表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/77

目的地

大学2年の夏。


1年の夏、わずか3-4日だったが完璧にハマった自転車旅。今年は、バージョンアップ。夏休み期間、約40日全て費やして自転車で北へ向かうことにした。実家の静岡県藤枝市をスタート。箱根を越えたところで、ロードバイクライダーと意気投合。一緒に都内まで進んだ。東京では、単身赴任中だった父親のアパートで一泊。


”お金があるとき、時間が無く、時間がないとき、お金がない”


だから今が旅のチャンスだから援助してやると言ってくれた。東京経由で福島、仙台、盛岡、青森・・・。


昨夏と同じウェストバック一つとサンダルスタイル。予定は未定。何も決めず、着の身着のまま、行けるところまで行き、泊まる。正直、最終目的地すら決まってなかった。完璧自由な日々。


途中、日本最北端宗谷岬を目指す人、日本一周している人などに出会った。彼らが行くならと、一緒に進んだ。結局、海を渡り、北海道へ。旅は道連れ世は情け。


福島あたりを一緒に走った人は、目的にはもちろん、事前に全ての旅程を決め、宿も予約。下調べ十分で、宿の値段や食事がバイキングなど条件がよかったので一緒の宿に泊まることにした。安達太良山の麓にあるアサヒビール工場では、工場見学をして最高の美味しいビールを一緒に試飲した。


別の一人は、僕が40日の旅を終えてからも、旅を続け、四国のお遍路を自転車で周り、その後、九州、沖縄などを周り、新潟にも会いに来てくれた。


旅先では、特に自転車やバイクの旅人とは、色々な話をした。


”どこを出発したのか?どこへ行くのか?旅の前は何をしていたのか?旅を終えたらどうするのか?将来は?”


僕らの出会いの時間は限られていた。明日の朝起きたら、お互い違う目的地へ旅立つ。北へ、南へ、東へ、西へ。だから、今、この瞬間が、唯一、お互いの人生と人生が交差している貴重な時間。今この出会いが奇跡であることを体感している者同士だからこそ、初対面ではあるが、すぐ打ち解け、本心を交換した。


皆、自分探しの旅をしていた。


なぜ生きるのか。そこまで漠然としたものの答えを探していたわけではないが、将来どう生きればいいのかの答えは探していた。


楽しかった夏休みの終わりが近づく。帰路は北海道から仙台までフェリー。そこから急ぎ自転車で実家へ戻った。途中、和食店で夕食を食べた。ご主人が言っていた、


”日々の仕事は単調な面が工夫の余地がある”


なぜかこの一言は頭に残った。もし日々が単調だと嘆いているならそれは自分の責任。なぜなら誰かが単調でない日々をプレゼントしてくれるわけがないから。単調だと嘆く前に、自分で身近なことでもいいから変化をつけていくこと。このことが大事。


どこまでもつながっているこの道。地図を見れば当たり前なことだが、自分の足と体を使って漕いだ自転車は、日本の大きさを教えてくれた。全ての道が繋がっていることに大きな感動を覚えた。


自分の人生は自分で作る。誰かが作ってくれるわけでもなければ誰も手伝ってくれないし、また、そんなことを期待してはいけない。受け身に回らず自分から動くこと。動かなければダメ。考えているだけではなく、とりあえず行動をおこす。そうしなければ何も変わらないし何もできない。


人と人との出会いを大切に。この世の中で出会う可能性の低さを考えたら、人との出会いはどうしても大切なものと感じずにはいられない。


1人になること。それは単に孤独との戦いと考えるのではなく、自分のことを見つめ直したり、考えたりする大事なことであり、必要なこと。決して孤独を恐れてはいけない。


人との別れは悲しいけど、別れることは新たな出会いへと導いてくれる。だから変に別れを惜しんではならない。変化するチャンス。


単調な日々を本気で打破したかったら旅に出よう。一人旅に。そうすれば、自分のことについて考えられるし、素晴らしい人に出会えるかもしれない。素晴らしい人生が待っているかもしれない。


少しだけ、生きぬく自信がついた気がした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