第二週末 〜やる気漲る体育祭・後編〜
昨日は急遽、ツイッターと活動報告で連絡させて頂きましたが、更新が出来ずに申し訳ございませんでした!汗
「いっけえーっ!」
黄組の応援席から、一際目立って聞こえる加奈子の声。
対戦のスタートを示す空砲が鳴り響くと、それを皮切りに選手達が一斉に飛び出した。
互いが激しくぶつかり合い、両者は全く一歩も引く様子がない。
「くそ! 誰か前に出ろよ!」
「そんなこと言ったって!」
「ちょっ! こっちに来んな!」
「だああああ! 下ろせ勇者!!!!」
なんて、敵組の男子達が一人の男によって前線を制圧されている中、敵陣の防衛組から一人の長身の男が飛び出した。
「「「「きゃあ~! 慎之介くぅ~ん!!」」」」
その飛び出した男へ向けて、黄色い声援を送っている他クラスの女子達。
しかし、それを受けても表情を眉一つ動かさないのが慎之介。
むしろその声達を綺麗に一掃するかの如く、慎之介は敵陣で棒を支えていた他クラス男子達を足場にして跳び上がる。
そのまま敵陣にそびえ立つ棒を、自身の長い両腕で捕らえたかと思うと、重力と腕力を使ってあっという間に棒を倒してしまった。
「ナイス慎之介!」
丁度そこへ追い付いた健太が、颯爽と地面に着地した慎之介へ向かって声を掛ける。
そのまま、体勢が崩れて殆ど倒れていた棒の先端まで走っていった健太。
「もーらい!」
なんて声を上げながらポンッと跳ねると、棒の先端に付いていた敵陣の誇りでもある白い旗を手に取った。
「両者、そこまでぇー!」
健太が旗を頭上に突き出すと、審判の声と同時に鳴り響いた終了合図の笛の音。
それと同時に、勇者と同じ黄組の女子達が盛り上がる。
「うむ。やはりケンタは、姫の第一候補として、十分の素質があるな」
なんて言葉を落とした、初戦は防衛組だった勇者。
反対側の敵陣で、嬉しそうに慎之介へ話し掛けながら戻ってくる健太を、誇らしげに見つめている。
まるで、慎之介の活躍は一切無かったかのような態度。
すると、大きく頷きながら一人納得している勇者へ、白組の相手が声を掛けた。
「それよりも勇者君。そのー……、俺たちを下ろしてくれないかな?」
敵軍の突撃隊であった、白組の男子達。
結局白組は、防衛組であった勇者一人の手によって、誰も黄組の陣地まで辿り着ける者がいなかった。
「ああ、そうだな。すまない」
そう言って素直に謝罪をした勇者は、両腕にそれぞれ担いでいた敵軍の男子達を、そっと地面へ下ろしていく。
苦笑いをしながら下ろされた敵組の男子達に「良い、戦いぶりであったぞ」と労いの言葉を掛けた勇者。
すると、アナウンスで「白組と黄組は、後半戦の準備をして下さい。繰り返します。後半戦の準備を、お願いします。」と、二戦目を知らせる合図が流れた。
「いよいよ、出番だな」
なんて言葉を落としながら、肩を回して勇者は一歩ずつ前へと歩いていく。
丁度そこへ、前半戦で活躍した二人が勇者のそばまでやってきた。
「今度は勇者が突撃隊だな! 頑張れよー!」
そう言って軽く勇者の肩を叩いた健太と、それを受けて大きく頷き返事をした勇者。
「ああ! 見事降伏、させてやろう」
健太からの笑顔という激励をもらった勇者は、やる気も十分漲っている様子。
突撃隊のスタートする白線まで辿り着き、鼻息を大きく一回噴射した。
するとそこへ、応援席から加奈子の声が勇者の元に届く。
「勇者君―っ! ちょっと、こっち見てーっ!!」
なんて叫んでいる加奈子。
思えば加奈子は、初戦の直前まで一際大きな声を響かせて応援してくれていたが、試合が始まってから全然声が聞こえていなかった。
それを思い出して勇者は、何気なく声へと釣られるように黄組の応援席へ目を向ける。
「……なッ!! シズハさんッ!!!!」
一瞬の時を止めた後、まさに絵に描いたような、目玉がビョーンと飛び出たような驚き顔で叫んだ勇者。
それもその筈。
黄組の応援席では各学年の女子達数人が、普段の制服より更に短いスカートを身に纏い、フワフワしている何かを両手に持ちつつ手を振っていた。
「黄組伝統っ! 美人女子達による、チアガール応援団だよーっ!」
そう言って加奈子は、今にも泡を吹き出しそうな勇者へ向かって、更に言葉を浴びせる。
「静葉の生足っ! 特別大サービスぅーっ! イェイっ!!」
なんて叫んだ加奈子は、応援席にある椅子の背もたれ使ってどうにか足を隠そうとしている静葉を、強引に引っ張り出す。
すると、案の定「えっ! 恥ずかしいから~!」と、顔を真っ赤にしながら加奈子へ詰め寄っていく静葉。
しかし加奈子は、それをあっけらかんと笑いながら、軽く受け流している様子。
「お待たせ致しました。いよいよ、白組と黄組による、後半戦が始まります」
そこへ丁度流れたアナウンスの声。
まさかのサプライズに鼻の下がヒクヒク伸び縮みしていた勇者も、それを受けてハッと我へと返る。
気合いを入れる為に、両手を使って頬を数回叩いて精神を入れ替える。
そのまま一瞬にして、闘志へ火を燃やした勇者。
「全ては、勝利の為にッ!!!!」
そう言って拳を掲げ、仲間にも闘魂すると一気に始まりの合図へと集中する。
「……ちょ! 勇者、鼻血はなぢー!」
なんて、隣にいたクラスメイトが叫んだがもう遅い。
試合を開始する空砲が鳴り響いたと同時に、鼻血だらだらの勇者は、満面の笑みを浮かべながら誰よりも早く駆け出した。
前回の予告『明後日』ではなく、正確には『明日』でしたよね。汗
紛らわしい間違いをしてしまい、すみませんでした。
次の更新は、3月25日(土)0時〜1時の間ですので、よろしくお願い致します!