神は言っている
その日は日差しがギンギンと照りつけていて外で動くだけで汗ばむような日だった。じいちゃんと一緒に山の中の川で水浴びをしていた。と言ってもじいちゃんは陸の上で俺のことを見守っていて俺が1人で遊んでいただけだが。……数十分後だろうか、上流から犬と猫がおぼれてきた。あれは黒の毛が多いビーグルと白い毛が多いアメリカンショートヘアだったか?当時小学生だったころの俺では筋力や大きさ的に1匹だけなら助けることができた。そこで俺は。
「歩!」
体を水に浮かべ腕に猫を抱き犬を腹で受け止め、岩で体をせき止めた。正直せき止めた時に、背中に相当強い衝撃が来た。その後にじいちゃんに助けてもらい犬と猫は助かった。俺は背中を強打したのでその後医者にみてもらったが特に怪我はなかった。その後犬と猫の飼い主の家族はじいちゃんの方にお礼をしていたらしい。……俺に面と向かってのお礼は無かった。というか、俺が助けたのを見た時、軽く引きつった顔をしていたのを覚えてはいる。
「……歩、お前、いいことをしたな」
じいちゃんが病院の帰り道、俺を乗せたじいちゃんの愛車である軽トラに乗りながらぼーっとする俺に話しかける。
「でも、なんであんなことをした?」
「……だって、苦しそうだったんだ、犬と、猫が……」
「……お前は本当に優しい。強い子だ。でもな」
じいちゃんはコツンと俺の頭をこづく。
「自分を大事にしろ。それが一番だ。あんな無茶、2度とするな」
じいちゃんの顔はとても悲しそうな顔だった。
「なんでそんな悲しそうなの?」
「……お前は大事な家族だからだよ」
……また、昔のじいちゃんの夢を見た。自分を大事にしろ、か……。そんなじいちゃんの最期が、ああなるなんて、な。……まぁ、じいちゃんの分まで生き続けるって、決めたはずなのにな。まぁ、俺もじいちゃんと同じく、俺みたいな奴のかわりにまともな人をたすけられたんなら、幾ばくか救われた、かもね……。
にしても死後にも意識とか記憶があるのか……。三途の川かね?目の前が真っ暗だけども……。
……んー?声が聞こえる……?
小さきものよ……
助けた、といったか
……ばかばかしい
……いや、そんな言い方はねーだろーよ。
愚かな小さきものよ
私が生物に与えた「生きる」権利を放棄した物が
なにを偉そうに
……偉そうに、か。
生き物に優劣などない
皆、等しいだけのもの
貴様の死と引き替えに生き残った「個体」は運命より、因果より死を迎えるはずだったもの
貴様がそれをどうこうしたなど考えるなど、愚かなのだ
……。
……貴様の個体を今閲覧した
両親にも受け入れられず
他人に拒絶され
そして最後まで愛してくれた祖父も消えた
そして今貴様はその自らをたかだが失う
もう残ってるものなどないだろう
……まーそうだな。……んで?だから?
……
……俺の起こしたことだ。俺が死んだ。そうか。でも、それは俺が招いた結果だろ?いいぜ。受け入れる。消えようが消えまいが、その心はかわんねーよ。別にそこに悲しみも悔いがない、わけではないけど。俺が解決しようとしても、だめだった。それが事実。受け入れるさ。腹なんてとっくにくくってあるさ。
……
ま、どうせ消えるんだ。ちゃっと消して他のとこいけよ。神様?さん。
……
……ふふふ」
「あっはははははは!」
どんどん聴覚がクリアになってくる。そして笑い声が耳に響いてうるさい。
「いやー。残念。イタイイタイ心の内を出してくれてありがとう。どうでもいいけどね」
……なんかすげーフランクな感じになったぞ。てか痛い言うな。どーせきえるんだ自己満足くらいいーだろ!
「うんまぁ。いいんじゃない?本心は分かったよ。ま、君は、消えないんだけど」
……は?
「いやねー?君、そこまでかわいくもねー歩きスマホOLさん助けたじゃん?あれ、僕が管理をサボってた時におこっちゃってさー。すっげーヤバイことがおきたんよー。ぼくの仕事にさー。んでんで、収拾はいまつけたんだけど……。君の問題が残ったのよ?」
うん、よくはわからんが、そうなんですね。
「んでさ。めんどくっっっさいけどさ。君はまだ生きてもらわないといけないんだよ!んで、戻りたいー!って泣き叫べばしかたねーけど戻したんだけどいたーい発言聞くとなんか別に戻らなくてもよさそうやん?だったらこっちの楽なほーで済ませていいかなーって?」
……あんただんだん適当になってるな。にしても、生き返る、ね……。……まぁもどりたいはもどりたいが……そこまで未練はないね。あんたの監督不届きってとこは気になるが、まぁ任せるよ。また人生謳歌できるんだろ?
「人生謳歌してたか?いやまー話がはやくてたすかる。ま、ぶっちゃけると、ちょっと流行の異世界へーごー!みたいな?」
……おい、そんな簡単にいいのか……。不祥事の対応がそれで……?
「えー?そんなの一度おきたことをなかったことにして、その後辻褄あわせるのよりよっぽどましだよー?常に変動するモノにまた元通りに組み込むより、新しく付け加える方が楽だって」
……そうですか。まぁその例え通りならそっちのが楽か。世界の管理なんて専門外に口出す物じゃないな。
「えーなんでそんな反応薄いのー?うれしくないの?異世界だよ?胸が躍らない?憧れない?」
……まぁ、5体満足で生活できればいいですよ。
「ぶー……欲というか……張り合いがないなぁー……。まぁ、君の人生じゃそんな夢も見れなかったかな?でももうちょっと何がほしい!とかいっちゃえよー」
……早く一般人として転生させてください。
「えぇぇぇぇー?つまんないじゃーんそれー」
人の人生つもるるもらないで話すなよおい。お前の不祥事だろ。
「……てか、そんな風に生の執着が薄いから、死んだんじゃないのー?」
……。
「まぁーあなたいろいろとおもしろそうだし勝手になんか起きそうだから、適当にいい能力与えてしんぜよう!」
神様のあんたがいうと洒落にならんから。やっかいごと払いはできんのか。
「できないと思うよ、てか嫌だ」
なんでだ!めんどくさいこいつ!
「さーて歩くんの能力はどんなのがいいかなーまっようなー」
……俺、異世界にいくみたいだけど大丈夫ですかね……相手が神で。
「あ、あゆむん、って呼んでいい?」
なんでそんな馴れ馴れしいんだこいつ。