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呪い対策

一応前持って説明しますが、私は医者ではありません。

プロではないので、盲信しないでください。

真似する前に、医者へ

前回概要:みんな成長期で、女子は早めに成長し始めて男子にセクハラされる

晶:もう神谷くんのこと知らない!





「ただいま」


「ただいま~」


母上が会社から帰って、神谷んちで時間つぶしてた私を迎える。


そして父上がいないんじゃ料理もできないので、おそらく今日も外食だ。


「ちゃっちゃと着替えてきなさい」


「ん」


部屋に戻って、制服を脱ぎ全裸になる。


無論、胸に巻いたサラシも外した。


それから、タンスから小さいブラジャーを取り出し、体に付ける。


普通女性の下着は、上下お揃いにするものだけれど、私の場合、女性のパンツじゃキツイので、男性用の下着にしている。


一応、トランクスではなく、パンツだし、色もブラジャーに合わせているので、それっぽく見える。


中性的なピンク色Tシャツを取り出し、下には白い女性ズボンを履く。仕上げにロングコートを羽織り、部屋から出る。


「おまたせ」


「オッケー、行きましょうか」


混乱しているかもしれないけど、今の私は家族公認で女装をしている。


ただし小学校卒業までは中性的な格好を貫く。


「学校、大丈夫?」


「ん」


「来年には胸目立つかもしれないわね」


「サラシで縛るので、セーフ」


「夏は大変よ?」


「勘弁…」


私は男なのに、なぜ胸があるのか。


その原因はズバリ、女性ホルモンです。


ご存知の通り、男性には男性ホルモンが多く、女性のは女性ホルモンが多く分泌される。


その女性ホルモンが、おっぱいを大きくしたり、お尻を大きくしたりとしているのである。


男女の骨の形状が違うのも、ホルモンの働きがあってこそ。


つまり、ホルモン療法をすれば、私は少しでも女性に近づくことができるというわけ。


一応女性ホルモンと反男性ホルモンという男性ホルモンを抑止するホルモンを両方飲んでいる。


それも3週飲んで、1週休んでという生理を模擬した飲み方。


おかげて、今はおっぱいが少し大きくなったし、くびれも出てきた。


それが、私が母上からお小遣いを強請った理由。


母上に頼まないのは、ホルモン療法には大きいデメリットがあるから、戸惑ってもらったら困るから。


「これで、凛も茨の道を歩むことになったのね……」


「後悔していない。寧ろ逃げたら後悔する」


「そうね」


ホルモン療法で女性化するのに、最大のデメリットは、


二度と男性として子を成せないこと。


私のようにやると、そもそもホルモン療法を停止してても、二度と勃起できなくなる可能性がある。


つまり、一方通行の道。


それ以外に、寿命が縮むとかいう噂もあった。あくまでも噂だけど


まぁ、それが、私の呪い対策。


呪いで、私の心と体が違う性別になった。


ならば同じくすればいい。


かといって、男を生きる気さらさらない。


つまり、体も女のコになるしかない。


例えまがい物でも、女のコに近づくために努力する。それが私が出した答え


「中学どうするの?男装し続ける?」


「お母さんの努力次第。最善は女子制服を着て登校する。」


「わかったわ。頑張るから。」


それでも、サラシで庇い続けるのは無理だろう。


例え貧乳になってても、体型の誤魔化しは効かない。


だから、私は中学でそのことをばらすと決めた。


それで女子制服も着れて一石二鳥。やったね。


まぁ、それでも戸籍変えるわけでもないから、多分揉めると思うけどね。


「そうそう、さっき見たけれど、神谷くん、凛の様子に何か気づいているわよ」


「本当?」


「本当。凛が他人を観察する能力は本当に低いのね、なんか心配になってきたわ」


神谷か。


無論中学で彼にはバレる。寧ろばらすつもり。


でも、今は……


バラしたら、軽蔑されるだろうか


男なのに、女のまがい物になろうとして。


早かれ遅かれとはいえ、今すぐに決心がつかない。


私は女のコのまがい物になることに決めた。


俗に言うオカマになることに決めた。


蔑称らしいけど、別に間違っていない。


私は所詮紛い物。


軽蔑されても文句は言えない。


でも、神谷に軽蔑されるのは、ちょっぴり


ちょっとだけ、それなりに


キツイかも。


「深く考えないの、ほら、今日は回転寿司よ」


「……ん」


時間はまたある、ゆっくりと考えて……


「あ?」


「え?」


「あらまぁ」


寿司屋で、叡山一家が夕食をとっていた。


詰んだかも。




---------------------------------------------------------



今日は旦那様もお仕事早く終わりそうということで、息子の神谷を連れて外食することにしました。


天下の叡山薬業ですから、本当はこんなに早く仕事が終わらないのだと理解しています。


