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決意と思い

念のため言っておきます、神谷はただ小学生らしく無駄に明るいだけです

前回概要:オレは一応ノーマルだけどな!凛ならホモでもいけるぜ!

凛:それは両刀というのでは?



「ただいま」


一日を終えて、我が家に戻る。


父上はもちろん、母上もまだ戻っていない状態。


いつもは神谷んちの車で神谷んちまで送られて、そこで時間を潰すことになっているが、


今日は特別の用事があると言って、直接家まで送ってもらった。


え?お金持ちのリベンジの座り心地?


リベンジじゃなかったよ、名前はわからんけど、高そうな車だったとだけ言っておこう。


さてと、制服を脱ぎ捨て、私服に着替える。


そしてしたに降りて、冷蔵庫の中を漁る。


ふむ。父上は滅多に夜戻らないとはいえ、食材は色々置いてある。


うちでは母上が料理できないので、うちで食べると必然的に父上にお任せ。


一応、あれでもプロなので、美味しかった。


しかし、これは賞味期限ギリギリじゃない?本当に、あのバカ父上は


切れたやつを処分して、無事な食材を組み立てる。


脳が一瞬で答えを出す、一番今晩に適しているのはチキンカレーだ。


「ふぅ」


人参はないが、じゃがいもはあったので、食べる分は問題なさそう。


むしろ人参食べたくない。


そして肉は鶏肉以外全部アウトなので、もも肉を一口大に切る


小学生になって、腕力も相応に落ちているが、冷静にやればそうは危険がない。


それでも疲れる。体はいつも弱いが、料理するだけで心臓が煩く響いてくる。


鍋にカレールーをいれて、蓋を閉じる。


弱火でゆっくり煮っていけばいいだろう。


その間、お米を研いで炊飯器に入れる。


おれの好みとして、水は少なめ。時間設定は一時間後でいいか。


後はカレーが出来上がるのを待つばかりだ。


……

……


「ただいま~」


母上が仕事から戻った時、丁度カレーがいい感じになった頃


「え?なにこの香り」


そしてその時、おれは小さな椅子に立って、味見している。


うむ。店に出せるほどではないにしても、まずまずな味で口には入れられるだろう。


「ちょっと!凛!何をしているの?!」


「カレーを試食している。」


「あ、そうなの、って危ないじゃない!ガスを使ったら!」


「話は食事後、皿を並べて。」


「え、ええ……もう凛は動いちゃダメだからね!全部後はお母さんが引き受けます!」


「ん」


素直におれが引き下がるのを見て、母上もほっとして、皿を並べる。


「火閉じて、余計なもの入れない。」


「え?もういいの?わかった。入れないわよ、お母さんをなんだと思っているの?」


文句言いながら、母上は配膳を続ける。


「ご飯はこのくらいね。」


「ん」


「よいっしょと。じゃ、頂きましょうか」


「ん」


「こら、そこはいただきます、でしょ!」


「いただきます」


「もう……いただきます」


手を合わせて、おれが黙々とカレーを食べ始めた。


あ、あっついな、ちょっとふーふーしよう。


おれが食べ始めたのを見て、母上が可笑しそうに頭を傾げながら眺めている。


「食べて。終わったら家族会議」


「え、ええ……」


なんか諦めの表情で、母上がスプーンを取った。


「!!おいしい!」


いと口食べると、まるで美食漫画のように、母上が立ち上がった。


オーバーな……


「それは、凛が?お父さんじゃなく?」


「ん」


「そんな……」


実際父上がやると、その程度では終わらない。


本当にありえないくらいに美味しいから、おれと母上の舌が肥えている。


それこそ普通の食堂のご飯を餌としか思えなくなるほど


だから母上はおれが平然と食べているのが不自然で、自分が食べてて美味しいとわかったら驚いた。


おれ達の口に入れて、クレームがなければ、もうそれだけでハクがつく。


ついでにいえば、おれが不合格と判断した店はほどんどすぐに潰れてしまう。


それだけ、おれのカレーが小学四年生の初料理としてありえないのだ。


「始めてのお料理でそこ完成度、凛ってこっちも天才?」


「違う」


食べ終わって、皿も片付けずに、母上がおれに問いかけた。


まぁ、片付けは後でいいでしょう。


「本題。これから言うことは全部真実、約束“わたしは嘘を言わない”」


「!わかったわ。来なさい。」


約束した。一応これは本来中学生の頃に約束するものだけどね。


約束、それはおれと母上を繋ぐ大いなる絆である。


おれ達は、絶対に約束を破らない。その代わり、約束を要求して飲まない場合、無理強いしない。


