の意識は一年前から途絶えてるから、かまわないといえばかまわない。わたしが文句をつける立場にないのはわかってる……」


 なにが感情のスイッチを押したのか、不意に沈みこんだ顔は深刻な痛みに満ち満ちていた。溢れかえりそうな感情の余波を受けてだろう、火宮はわなわなと震えて。


「はなみん……泣かせたー!」


「え、情緒がわからないんですけど……恐い……」


「いやいいんだ、火宮紫桜」石動は制止するように腕を上げた。困惑と狼狽のどっちつかずの表情を浮かべる中林の姿はどうやら認識の外にあるらしく、むける視線の先を火宮のみに限定して。「わたしもわたしで、雨垂を、その尊厳を踏みにじっているという点では共通している。もちろん粗雑な扱いをしているつもりは断じてない。ないが、……去年の夏のことだ」


「お。おう」


 助けを求めるように見てくる火宮。『どういう感情ですかそれ』と中林がしらっとした目つきを返せば、『いや絶対ハナシ長くなるやつじゃん』と目だけで逃げだしたい意志を訴えかけてくる。


 中林は『梅雨の指名はきみでしょう』と視線を切った。『裏切り者ぉー!』という思念が届いたような気がしたが、目が合ったわけでもないので気のせいだった。


 石動が話す内容は前もって知っていた。そうして逸らした視線の先では、義母宮が含み笑いをしている。なにか、と硬質な目で見返すと、義母宮は、いえ、と淑やかに首を振って。


「……失礼しました~。仲、いいんですね~」


「俺の一方的な執着ですけどね」


 にべもなく、中林は応えた。ヒノミヤの巫女は少しだけ驚いたように目を丸くしたが、やがてからかうように口の端を曲げて、「男の子ですね~」とよくわからないコメントを述べた。


『…………』


 火宮悠久はなにも言わない。ただ、粛然と微笑むのみだ。理解できていないわけではない、性質上(・・・)、『魔眼(・・)を持つものに(・・・・・・)理解できない(・・・・・・)ものはない(・・・・・)。だから、




 去年の夏のことだった(・・・・・・・・・・)




 ──だからそれは、神前で行う告解だった。






      ☆






 去年の夏のことだ。石動雨垂、……兄に初めての彼女ができた。


 もちろん(・・・・)わたしは戦った。興信所に調査を依頼し、『彼女』の人となり、交友関係、家庭環境、借金の有無、……その他もろもろ、得た情報を精査したところ、望外というべきか、結果は『クロ』だとすべての客観的事実が告げていた。


 彼女は関わり合いになるべき種類の人間ではなかった。少なくとも在学中は距離を取るべきだった。別れなかったらお兄ちゃんとは口きいてやんないと駄々をこねるまでした……あ、いや、わたしが雨垂を『お兄ちゃん』と呼んでいる事実はないが。現実に兄をそんなふうに呼ぶ妹いる……? おまえは呼んでる……そう……わたしも本当は呼んでいる。近々『兄さん』と呼ぶ段取りがあったが、それは雨垂が現在の状況に陥ってからは叶わぬユメとなった。


 兄に諭す……というより叱咤されて、実際に会った彼女は、『見ようによっては』という但し書きがつくものの、あからさまなまでに善人だった。もっとも、顔を合わせて数度『いい人』を演じきれない人間はそれほど数がいないとも思うが……お世辞にもいいとはいえない環境で、前をむく強さがある人物であることはたしかだった。雨垂が好感を抱くのも無理はないと諦められるほどに。


 そう、系統としては中林緋視……せんぱいに似た感じだろうか。友人はろくにおらず、態度は露骨に悪ぶっていて、おまけに家庭に問題があることが周知されている。……ああ、わかるか。傷つきやすくて、傷だらけなのに、恐れを知らず、痛みをものともしない。


 善行は愚行と同義だ。途方もなく愚かに、率先して傷つきにいく。いい人で、強い人だった。いい人で強い人なんだから、兄を選んでくれなくてもいいはずだった。


 付き合って間もない夏休み、兄たちの旅行は決行された。受験で忙しくなる前の、最後の思い出作りという名目だった。急な旅程に、当時小学生だったわたしは同行することが叶わなかった。