おそらく、私や神谷に気を使って、たまには家族団欒をと、強引に予定を変更したのでしょう。


そういう微に入り細を穿つを服に着て歩く生き様ですが、一国の主という覇気と豪快さをも合わせ持つのが、旦那様こと叡山えいざん辰巳たつみです


「お袋!あれ食べたい!」


「あらまぁ、お寿司ね。でもちょっと回転寿司はレベルが低いんじゃないかしら」


「えー、この前凛がそこの寿司うめぇって、言ってたぜ」


「まぁ、たまには庶民の食事を体験するのもよかろう。それに希沙子きさこ、大衆食堂でも、星を持つ店並の味を出すこともある。侮らないことだ。」


「すみません、あなた。じゃぁ、そこ行ってみましょうか」


「やりぃ!~」


でも実際の所、どう足掻いても食材と訓練方法の差がありますので、下剋上はほぼありませんけどね


例外と言えばたけしさまくらいでしょうか。大衆食堂からスカウトされ、星のレストランのシェフとなった鬼才は。


「いらっしゃい!お好きな位置にどうぞ~」


給仕さんの元気な声が響く。逆にカウンターの中に忙しそうに寿司を握っている大将は寡黙なイメージですね。


カウンター以外にも、いくつかの席が点在しており、その意味では完全に回転寿司とも言えません。給仕さんも忙しそうです。


大将の手の動き方を観察してみましたが、非常に熟練した包丁さばきです。


これは少し期待できるのではないでしょうか。


「親父!俺ウニ食べたい!そしてイクラ!」


「ならば大将に注文したまえ。希沙子も好きなネタを注文するといい。」


「はい。私は玉子焼きとマグロにします」


「サーモンと燻りサーモンとサーモントロだ。」


「承知」


大将が短く返事をすると、その弟子らしき方がお魚の切り身を取り出し、下準備を始める


そして給仕さんも手馴れた動きで注文を記録し、そのコピーを弟子さんに渡す。


待って五分くらいで、大将は玉子焼きとマグロをこっちに渡す。


見てみれば、弟子さんはサーモン三昧の旦那様の寿司を握っているようです。


「お待ちど、サーモン三昧とウニとイクラです」


注文した品が全て揃った所で、そろそろ頂きましょうか


「「「頂きます」」」


実の所、結婚前の私は結構有名なグルメで、評論家でもあります。


その私が店を見極める方法として、王道のやり方があるのです


ラーメンや回転寿司など直接シェフの動きを見れる方が少ない、


よってどうしても味で勝負となりますが、その時必ず私は“一番シンプルな品”を注文します


シンプルな品にどれだけの工夫が加えられているのか、どれだけ美味しく仕上げられるか


それが一番シェフの顔に繋がると信じているのです


そしてマグロは、好物です。この二種の寿司で、私を満足されられなければ、お話にならないわよ?


「なるほどですね。凛ちゃんが押すだけあります」


「だろ!」


本来の玉子焼きは半熟でなければ不合格です。卵料理は半熟トロトロと相場が決まっております


でも寿司のネタともなると半熟はありえない。


その玉子焼きをどう表現するのか、実のところ非常に難しいことです。


しかしこの玉子焼き寿司は、しっかり熟していても、口に入れるとまるで溶けてしまうような歯ごたえがあります


ほんわりとした甘味も、寿司飯と醤油によく合います。合格点所か、75点くらいあげてもいいですね


満点100点から見て微妙かもしれませんが、それでもかなり高得点です。


実際、私から90点以上取れるシェフこそ、この世に10人いるかどうか。


「お口に合いましたかな、悪魔の舌殿」


大将が作業する手を止めず、語りかけてくる


どうやら気づかれてしまったようですね。そのあだ名はちょっと恥ずかしいですけど。


「マグロは合格点にはちょっと、玉子焼き寿司は大変よい腕前でした。」


「聞こえたか、研鑽しろ」


「は!師匠!」


こんなやり取りを眺めながら、私もそろそろ次の寿司を選ぼうと、カウンターに目をやる


その時、二人のお客さまが入店しました。


ちょっと軽く確認してみたら、これはまぁ、偶然もあるものです


姫路香里さんとその息子であるはずの凛ちゃんが、寒さから逃げるように、店の奥に行こうとしてします。


「あ」


「え?」


「あらまぁ」


「……ふむ」


どうやら神谷も旦那様も気づいたようです。


凛ちゃんはポカンとした顔で、間抜けな声を出し、可愛らしくお目々がパチパチと


その凛ちゃんの様子が変に思えたか、香里さんが私と目が合う


「ま!希沙子じゃない!辰巳さん、神谷くん、今晩わ」


「…こんばんわ」


「あらあら、本当に偶然ですね、香里さん。凛ちゃんも、こんばんわ」


「こんばんわ!凛、おばさん!」


「香里くん、凛くん、こんばんわ。こっちに座るか」


「ええ、凛、行きましょっか」


「……ん」


さて、これは面白…おほん、奇妙な状態になりましたね。


神谷は気づいていないようですが、ちょっと顔が赤くなりましたね。


赤銅色の肌ですからあんまり目立たないけど、今度は日焼け止めも買って上げませんと


旦那様、お気づきでしょうか。


凛ちゃん、女のコなってますよ?