にも関わらず、前世(仮)ではほぼ全ての約束の要求をおれは飲んだ。


最後まで、破ったのは一回だけ。言わずもがな最期の時だ。


だから、約束の効力は大きい。


そもそも、普通一生嘘つかないなんてありえない。


それこそ、冗談でも嘘に入りかねないのだから。


しかし、おれはそれを理解した上で約束してしまった。


その重みを、母上が感じたのでしょう。


おれは、男の子。でも、わたしの心は、女のコ。」


「え?」


「調べた。それは性同一性障害と言う病気。体と心の違いを持ったまま生き続けては、苦痛。死亡する可能性あり。」


母上はおれの言葉を聞いて、顔を青くした。


おれは死亡する可能性と言ったが、それは別に体に害をなす病気ではない。


母上はすぐにその死亡を意味するとこを理解し、恐る恐る聞いてきた。


「それは、凛の、勘違いである可能性は?」


「0%に近いと判断した」


「なんで?」


「理由は明かせない」


母上は悲しそうに目を閉じ、口を閉ざした。


おれが明確に拒否した以上、無理強いしない、それが“約束”でもある。


「……全て、本当なのね?」


「ん」


「そう」


母上がため息をつき、目尻から涙が溢れ出る。


「何か調子がおかしいと思ったら、すごく悩んでたのね……ごめんなさい、気づいてあげられなくて……」


「謝罪は不要。そもそも隠してたあたしが悪い。」


「ううん、貴方は私の子供、私は貴方を守り、貴方の悩みに気づく義務があるわ。」


「……」


ちょっと泣いた母上に抱きついて慰めようとしたら、逆に背中をぱんぱんと叩いて、慰められた。


それだから、この人には頭上げられない


十分くらいして、母上はもう平静を取り戻し、真剣の顔で聞いてくる


「凛、これからあなたはどうしたい?」


「自分を変わる。」


「……そう。お母さんは何をすればいいの?」


その質問に、少し考えて答えた。


「何も。ただし、お小遣い少し増やしてほしい。」


「わかったわ。」


そう言って母上は穏やかに笑いかける。


いつも通り、ぱっとしない顔。


でも、男前の父上よりも頼れて、強い女の顔である


「今はそれでいいわ、でも、いつかは、頼って来てね?約束“私は、いつも貴女の味方”よ」


「……ん」


やはり、母上には敵わない。


そう思って、皿洗いを母上に押し付けて部屋に戻った。




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「ふぅ……」


皿を洗い終わり、私は一息をつく。


息子、いえ、娘の凛は生まれながら体が非常に弱く、力もない。


小学生の今じゃまだ台所には入れられない。


「おいしかったわね……」


凛のカレー、明らかに始めてのお料理では済まされないような完成度だったわ。


確かにそれといって難しくはないけど、それでも包丁さばきと火入れを要求する品だった。


ルーは市販だからといって、普通の小学生では一人でできる料理ではない。


野菜、特にじゃがいもの大きさはほぼ全て同じで、生真面目で誰よりも自分に厳しい凛の風格が出ている。


火入れの妙もじゃがいもの柔らかい歯ごたえに十分体現してしまっている。


少なくとも一年くらい料理の経験がないと、いくら運動以外の天才の凛でも、このレベルはありえない。


確かにお父さんなど、ランクの高いプロの作品と比べられると、拙さが目立ち


まったく手を加えていないところも、プロとしては減点でしょう。


それでも、普通の店にも出せるほどのカレーだった。


「私は、全然凛のこと知らなかったのね……」


そう、それはメッセージ。


あの子は頭いい、そして絶対に無駄なことしない。


どこかで練習していたとして、ここで披露するのは、メッセージほかならない


母さんは私のこと何も知らないと


カレーと言う名のパンチで、力ずくで分からせてくれたのだ。


自分の性同一性障害の信ぴょう性を上げるために。


「凛、貴女も、私のこと全く知らないわよ」


でも、そんなことしなくだって、私は凛を信じてた。


たった一人、お腹から生まれた子供だもの。


表情だけで、嘘をついてないってわかるし、その瞳の中の決意の重さが判る。


そして、また、凛は私を信じきっていないことが


「母親失格ね。あの人も大概だけど……」


もっと、愛情を与えましょう。


何故か固く閉じた扉を融かすために。

書いてみて分かりましたが、凛も、私もなんかツンデレみたいです

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