 だから知っているのは結果だけだ。


 帰ってきたとき兄は身体機能に影響はないものの、できたばかりの恋人と、片目と、精神とを欠落させた、意志を持たない抜け殻になっていた。


 いまいる石動雨垂は、わたしが『神経』を接続させているあいだのみ思考し、運動し、言葉を話す、『生前』の人格の残骸にすぎない。


 雨垂がせんぱいには『死体』のまま視えているとしたらそういうわけだろう。外見そとみはともかく、中身はどうやら完全に死に絶えているらしい。


 ……取り繕うことにしたのはわたしの独断だ。幸か不幸か、わたしにはそうできる手だてがあった。自分の眼球を空いた眼窩に埋めこむことで、人体を『操作』できるという。……異常な発想? そうかもしれない。わたしが自発的にやったとも考えられないし、気づいたらなっていた(・・・・・・・・・・)というか……自発的ではないからか、利便性には乏しかった。進学先を雨垂の通う高校の近くに選ぶなど、極力離れないよう努めるのは前提として、日中のほとんどすべてを『雨垂を動かす』ことに注力しなければならない。


 初期プランは構築前に破綻と自己診断され、現在実行されているのは第二プランになる。


 いまいる石動雨垂は(・・・・・・・・・)わたしが(・・・・)神経(・・)を接続させている(・・・・・・・・)あいだのみ思考し(・・・・・・・・)運動し(・・・)言葉を話す(・・・・・)、『生前(・・)の人格の残骸である(・・・・・・・・・)。つまり、ある程度の自律行動を成立させているわけだ。


 この『仕掛け』には火宮七草が関わっている。(そこで視線を中林に移す)……せんぱいはさきほど不思議に思っていたはずだ──『なぜこの場に星野ユキと石動雨垂が存在するのか?』と。そして次に『都合がいい』とも。わたしとの『待ち合わせ』に距離はさして関係はないだろうが、目の届く範囲で事態が進行するほうがやりやすかろう。実際そうしたせんぱい側の都合に思い立って、火宮七草とは事前に打ち合わせてあった。『移動には火宮悠久の能力を使うこと』と。だから車をだしたのは火宮悠久と『繋がった』星野サキであり、その妹である星野ユキが同乗するのは不自然な話ではない。同時に友人であるわたしの兄が便乗するのも。それが後出しのようなかたちになってしまったのは悪いとしか言いようがないが、火宮七草が【四号】……いや火宮紫桜を送りこんできたのも思惑があってのことだろうし、ここはあいこと……『七草のあれはミスっぽいですよ』? ……そう。ならわたしも見落としだった。謝罪しよう。そも非があるのはこっちサイドのみで、せんぱいにはないから、あいこでもなかった。


 伝達ミスです。ごめんなさい。


 話を戻そう。(同時に視線を火宮に戻す)


 おまえの『兄』がどんな手を使ったかは知らない。サルベージしたのか、あるいは最初から保管してあったのか……しかし厳然とした事実として、雨垂の『人格』は『生前』のそれをベースとして保持されており、あとはわたしが『接続』するだけで自律思考して動くように設計されていた。一度繋がれば、国外はともかく国内程度の距離なら問題なく動かすことができた。


 記憶については死する直前の記憶──それを除外しての話ではあるが……だから、受け答えに関しては、不自然なところはあまりなかっただろう? 雨垂の妹であるわたしが保証しよう。おまえたちが接した石動雨垂は『生前』の性格そのものであると。


 生体ユニットに搭載された、ヒトと同性能のAIとでもいえようか。それを『生きている』と判断できるかはべつとして、生活するうえではわたしと、おそらくは火宮七草にも、軽い負担が発生する程度で、おおよそ問題はないように思える。


 ただ、きっとおまえにとってはそうではないのだろう。


 火宮紫桜。あらゆる物質を『複製』できる能力者。『人格』をサルベージしたにしても、もともと保管してあったにしても、肉体に紐づいているべきそれを『複製』する必要がある。ヒトひとりぶんの情報量を複写する手立ては『能力』以外にも存在しうるだろうが、より安価で、確実に実行できる手段があれば、それを選ぶに越したことはないと大多数の人間が判断するだろうし、火宮七草もその例に洩れない。


 妹を頼りにしない兄がどこにいる?


