第1話 復讐の誓い
自分の記憶がない男、荒波 懸星は、懸星を知る男、鎮座 深也に引き取られた。
鎮座は明るい性格だったため、当時3歳だった懸星はすぐに懐いた。
懸星は鎮座を実の父のように親しみ、鎮座は懸星を実の子のように接した。
しかし鎮座は懸星に自分のことを決して「父」とは呼ばせなかった。
全星と由美子のことが頭にあったからだ。
そして懸星が15になった頃、鎮座は全てを話すことにした。
懸星は食卓に座り、鎮座が剥いた林檎をつまんでいた。
鎮座は居間に供えてある、全星と由美子の仏壇に向かって何かを呟き、そして懸星と同じ食卓に座った。
「懸星。今から俺の言うことを驚かずに聞け。」
唐突の発言に、懸星は食べようとしていた林檎を皿に戻した。
「なんですか、鎮座さん。」
「お前、本当に自分のことを思い出せないのか?」
「えぇ、まぁ。でも僕はそこまで気にしてないですよ。」
「両親は。」
鎮座の一言に、一瞬場が凍りついた。
懸星は、全星と由美子の仏壇をチラと見て、そして答えた。
「幼い頃に亡くなってしまったそうなので、覚えてないですね…。」
「知りたくないのか?」
「えぇ。そりゃあーー」
「お前の両親は大統領に殺された。」
一瞬、時が止まった。
「え?」
鎮座はふうっと息を吐いて、そして続けた。
「お前の父、全星は政府の違法薬物を追っていた。それが大統領にばれ、夫婦2人暗殺された。お前はその違法薬物”9SARI”の実験台にされ、記憶を失った。」
「……。」
全てを知った懸星はしばらく黙っていた。
「懸星。お前次第だ。この事実を無視し、静かに生きていくのか、それとも、「荒波全星の息子」として、やるべきことをするのか。好きな方を選べ。」
懸星は沈黙を続けた。
そして、何分か経った後、久しぶりに口を開いた。
「父さんの、息子として。」
無表情を貫こうとしていた鎮座に笑みが溢れた。
「よし。準備しろ。」
「え?」
「スイート・ゾウンという、お前の父さんが率いていた組織がある。そこへ行こう。」
「はい!」
「始まるぜ……俺たちの復讐が。」
鎮座は上を向いて、言った。