「神谷」大切なあいつ
ちょっぴりエグい描写あります
一応私は自殺も自傷行為もしてません。推奨もしません。
そこはほら、我慢しました。
前回概要:幼馴染出た。初恋がこんなバカとか、私ないわ…
オレの名は叡山神谷。
一応叡山薬業は全国で有名で、オレも上流社会ってことだ。
卒業式が終わり、オレの高校生活も幕を下ろした。
「神谷くん。凛くん見た?」
「いや、気づいてたらいなかった。」
「そう…」
凛はオレの幼馴染だ。
隣の晶とは小学生からだが、凛は幼稚園からだ。
聡明で、明るい凛がいつかオレの隣に立って、オレを支えてくれると思ってた。
小学の頃ではトラブルを起こす度、やつがオレをバカンと怒りながら尻拭いをしてくれた
悪いことしようとするたび、やつがオレをバカンと叱って止めてくれた
掛け替えのない親友。
そもそもあん時からやつは女顔だったので、正直嫁もらうなら凛かなとまで思ってた
でも中学に入って、凛は変わった。
俺と晶は同じクラスで、凛だけは外れたが、まぁ、凛ならうまくやれるだろうと高をくくってた。
でも日に日に、凛の顔から笑顔が消えて行き、
なにがあったと聞いてても平気としか返ってこない
そして俺たちが悩んでるうちに、凛はついに心を完全に閉ざした。
後から聞いた話だと、凛は女顔だから、不良生徒にいじめられたらしい。
なんで頼ってくれなかったと聞いてたら、無表情で首を傾げて見つめ返してくる。
それは凛の“何を言っているのか理解できない”という仕草である。
おばさんにも心配と教えてたものの、結局高校まで凛の表情は取り戻せなかった。
そのまま高校に進学。一応かなりの難関校なはずだが、凛は軽い気持ちでオレより高い成績を叩き出して入学を決めた。
宿題を一度も出したことなく、ノートも取らず、単に虚ろな瞳で先生を見つめてるだけなのに、本当にドンでもない天才だ。
高校でも運が悪く同じクラスになれず、でも晶が凛と同じクラスにいるのが幸いだった。
二人でどうにか凛を助けられないかと、ちょくちょく情報交換したり、一緒に図書室で心理学の勉強したりした。
でも、なぜか凛の雰囲気が以前より危うくなった。
晶に原因を聞いても、泣きそうな顔でわからないと言う。
かなり悩んだ。
オレは叡山の長男。叡山を継ぐ者。
でもオレはよりによって男に恋した。
凛は大学にはいかないという。進路相談にはニートになると書いてあった。
もう時間はない。高校卒業したら、もう二度と凛と話す機会がない。
「もう帰ったかも。」
「そうか。くそ、携帯くらい持てって話だ。」
「どうする、もうすこし探す?」
「……晶はもう帰っていいぞ。オレはもう少し探してから帰る。」
「そう…」
晶は悲しそうに俯き、ボソと何を呟いた。
聞き取れなかったが、そのまま晶が猛然とダッシュして逃げるように校門を出た。
後で携帯で聞こう。
オレが凛を探しているのは、告白するためだ。
今の凛はいつ崩れ落ちてもおかしくない感じで、もう外面のことを気にしてる場合じゃないと思った。
ホモで結構。一応オレは巨乳好きだが、凛ならホモでもいい。
オレが、守ってやらねば。
そう思って校庭の裏も回ってみる。
急に屋上が気になって頭を上げる。
生徒が、フェンスの上に座って、下を見下ろしている。
危険だろ!誰だ!
声を上げるべきか?万が一驚いて落ちたらシャレにならんぞ!
と悩んでいたら、
本当に落ちた。
反応する暇もなく、呆然としている俺の十メートル先に着地した。
グチャと、非常に不快な音がした。
「おい……」
見覚えのある髪だ。
見覚えのある手袋だ。
恐る恐ると近づき、手を取った。
顔は潰れてる、今更見る勇気がない。
でも、と、オレはその手袋を取った。
白磁のような肌に、狂気に染まったような傷。
オレはおばさんから聞いている。あいつは、自分が痛みを耐え切れない時、自分を傷つけて痛みを軽減すると。
その手袋は、もう自分を傷つけんのをやめろとのメッセージと共に、手の傷を隠せるようにとプレゼントしたものだ。
何が「自殺はしないよ」だ。
約束、破らないんじゃなかったのかよ……
すぐ後に、オレの慟哭を聞きつけた教師が、青い顔で救急車と警察を読んだ。
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オレの名は叡山神谷。
運動万能、頭もいい方で、一応成績は学年前三にはいつも入っている。
そんなオレに、幼稚園からの付き合いが一人。
姫路凛
男の名前にしてはなんか女のコっぽいと思ってたら、
本人もその通りだったりする。
体が弱く、体育はいつもビリだけど、成績は当然のようにいつも満点。
性格も明るく、こっそり皆でアイドル扱いしている。
頭無駄にいいのに、そこんとこ他人の感情とかに疎いのが逆に可愛く思われる。
その本人も可愛いものが好きで、前まではおままごとも好きだった。
今は女のコっぽいと言われたから、きっぱりやめて、おままごと嫌いだよ、したことないよと誤魔化そうとする。
そんなところも可愛いが、なんか今日様子が変だ。
まるで感情が抜けたかのように、口数が減って、笑ってもくれない。
心配してやったら、バカン呼ばわりされた。
酷い奴だ。
冗談言うくらいの元気があるのはいいことだが、今の凛はまるで
“死んでいる”かのような感じがする。
そんな時はとにかく構ってやると決めて、オレは飽きずに凛んとこに遊びに行った。
「おい、凛。そろそろ体育行こうぜ!」
ギリギリまで待ってやったが、流石にサボるわけにも行かない。
凛はおばさんには“授業をサボらない”“約束は絶対に守る”と、二つ約束してたからな。
……あれ?いつそんな約束してたっけ。
まぁ、いいや。
と、思ってたら
「いこ」
いきなり手引かれた。
なぜか柄にもなくドキッとしてしまう。
「バカン」
そして、何故か懐かしそうな呼び名に、ついニヤりとしてしまう。
我に返ると、いつものお返しをしてやった
「バカン言うな!!神谷だ!」
そこの凛は、少しだけ、生気が戻ったような、柔らかな笑みを浮かべている。