プロローグ 2 裏
「んん……」
目が覚める。たしか……授業中に突然襲っできた光。そのせいで目がくらんでそのまま意識を失った。そして、ここは……?体を起こしてやっとクリアになった視界には……何もなかった。夢の中で真白な世界の中にいた、と言った具合に白。しかし、夢ではなく意識がはっきりしている自分にとってはとても恐ろしかった。異様だ。慌てて周りを見るとクラスの奴ら35人全員がいる。何人かは俺と同じように目を覚ましはじめたみたいだ……。
「……美紗!」
俺は近くにいた寝ている彼女を見つけ揺り起こす。くぐもった声を出しながら美紗が反応する。
「……ん?なに?俊介?」
……見た感じは特にこれといった被害はなさそうだ。
「おい、大丈夫か?どこかいたくないか?」
「……大丈夫……んん?ここどこ?」
彼女はまだ周りを把握してないようだがやはり無事のようだ。よかった。
「さぁ……?俺もわからない。今起きたばかりだしな」
「うぅ……何コレ、なんか真っ白すぎて逆に不気味……」
改めて周りを見渡す。どこまでも白が広がる空間。なんか不快感を感じる。
なんだよこれ、どうなってるの、など周りも異常さに気づいて騒ぎはじめた。
そのときだった
―「静まれ」
たった一声で俺達は静まり返った。
―よし、それでよい。お前達がいまここにいるのは、お前達は選ばれた人間だからだ
「え、選ばれた?誰に?何に?」
クラスの眼鏡をかけた岡部がいった。……なんかあいつすげー顔にやけてるんだけど。きもい。
―……お前らにとって無駄だろうが、まぁ、神、とでも名乗っておくか
「……神?」
……なんだこれ。夢でも見てるのか?こんなの、おかしいだろ。俺は伊織の手を強く握る。すると彼女も握り返してくれる。そのぬくもりが俺を奮い立たせてくれる。彼女は守らねば。
―……話を戻すがお前らはこれからとある世界に送り込まれる。
「えぇ!?なんで!?」
「いやよ!帰らせてよ!」
とクラスメイトが騒ぎはじめた。にしても俺、やけに冷静だ……。いや起きてることを理解してないせいかもな。
―もう決まったことだ。安心しろ。あちらの世界ではお前らは最初からいないことになっている。
「え?どういうこと?お母さんにあえないの?」
「嘘だろ!ふざけんな!」
そしてさっきよりもクラスメイトが文句をいう。俺だっていやだ。俺も何か文句を言おう。いいから、かえ
―……だまれ。聞こえなかったか。
その一声でまたみんなは静かになった。いいから帰せ、と声を出そうとしたはずだが、なぜか口が開かない。まるで何か拘束具をはめられているみたいだ。そしていつのまにか美紗と手が離れていた。またつかもうとする……が、腕さえ動かせない。あっちも同じ事を思っているのか困惑した表情をしている。
―よろしい。話を戻すがお前らには別世界にいってもらう。
「……いきなり別世界といっても、どんな世界ですか?」
と、また岡部がしゃべる。やけにしゃべるな……。いつも静かにオタクグループでしかしゃべってないのに。お前そんなしゃべるキャラじゃねーだろ。
―……それはお前らがあちらにいけばわかる。
「えぇ?そんな、勝手に呼び出されたのに殺生な!ただの一般人がなにも無しに他の世界にいけだなんて、死ねといってるようなものではないですか!」
ほんと今日はよくしゃべるな岡部。
―……お前達には一人一つ、能力を与える。すでにお前らのなかにはある。あちらで確認をしろ。
能力……?なんだそれ。ゲーム?RPGの世界か?一部は俺と同じように困惑し、一部は顔をにやけはじめ、また一部は深く考え込んでいる。にやけてるやつはあほか。考え込んでる奴はなんだ。受け入れたのか!?拉致とかわんねーんだぞこれ!……でもわけわかんねー声の主がなんなのかわからなくて不気味すぎてなにもいえん……。
「……それで、私たちは、いってなにをすればいいんですか?どうしたら帰れるんですか?」
とクラス委員長の香苗さんがいった。……彼女はこんな状況でも落ち着いているのか。凄いなやっぱり。
「ねぇ、康平、なんなのこれ。わけわかんないよ。どうすれば帰れるの?」
「……まずは話を聞くしかない。大丈夫、俺が守るさ」
「……うん、わかった」
……向こうで伊織と篠田さんが話をしながら抱き合っている。くそ、俺は美紗の手も握れないのに……!
―好きにしろ。それが答えだ。理由は私にも知らん。あとどうあがこうと帰れないだろうな。さて、そろそろ別世界にいく時間だ。
「え、そんないきなりなん」
―……ああ、それと、行き先はある程度固まってではあるがばらばらに送られることになる。さらばだ。選ばれしものども。
岡部が大声を上げるがすぐにかき消されてしまう。というか、バラバラになるだって!?
「なんだよ……そ……れ……美紗……!」
ずっと手を動かそうとするがやはり動かない。動け……動けよ……!
しかし、俺の願いは届かず意識が薄れていく。
こうしてあるものはこれから起こることに不安を抱き、またあるものは期待を膨らませながら異世界にいくことになった。そしてそれが、地獄のような、いや地獄そのものの始まりだった。