---------------------------------------------------



希沙子が面白いおもちゃでも見つかったような、キラキラした目をしている。


これは気づいているみたいだ。


「……」


当の本人、凛くんは、真っ赤になって俯いている。


聡明な子だ。おそらく自分の秘密が私達にバレたのであろうことに、気づいたのだろう。


神谷が隣で凛くんの肩を抱き寄せてジャレ合っているのも関係あるだろうが。


まったく、私としたことが、息子を放任しすぎただろうか。


叡山の跡継ぎが、落ち着きがなくて如何とする。子供だからと、甘やかしすぎたな。


「凛くん、注文しないかね。」


「……します」


「凛は玉子焼きとマグロとサーモンね?」


「ん」


「大将、いつものお願いします~」


「応」


どうやら常連らしい。


にしても、凛は本当に希沙子とよく似た注文をする。


伊達に悪魔の舌の弟子やってないわけだ。本人はそのつもりはないかもしれんが。


ロングコートを脱ぎ、凛くんの体の線がよくわかる。


神谷は気づいていないが、凛くんのシャツも、ズボンも全部女物だ。


その上、胸あたりそこまで目立たないが、膨らみが見られる。


おそらくブラジャーもしている。腰周りが男性にしてはありえないくらい細く、臀部は女性らしい丸みを帯びている。


本来男物の服ならまだ誤魔化せるものが、女物になるとすぐに体のラインをバラしてくるのだ。


「ウニ食うか?うめぇぞ」


「や」


「好き嫌いしてっと、大きくなれんぞ~見ろ、俺はもう162センチだぜ」


「小さくて結構」


神谷め、叡山の跡継ぎたる男が、観察力が足りぬぞ。今度本気でシゴくか。


そして噂通り、凛くんはこの二年、口数が圧倒的に減ってしまった。


本来は明るく、ムードメーカーとも言えるほどの子供だったはずだが。


つくづく、この二年友人の息子に対する関心が足りないと自覚してしまう。いや、娘か?


希沙子も同じ結論か、ちょっと悲しそうな顔でこっちを見た。


さっきからご婦人二人がコソコソと話しをしている。恐らく凛くんの話題だ。


「……お手洗い」


「ん?いってら~」


凛くんは小さく呟いて、席をたつ。神谷はウニを頬張りながら手を振ってた。


行くか。


少し間を置き、私も席を立ち、トイレへと向かう。


丁度凛くんは女子トイレから出ている頃だ。


凛くんはこっちを確認して、諦めの入った表情で苦笑いする。


今晩、最初を除き、凛くんの表情が始めて変わった瞬間である。


凛くんの隣で手を洗い、彼女が話すのを待つ。


「性同一性障害」


「で、あるか」


一言だけ、それで全てが理解できた。


伊達に薬業やっておらぬ。ほぼ全ての病気、例え精神的な病気でも私は熟知している。


しかし性同一性障害は病気と言えば病気かもしれんが、病気ではないと言う人間も多くいる。


なぜなら、患者の体、もとい性格や行為に異常はないからである。


異常があるとすれば、患者の行為は己の性別と真逆であることくらいだ。


「気づいてどれくらい経つ」


「長い」


「うむ」


やはり。


今の凛くんを見て判ると思うが、実に精神にも異常がきている。


性同一性障害自体は、精神に異常をもたらすことはないが、その二次災害としてうつなど、いろんな精神疾患を患うことがある。


患者の性同一性障害の程度も人それぞれだ。もうそのままでいいやと感じるような軽い感じの人間もいれば、心と体の違いに絶望し自らの命を絶つ人間も決して少なくない。


今粗方観察して、凛くんは結構重い方ではないかと推測している。


元々凛くんは、自分には病的までに厳しく、生真面目すぎるという難しい性格をしている。


その凛くんが、自分の欠陥を、決して許しはしないだろう。


ぶっ倒れるまで、体力作りをして、“自分の体の弱さを許す”と香里くんに数日かけて約束させたくらいだ。


それでもいつも全力を出し、体育教師を悩ませていると聞く。始めてだろうな、教師が生徒にサボれと命令するのは。


「ホルモンを?」


「摂取しています」


「今度私が手配しよう。君はもう少し、他人に頼ることを覚えるべきだ」


「ですが」


「戻るぞ。堂々としたまえ、今の君はどう見ても女性だ。」


「……はい」


この見ていて清々しいほどの危うさ、心配せずにはいられない。


志よ、貴様がその子をほったらかしにするなら、私がいただくぞ?


幸い、神谷もその気あるみたいだ。一人くらい、厄介な娘がいてくれても、それもまた一興。


愚かな友人を思い浮かび、手を隣の少女の頭に乗せる


「あ」


優しく撫でてあげたら、顔を赤らめて別方向へとぷい


それでも、抵抗はしない。


今夜は長そうだ。


これはグルメ小説じゃないはず…

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