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真夏の蒸しかえるような暑さの中、汗を拭いながら7番ホームで電車を待っていた。
この大きな駅を、私はある程度の頻度で利用する。
普段はもっぱら車移動なのだが、電車も嫌いではなかった。
目まぐるしく変わる景色に、何度通っても新しい発見がある。その変化をぼーっと眺めながら見つけたりするのが好きなのだ。
ただ、この7番ホームから乗る電車は別だ。
いつも少し心がざわつく。
「まもなく電車がまいります・・・」
アナウンスが入り、やっとこの暑さから解放されるとホッとしたのも束の間、人で溢れんばかりの車内を見て、軽くため息をついた。
ごった返す車内からドアが開いた途端、人が溢れ出す。半数ほどの人が急ぎ足で車内から出たが、ホームからまた人が入り、またすぐに満員電車となった。
入り口付近に立ち、車窓からの景色をぼーっと眺めた。やっぱり心はざわついていた。
駅を出て直ぐに大きな公園が見える。公園を過ぎると大きな建物が次々に流れていくが、数分もすれば、景色がガラッと変わり、田んぼや畑が一面に広がった。
その見通しの良い景色のおかげで、意識していなくても、あの大きな無機質な四角い建物を、見逃すことはなかった。(意識しないように意識していた・・・が正しい表現かもしれない。)
「・・・もうボヤけた顔しか出てこないや。」
電車の騒音に掻き消されそうな声が無意識にこぼれた。