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会社と仕事と

”あの人も毎日来てるな~。一体、何の仕事?”


公園の指定席で僕が勉強していると見たくなくても、僕の真正面だから、公園の反対側にあるベンチに座るその人が、目に入る。彼の指定席はこのベンチ。勝手な想像が膨らむ。


”もしかして、会社クビ?”


”でも家族に言えなくて、居場所がなくて・・・”


春、桜が散ってすぐの頃は、上下しっかり背広に革靴。


”きっと昼休みの休憩なんだろう”


毎日公園には、だいたい10-15人ぐらいは人が来る。その日だけ、たまたま出張か何かでお昼の弁当を食べに来る人もいれば、2週間に1度くらいの近所の幼稚園の散歩、犬の散歩で毎日同じ時間帯に来る人など様々。僕はその中の一人で、週5日、午前9時ごろから16時半ごろまで毎日。だから、なんとなく、色々な人のスケジュールを覚えた。正確には、別に覚えようとしたわけでもないが、同居人の生活パターンが、なんとなく分かってしまうように、なんとなくみんなのリズムに気が付いていた。


だから当然毎日、僕の真正面に座る、その人にも、1週間もしないうちに気が付いた。最初は、他にも沢山来る、公園の一利用者と思っていた。しかし、どこから見ても上下スーツで普通の会社員だったその人は、日に日に服装がラフになった。スーツのジャケットがなくなり、ネクタイがなくなり・・・革靴が長靴になったとき、僕は、自分の予想が的中していることを確信した。


”どんな仕事?やりがいは?目的は、家族のため?それともただ、お金のため?”


その人に対する勝手な質問を投げかける。そういえば、父も僕が高校生の頃、


”会社をクビになった”


と言って、ある日、家に帰ってきた。幸運にも失業してから2週間で、元々勤めていたすぐ近く、距離で言えば半径500m圏内の別の会社に、転職が決まり新しい仕事着で出かけていった。本人は何も言っていなかったが、内心、無職の期間はハラハラしていたに違いない。父自身は


”前よりもいい条件になってよかった”


と言っていた。僕にはどこか、父が、強がっているように見えた。


父は、クビになった会社へ、新卒採用で就職。ごく一般的な会社員として、残業手当や出張手当をあてにしながら、残業や出張ばかりして、一生懸命、10年以上働いていた。僕が小学生の頃から、父は毎晩22時過ぎに帰宅。しかも1か月の3分の2以上は出張で家を空けていた。母は、いつも、僕と2人きり。子どもが嫌いな母は、僕と1対1で接しなければならないその状況に、相当ストレスを感じていたはず。その証拠にいつも、不機嫌。僕は母親の機嫌を毎日とらなければならない。彼女の顔色ばかりうかがい、正直いつも大変だった。


最悪なことに父親と母親は、一緒にいる時間がとても短いにも関わらず、一緒にいればいつも喧嘩。この二人は一体なぜ結婚したのか?不思議でしょうがなかった。むしろ、いつ離婚するんじゃないかとビクビクしていた。とばっちりは僕にも向けられ、


”だから子どもなんていらないっていったでしょ”


なんて心に突き刺さる罵声が、ケンカの度に飛び交う。父は本当に忙しかったんだと思う。会社の為に、家族の為に、僕が小学2年生の頃、新築して引っ越したマイホームのローンの為に、きっと一生懸命だったんだと思う。


そんなある種人生を捧げ働いてきた人をクビにする会社。


”一体全体、この世の中ってどうなっているんだ?仕事って何なんだ?なんのために働くんだ?”


公園のその人を見ながら、僕が高校生の時の、父のリストラについて、ふと思い出していた。


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