プロローグ 2
昼休みになった。……やっぱりあまりお金がかからない学校を選んだのもあって、授業が簡単だ。まぁ、ぶっちゃけると暇なわけだ。いつもなら聞いてるフリして自分で勉強を進めるのだが、今日は頭痛がひどかったので少し意識が飛んでいた時が多かった気がする……。俺は嫌われすぎて空気扱いされるので指名もされないから放置状態だ。ある意味役得って奴かな。正直、これから午後の授業を受けその後バイトにいくのはきつい。……悪いけど、早退して家で休もう。……ああ、職員室に行くのも辛いな……。
早退することを先生に告げ家に向かう。今はでかい国道の交差点にいて赤信号なので止まっている。ああ、本当に頭がガンガンする。断続的に響く車の排気音や歩く人々のしゃべる声、遠くからは工事で使う機械の音。そして一番うるさいのは目の前でなっている進行方向とは違う甲高い鳥の声がする青信号の音響……。それらが今の俺にはすごく辛い……。まるで脳みそがシェイクされてるような。……でも、これくらいで弱音はいってられないな。辛いと思ってるのは俺だけじゃないだろう。そんなことを思って気を紛らわしているとさっきまでの音響が止む。お、そろそろ青になるか。さっきとは違う鳥の声の音響がなる。俺は少しおぼつかない足取りででかい交差点を進む。そうしていると。
ドドドドド……
……ん?
ドドドドド
右側から赤信号なのに速度を維持したまま走ってくるトラックが見える。あれ?あのトラックとまらなくね?あれ?早く渡らないと……。と思い小走りする。しかし、ふと後ろ見てみると、スマホいじってゆっくり歩いている女性がいた。
「おい!はやく走れ!」
「……」
くそ!イヤホンしてるせいかこちらの呼びかけに気付かない!しかしそう言ってる間にトラックは近付いてくる。クラクションさえ出さない。居眠り運転か!?クソ……!間に合わない……!
「うおあああああ」
「え?!なに?!」
俺は女性をこちらに引き寄せようと彼女のもとに走り手を掴み歩道に連れ出そうとする。が、無茶して動いたせいか、足に力がはいらず、近くに来たまではいいが、もうちょっとというところで女性に届きそうもなかった。なので最後の力を振り絞り女性を突き飛ばす。目の前にトラックが近付く。女性は驚いた顔で歩道で倒れながらこちらを見ている。……ああ、終わったな。
ドン!
「キャ、キャアアアア!」
「き、救急!」
世界が暗い。寒い。……そしてなにより怖い。例えどんなに辛くても、俺は生きていたかった。そう思っていたのに。くそ、ったれ。もうなんも考えられない。じいちゃん……いま、そっちにいくかも、ね……。
こうして大道歩は祖父と同じように人命を助けて短い生涯を終えた……。
-とあるマンションの一室
「ふー、洗濯終わったし連続ドラマ「あべちゃん」でもみるかー」
……続いてのニュースです。F市の国道XX号の交差点で居眠り運転が発生。トラックは交差点のガードレールに衝突した模様。この事故で「トラックの運転手が軽症」を負いました。
「ほー。人轢かれなくて良かったわねー。さて、あべちゃんあべちゃん」
-???
「……ふぅ、やっと始められる」
「楽しくなるかねぇ」
「さぁ……どうなることやら……クス……」
そこにいたものの顔は見る人によってはどんな彫刻や風景よりも美しく、また見る人によってはどんな不気味なものよりも恐ろしくゆがんでいた。
連投です