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勇者は楽しく高校生!  作者: 井吹 雫
二年生・一〇月
4/72

第二週末 〜やる気漲る体育祭・前編〜


「やばい! やばいやばいヤバいヤバイッ!」


 観戦者の声が沸き上がっている中心地。

 砂埃が舞っている中、情熱の象徴でもある赤色をハチマキとして、頭部に巻き付け戦っている戦士達。

 そんな中、突撃隊として前線へ出ていた同志が、血相を変えながら全速力で戻ってくる。


「逃げろ! 全滅するぞ!!!!」


 なんて叫んだ同志が、次の瞬間にはやられてしまった。


「なっ……なんなんだよ」


 あっけなく崩れ落ちていく仲間達を目の当たりにした、一人の男。

 どうすることも出来ずに、ただただ本音が溢れてしまう。


「なんでそんな、目がガチなんだよぉぉぉぉおお!!」


 そう言って、騎馬と共に背を向けてしまったこのチームの大将。

 もちろんそれを、迫り来る勇者が見逃す筈はなかった。


「敵に背を向けるとは愚か者。そんな腑抜け……葬ってやる!」


 きっと、殆どの騎馬隊を一人で制圧してしまったのだろう。

 勇者は一呼吸入れて集中すると、掛け声と共に両手をめいいっぱい広げて、自身が跨がっているクラスメイト達に合図を送った。


「いざッ!!」


 そう叫んで目を見開く勇者と、合わせるかのように動き出した、人の腕によるなんとも遅い人工騎馬隊。


「ぬぅぅぅぅぁぁぁぁああああああ〜ッ!!!!」


 そんな人工騎馬隊のスピードと、それに合わせるかのような、ぬるりとした叫び声。

 しかしその叫びが、逆に敵達への恐怖を倍増させてしまう。


「たかが騎馬戦だろぉぉぉぉおおッ!!!!」


 なんて、敵の大将が叫んだがもう遅い。

 大将の頭部に巻かれていた一際赤く長いハチマキは、追い着いた勇者の手によって、見事に背中から狩られてしまった。




・・・・・・




「あははははっ! もう本当にっ、勇者君ってば最高っ!」


 つい先程までグラウンドで繰り広げられていた騎馬戦。

 その種目に出場していた男子達が、一仕事を終えたように続々と戻ってくる。

 そんな中、加奈子は一人ホクホクな笑顔を浮かべて戻ってきた勇者を見つけると、大笑いをしながら近付いた。


「ああ、カナコか。カナコの言う通り、此度の闘いは素晴らしい活躍だったと、我ながら思っている」


 そう言って勇者は、近付いてきた加奈子へ返事をすると、満足そうに騎馬戦の余韻へと浸る。

 一方、そんな勇者達の横を、完璧に戦意喪失してしまった赤組男子達が肩を落として通り過ぎているのが視界に入った加奈子。

 そのまま赤組男子全員が通り過ぎるのを確認してから、ケラケラとした声で再び笑った。


「うんうん! そんな勇者君のブレないところっ、好きだよっ!」


 なんて、あっけらかんと笑いながら加奈子は勇者の肩を軽く叩く。

 すると丁度、そんな二人の元へ慎之介と共に歩いてきた健太がやってきた。

 勇者と加奈子の姿を見て、そのまま足を止めた健太。


「お疲れ勇者―! マジ、最初はどうなるかと思ったけどな! 勇者を上に変更して、正解だったわ!」


 なんて笑いながら話し出す健太と、体操着の袖を捲り上げたまま無表情で行ってしまった慎之介。

 しかし健太は、そんな慎之介の様子には慣れているのか「お昼先に食べててなー!」なんて声を投げかけると、再び二人へと言葉を発する。


「勇者が騎馬戦をやった事がないって言うからさ! 本番前に、ちょっと練習をしたんだよ。そしたら勇者の騎馬に付いていける奴が、誰もいねーんだもん」


 そう言って、健太は楽しそうに思い出し笑いをする。


「勇者を騎馬の先頭にさせたら、そのまま後ろ二人をほっといて、一人突っ走っていっちゃうし。何度上に乗ってた俺が、落とされた事か!」


 文字だけで捉えるとただの文句とも取れる内容だが、それを口にしている健太からは、嫌味が一つも感じられない。

 そんな健太を受けて、加奈子も楽しそうに笑う。

 一方の勇者は、そんな二人の笑顔を見て心の中が更にホクホクした。


「それじゃ。俺はちょっとクラス委員の係があるから、行ってくるわー!」


 健太と加奈子が楽しそうに笑っている原因が、まさか自分のポイントがズレている天然のせいだとは微塵も思っていない勇者。

 軽く伸びをしながら発した健太の言葉を受けて「むっ、大変だなケンタは」と、労いの言葉を掛けた。


「まあなー! まっ、好きでやっているし!」


 そんな勇者の言葉を受けて、笑顔で答えた健太。

 それから健太は、そのまま本部があるテントへと向かって走り出す。

 すると、少し離れた所で健太が振り返り、そして勇者へ向かって一言叫んだ。


「そうだ! 午後は棒倒しがあるから、ちゃんと昼飯を食べておけよー!」


 自身の忙しさより、健太は勇者の事を気に掛けてくれる。

 そんな健太の優しさを受けて、勇者も笑って手を挙げ、返事を返した。


「そっか、午後ねーっ!」


 一方、勇者と健太のやりとりを見ていた加奈子が、何かを思い出したかようにニヤニヤし始める。


「勇者君っ! 午後はきっと、萌えると思うよっ」


 なんて言って、勇者を肘でぐいぐいと突く加奈子。


「ああ。勝負事は、いつ如何なる時も、燃えるからな」


 そして、加奈子の言っている『萌える』を『燃える』と勘違いした勇者。

 二人は笑顔で頷きあうと、昼食を済ませる為に、それぞれの思いを馳せながら一旦教室へと帰っていった。



こっちの小説も、前作と同様に毎日更新としようか、はたまた今度は二日間隔での更新としようか検討中です。


ですので検討中の間は、暫く次の更新日を各ページの最後でお伝えしていきたいと思います。


また確定したら改めてお伝えしたいと思いますが、ご理解の程よろしくお願い致します。


という訳で!汗

次の更新日は、明後日3月22日(水)の0時〜1時の間となりますので、よろしくお願い致します!

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