 ……なぜ引いたような顔をする。事実を言ったまでだ。兄という上位者に役割を押しつけられる『下の子』という特性はそれなりに気持ちのよいものだ……だからなぜ引いた顔をする。してない? 『わかるよ』? そっか、よかったぁ……。依然と解せない顔をしているせんぱいはきっと脳みそが腐っているのだな。


 ただ、精神というものは観測できるものなのか……? 『複製』するにしても視認できる物質に限定されるものと考えていたが……いや、『観測できる』能力者が身近にいるか。なら併せ技ということ……ふむ、『外部操作機能』とは字面通り他者が自己を操作する機能として設計したつもりだったが、それは決して間違いではないが、頭の中に(・・・・)外部者を住まわせて(・・・・・・・・・)自己を(・・・)他者視点で操作する(・・・・・・・・・)機能でもある(・・・・・・)……合点がいった。灯台下暗しというか、盲点だった……。


『なんのことかわからない』と言うが、おまえたちが課せられた『規定』を自力でひょいひょい外しているのは、本来おかしいという話だ。


 いや、話が逸れた。


『複製』した『人格』を用いるに際して問題なのは、『能力は永続しない』という点だ。


 これが白樺めぐみなら心配はいらない……彼女は『生存』という点では他の追随を許さない性能をしている。『眼』だけになっても記憶の連続性を保って自意識を外部に発信できる者など、きっと彼女以外には存在しないだろう。


 ん? いやおまえらが持ってる端末のことだ。火宮七草が用意したペア端末、二端末間でしか通信はできないし、得られる情報もあくまで白樺めぐみが保持しているものに限定される、と。もっとも、『時間』を司る白樺めぐみが有する情報量は膨大という言葉で片づけられるものではないだろうが……基本的に首都圏でしか使用できず、国外での使用などもってのほか、と厳に注意されたはずだ。あれは火宮七草の洗脳可能範囲が『そこ』までに限定されているため、外側からきた人間には一個の眼球を突つき合っているようにしか見えない……『グロいからやめて』? 端末を新調しているようだから、知っているものと……たんにちょっと不便そうだったから?……やめよう。忘れてください。たしかに白樺めぐみは束縛がキツそうであるし、端末を新規契約したのは正解なのだろう。


 ……『ヒト』のかたちを失ってなお『個』の確信を抱けるものはたとえ能力者でも少数に違いない。その状態で自己と自己が得た情報を切り離すがごとき創作活動を行う者にいたっては、もはや精神構造が異次元の域だ。だから、そんな人間は白樺めぐみ以外に存在しようがない。


 能力者の能力は、その人間が生きているあいだのみ持続する。『次世代』を遺すという生物の保護機構の一種か……個人の意見としては、似通った能力は同時期に存在しているため、能力は個々人を識別する判断基準にはなりえないと思うのだが、そういう仕組みだといわれれば受け入れるしかないだろう。


 だから(・・・)このままでは(・・・・・・)だめなのだ(・・・・・)


 火宮紫桜の活動可能時間は限界に近づいている。肉体を捨てても意識を持続できるというなら問題とはなるまいが、おまえは自分自身を『複製』できないのだろう? そうでなくても、……いや、これは余計な言い分か。わたしに言う資格はない。気になるならいずれ本人か、その兄の口から聞くといい、せんぱい。


『日中のほとんどを充電に費やしているのは知っている』? ……あ、そう。思ったより関係が良好なようでけっこうなことだ。……べつに拗ねてませんけど? 知るにはあっちの(・・・・)家に行かなくてはならないだろうから『ふーん』と思っただけだ……。


 とにかく(咳払いをする)、雨垂の記憶を持続するのに火宮紫桜の能力が使われている以上、限界が訪れるまえに早急にこれをどうにかする必要がある。


 最良は火宮紫桜の体を元通り、あるいは元以上の状態に修復し、なおかつ雨垂も戻してしまうことだが……前者はわたしの手に余る。それにそっちの問題に関してはせんぱいが……『未来視』能力者が動いているのだろう? なら心配するだけ野暮というものだ。


 そして、後者については。


 過去に渡れるのなら、実行可能なプランはすでに建設してある。


 なので、有効活用するので、その『能力』をこちらに一時貸与してもらえないだろうか……火宮悠久。『空間』を司る魔眼継承者よ。






      ☆






『え? 不可能できませんよ?』


 水槽の中の幼児は、きょとんとした顔で、けれどきっぱりと否定した。

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